第28話 「楊端和」と「羌瘣」
呂不韋と王翦は、兵を集めるために動いた。
とは言っても秦国内ではきつかった。
既存の軍隊の影響が強く、募集しても集まらなかった。
だが、王翦は、ある秘策を考えていた。
それは、いずれ攻め取る予定の趙国から、兵を集める策だった。
単純に考えれば趙国の兵を秦国へなびかせることだが、時間もかかるし、難しい。
それよりは、趙国の兵が敵としている一団を取り込めば良いと考えた。
呂不韋と王翦は、燕との国境にほど近い趙の山奥に来ていた。
この場所に3千人の山賊を束ねる、楊端和がいるからだ。
彼らは、木こりや炭焼きで生計を建てていたが、趙国の兵がやってきて、切り出した大木や大量の炭を納めろと言ってきた。
買うのではない。
税として納めろだった。
そんな言い分聞けるわけもなく山賊を組織して抗っているのだった。
王翦は楊端和に、
「この山の主、楊端和よ。わしは王翦と申す。秦の国の将軍である。わしはそなたを尊敬する。よくぞ3千の一団だけで、数万の趙の兵隊に十年もの長い間、抗ってきたものだ。だかこの辺で決着をつけないか? 我が秦の国の軍隊へ加われ。一緒に趙を滅ぼそうぞ。 そのあかつきに、お前たちは自由だ。炭や丸太も正規の値で買い取ろうぞ」
「王翦、話は分かった。だが、お前は秦の国の将軍といっても5千の兵しか率いていないではないか、本体の数十万を束ねられたら出直してこい…… 何も分かってない連中なら、こう言うだろう。しかし、私は知っている。あなたが月氏の内乱を鎮めた王翦将軍であることを…… 我らはあなたを信じよう。我らを家来にしてくだされ」
その翌日、呂不韋と王翦は、趙の首都、邯鄲へ向かった。
この地に荒くれ者2千人を束ねる羌瘣がいるからだ。
この一団は、いわば用心棒集団だ。
呂不韋もたびたび利用するが、商人が荷駄を運搬する際、どうしても盗賊に遭ってしまう。
それに備えた用心棒だ。
呂不韋が交渉にあたったが、羌瘣は二つ返事で了解した。
こうして、王翦率いる秦軍は常備軍で1万を超えた。
さらに粘り強く古参の秦兵を口説き、一年後には、3万を超えた。




