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8.三ヶ月


西岡が、少し遅れて柚月と永瀬のもとに訪ね、ぶっきらぼうに伝えた。

「期間は三ヶ月だからな」

永瀬は作業の手を止め、感心の眼差し向けた。

「編集長の気持ちを変えさせたんだな。一ヶ月から三ヶ月か」

男たち二人で分かった雰囲気がでている。柚月だけがさっぱりだ。

なんの三ヶ月…。わからん。

私だけ空気の読めない子みたいだ。

行間読むって難しい。

西岡にわからんと聞くべき?それとも、あとでこっそり永瀬先輩にお菓子渡しながら、知っていますが確認ですみたいな雰囲気でききだすべき?

ボーッとそんな事を考えていたのを、西岡がきづいたのか、こちらに確認してきた。

げっ、まずい。

「おい、柚月」

「は、はいっ」

あわわ、大変。

ばれた。意味がわかってないのがバレてしまった。

「わかってないだろう?」

「……何をですか」

「今の中堅の連載は三ヶ月で切る。だから彼女との読み切りは三ヶ月でつくれ」

なんだ。三ヶ月ね。それならそうとゆっくり教えてくれればいいのに。男たちって言葉がたらなくて困っちゃう。

男たちの言葉足らずにブーブー不平を挙げていたがら柚月ははたっと気づいた。

な、な、なんだって。キ、キゲンを伸ばしてくれたの。編集長に交渉したの。あの暴れん坊を。

にしおか、仕事ができる。

柚月は西岡に尊敬の視線を注ぐ。

西岡は肩をすくめる。

「一ヶ月で教育は難しいだろ」

「……助かります」

「貸しひとつな。明日引継ぎの先生に挨拶はおれひとりで大丈夫だ。それより木村先生と話し合えよ」

そう言って、西岡はデスクから名刺入れをとりだす。名刺入れからひとつ名刺を抜き取る。

「引き継ぎ行くとき、手ぶらはまずいからな。ここの店の最中でいいだろ」

見覚えのある店のロゴだった。


そのロゴは私が以前ここの最中は最強と言った店じゃないですか。私が足で見つけた店。

すごい。西岡できるやつ。私も負けてられない。

あのー、私たちの分の最中はあるんですか。いえ、決しておねだりではなく、確認です。

美味しいものは、みんなで食べたほうが美味しいので。

「……最強の店ですね」

「あした少し多めに買ってくる。お前も食べろよ」

「楽しみです」

気配りもできる。こういうところが、仕事ができる。あああ、もう後光がさしてる気がする。にしおかさまさま。

柚月は西岡に手を合わせて拝み始めた。西岡は柚月の奇行に困惑した様子だ。

そのやり取りを、近くにいる永瀬がにやにやしながら見ていた。

「なんなんですか、気持ち悪い。永瀬先輩の分の最中買ってきますよ」

「西岡、好きな子の好みはちゃんと調べるもんだな。さすが色男」

「ち、ちがいまふよ」

西岡が一拍遅れて咳払いをする。

「違うから。業務」

うん?永瀬先輩も最中の自分の分あるか確認ですか。わかります、この編集部は甘党ばかりですからね。永瀬先輩も最中のおいしさにびっくりするんじゃないですかね。これは最中の国宝だーとか言って叫ぶかも。


永瀬がわざとらしく声をひそめる。

「動揺しすぎじゃない。にしおかー」

「うるさい」

「からかったらかわいそうよ。永瀬さん。中高みたいな恋で全く本人は気づいてないんだから」

鈴木がにやにや笑いの永瀬を笑いをこらえながら制した。


鈴木さんだ。鈴木さんって大人の女性であこがれる。編集部の良心だわ。穏やかな笑顔と優しい物言い。あの編集長と付き合いが長く編集長にもしっかりと意見をいえる貴重な人材。

私もあんな女性になりたいわ。


「鈴木さんも違いますからね。業務でしっただけですからね」

「はいはい」

あわてた西岡ごしに、鈴木は永瀬と目を合わせ、鈴木は慈愛の目を西岡にむけていた。



はんなり恋愛いれてるの読むの好きです。



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