5.興味
柚月のマンションに木村を連れてきた。
「とうちゃくー」
「おじゃまします」
木村は脱いだ靴を揃えて玄関の隅に寄せた。玄関に続く細長い廊下を超えたところには大きめのダイニングテーブルが鎮座している。
台所はすぐ横にある。
テーブルの上には、書類と本が積まれている。
崩れていないのが不思議なくらい、ぎりぎりで保たれている。
木村は、立ったまま様子をうかがっている。
どこに座ればいいのか、決めかねている顔だった。
「あ、ごめん。ここ座って」
柚月がやっと気づいて、椅子を引いた。
「ほんとはものを置かない主義なんだけどね」
柚月はそう言ってから、積み上がった紙をまとめて
少しだけずらした。
――初めてだ。
誰かを、この部屋に招き入れたのは。
お茶を出そうとして、茶っ葉を取り出して気づいた。
そういえば、誰かのために用意したことなんてなかった。
迎える偏差値が低くてやばい。
和菓子や煎餅などの少し高級なお茶請けもない。えぇい。ここは、私がたまにご褒美で食べる缶入りクッキーを何枚か皿に立体的に盛ればそれなりにみえるのではないか。
「ごめん。人迎えるの初めてで時間かかるかも。積み上がった本で興味あるもの適当に読んで」
「いえ、大丈夫です」
それきり、木村はほとんどしゃべらなかった。
沈黙がつづいていたが、気にならなかった。
お盆の上にお茶とクッキーを乗せテーブルに持って行ったら木村は寝息を立てていた。
いつの間にか、テーブルに突っ伏して眠っていた。
羽織をかけて、私はしばらくその寝顔を眺めた。
寝ちゃった。穏やかな寝顔。
この新人漫画家は才能があるのだろうか。
判断するには、判断材料がない。
ただ号泣したかと思えば、無防備にいきなり眠ってしまう。
感情の乱気流が激しい、この人の作品を読んでみたくなった。
少しだけ。
足を骨折したのでしばらくは順調にかけると思います。




