第14話 ノアの方舟
アッシリアに攻め込まれ、滅びてしまった国はイスラエル王国だけではない。
イスラエル王国の北側にレバノン山脈があり、その西側にフェニキア国、そして東側にアラム国も同時に滅ぼされた。
イスラエル王国のヘブライ人、フェニキア国のフェニキア人、アラム国のアラム人。
実はこの3種族、セム系と呼ばれ、先祖をたどると「ノアの方舟」のノアに行き着く。
数千年の昔、神を軽視し自堕落な生活を送っている人々に悲しまれた神は、洪水を起こして人々を滅ぼそうとした。
しかし、神を信じ、毎日祈りを欠かさないノアの一家だけは助けようと、方舟を作らせ、そこにあらゆる動物のつがいも乗せるよう言葉を発した。
40日間漂流の後、アララト山にたどり着いた。
ノアにはセム、ハム、ヤフェトという3人の息子がおり、そのセムの末裔たちがこの3種族である。
このセム系3国が突然、しかも同時に滅ぼされたのである。
玉突きに例えるなら、アッシリアという玉が、イスラエル、フェニキア、アラムの玉にぶつかり世界に飛び散ったということになろうか。
だが、この日から世界の歴史が始まったといっても過言ではないだろう。
なぜならば彼らは、後の数千年間使われる文字の原型を作ったからだ。
歴史とは、何らかの出来事を時間的に記録し、文章に残さなければならない。
そのためには、汎用的な文字が必要だ。
そういう意味ではメソポタミアの楔形文字やエジプトのヒエログリフが既に存在しているのではないかと思われるだろう。
しかし、楔形文字は主に数を数える記録用としてもちいられていたし、ヒエログリフは文章の体を成していたが、ファラオに仕える書記官しか書くことができず、おまけに書記官の地位を奪われないように、徐々に難解さを増していった。




