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第32話 趙姫と嫪毐
函谷関の戦いの後、秦国内は平穏な日々が続いた。
秦王政の母、趙姫太后もしのびで芝居見物ができるまでになっていた。
ある日、韓の国から人気の旅芸人が来ているというので、宦官のおつきを連れて観に行くことにした。
幕が開き、主役の旅芸人が登場した瞬間、趙姫太后は呆然としてしまった。
「なんて凛々しい顔立ち、体格も筋肉質で勇ましい。私、どうにかなりそう」
この旅役者、名を、嫪毐といい、地方に興行へ行っては女をたぶらかす、たちの悪い旅芸人なのだが、趙姫太后は、知ってか知らずか、嫪毐の虜になってしまった。
翌日あろうことか元夫の呂不韋に頼み込み、なんとか嫪毐を後宮へ入れるように頼んだ。
元妻の頼みと言うより、王の母の頼みであることから、むげに断れなかった。
呂不韋は仕方なく宦官と偽り、嫪毐を後宮へ入れた。
その後二人はちぎりをかわし、二人の子をもうけた。
不思議なことに、秦王政は気づかなかった。
と言うより、気づかぬふりをしていた。
だが、それをいいことに嫪毐は、自ら秦王になるべく、秦王政に対して反乱を仕掛けたのだ。
当然、戦のイロハも知らない旅芸人は主力、王翦が登場するまでもなく鎮圧された。
秦王政は激怒した。
嫪毐は、車ざきの刑。
子供二人は打ち首。
母の趙姫太后は、追放。
そして手引きした呂不韋も丞相の職を解かれた。




