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6.編者会議


柚月はデスクに戻って木村の作品を読んでいた。

「ゆづきー。戻ったのか。さっきの先生どうだった?」

「どうとは?」

西岡が柚月の背中をこづく。

「線細くて儚げで。ストレスあたえたら倒れそうじゃん」

西岡はチャラそうに見えてしっかりといつの間にか本質をつかんでいる。

おそろしい男だ。

西岡の判断のするどさにいつも柚月はたじろいでしまう。

「確かに倒れそうではありますね。実際たおれてるのか。今、私の家でねてます」

柚月は原稿を目で追いかける。


「……は?」

西岡は一瞬、固まったののち、叫んだ。

「家あげたの!?!」

「とられるものもないですし。一応合鍵も置いてきて、すきに物を使っていいとメモも残してきたので」

西岡は柚月のあまりにも不用心さに嘆息する。

「危ないって」

なにが危ないんだろう。

「……人、信じすぎだろ」

西岡が人知れずつぶやいている。まあ女性だし大丈夫かや、やっぱりなにかあってからだとあぶない。人を信じすぎるのもどうかななどぶつぶつと。

柚月は西岡の呟きを聞き流しながら、木村の原稿を読み進めた。

西岡に木村の作品の感想を募った。


「……どう思う?読みました?彼女の作品」

「柚月のデスクにあの先生の原稿置いたの俺だぜ。読むに決まってる」

「相変わらず仕事が早く有能」

「やだー同期からの褒め言葉、あたしうれしーわ」

西岡がちょけて身体をくねくねする。

柚月は冷たい絶対零度の目で西岡を映した。

「そういうのいいから、客観的にどう思う?」

「正直に?」

西岡が、少しだけ真面目な顔になった。

「線がしっかりしてる。編集長のいってたペンタブはすこしわかる。だが」

「「しっくりこない」」

同時に声をそろえた。

「彼女が描きたかった話なのだろうか」

柚月は木村の原稿を再度確認した。

表情、身振り手振りを含めたアクション、目つき、行動。編集長が褒めるだけある。なによりも惹きつけられる線。

でもおとなしい。

ただ、どこかブレーキをかけたまま走っている感じがする。実際の彼女はもっとジェットコースターみたいな人だ。魅力をかききれていない。

廊下の奥から、編集会議の呼び声がした。



会議室の空気は、いつもより張り詰めている。

編集長が雑誌の売上の紙を固く握りしめ鬼の仇を見るかのように机の上にの我が出版社の月刊誌デェイを見ている。

雑誌ランキング四位。

悪くない、と言われる順位である。

「四位?悪くはない。悪くはないが、腹は立つ」

編集長は満足していない。

「なんで我が雑誌デェイは一位でないかわかるか。それは読者に興味をもたせない雑誌だからだ」

編集長は机を丸めた売上の紙で叩いた。

「どの雑誌よりもデェイは人をワクワクさせなければならない」

編集長は紙で机をポンポンと叩き

「人気作家は動かさない」

会議室に集った面々を見まわし、即断した。

「残りは、全部読み切りにする」

ここで間を置いて、

「柚月」

名前を呼ばれて、嫌な予感しかしない。


「理屈はいらない」

「読んだあと、誰かに話したくなるやつ、それを木村と一緒に作ってこい」



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