第15話 フェニキア・ギリシア
フェニキア国は、西側に地中海、東にレバノン杉が豊富に採れるレバノン山脈に挟まれた、南北に細長い国である。
杉は船の構築材に適しており、レバノン杉をふんだんに使った船は、やがて、地中海を制するまでになっていた。
フェニキア国には、造船技術や航海技術といった優れたものがもうひとつ存在する。
文字である。22の子音からなるフェニキア文字は、表音文字だ。
表音文字は、口から出る音、つまり言葉を文章化できる。
「月」や「星」などひとつの文字で一つの意味を表す表語文字で言葉を文章化しようとした場合、不可能ではないが膨大な文字を必要とする。
したがって、扱える人が限られる。
フェニキア国を追われたフェニキア人の多くは船に乗り地中海へ逃れた。
そして二つの地域に落ち着いた。
一つは地中海貿易の拠点だったカルタゴともう一つはギリシヤだった。
ギリシヤという国は存在しない。
数万から数十の民が城壁を作り、その中にポリス(都市国家)と呼ばれる集団を形成して暮らしている。
その集合体がギリシヤと呼ばれた。
その数は1100にも及んだ。
その中でもアテネとスパルタはとびぬけて大きかった。
実はこの都市国家、そんなに古くない。
都市国家の体を成してから数十年というところだろう。
この地は、400年前(紀元前12世紀)までミケーネ帝国が存在した。
巨石を何段も積み上げ、巨大な城壁を築き、青銅で作った剣は、エジプトの剣より優れていた。
軍隊も統率が取れ強国であったし、地中海を船で渡り歩き、貿易で得た富も莫大なものだった。
栄耀栄華を極めたミケーネ帝国だったが、400年前突然滅び去った。
原因はさまざま伝わっていた。
一つは干ばつが何年も続き、飢饉に見舞われた各地の民族が、食料を求め、一団となって地中海へ繰り出して、ミケーネやエジプトを襲った「海の民」の集団が滅ぼしたという説。
もう一つは、ミケーネの北側から南下してきた「ドーリア人」が滅ぼしたという説だ。
いずれにしても、栄耀栄華を極めたミケーネ帝国を完膚なきまで破壊したのは、当時最先端の金属「鉄」の剣が開発されたことに他ならない。
ミケーネ帝国が滅ぼされてから、何百年も暗黒の時代が続いた。
ミケーネ帝国は、一旦廃墟になったが、徐々に移住する者が増えてきた。
ミケーネを滅ぼしたと言われているドーリア人も移住して、都市国家「スパルタ」を建国した。
スパルタは王国である。早くからミケーネの地に移住してきたこともあって、ミケーネで一番肥沃な土地を取った。
そして、そこで暮らしていたミケーネ人を奴隷とした。
ヘイロータイと呼ばれた奴隷たちは、スパルタ人の5倍いた。
したがって、スパルタ人が何より恐れたのはヘイロータイの反乱である。
スパルタ人は反乱を阻止するため、極めて厳格かつ過酷な訓練を施すことで、スパルタ人に対する忠誠心を植え付けようとした。
これが、後の世で「スパルタ教育」と呼ばれた。




