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3.木村明子
「編集長ー。連絡もつかない問題児を任せるなんて無責任ですよ、な、柚月、お前も何か言えよ?」
西岡に背中をこづかれた。
「その新人の名前は?」
西岡の追求はやまない。
「その新人の強みは。漫画を実際に描いているんですか?現役ですか?」
編集長は西岡の頭をはたいた。
「矢継ぎ早にうるさい。マイ、お前もこんくらいきいてこんかい」
「痛いな。編集長の情報が無さすぎて不安なんすよー」
西岡はあたまをさする。
(聞いても聞かなくても怒られる、理不尽である)
「編集長の突然の爆弾発言に言語処理できなくて‥」
「柚月、このままだと編集長に騙されるぞ」
西岡の声は、冗談めいていたが、目は笑っていなかった。
「バカモン、誰が騙そうとするか、いいか、木村明子と言ってうつくしいペンタッチがひけるんだ。作品に載る線で無駄な線がないんだ。ペンタッチというものは」
編集長が熱弁を奮う。柚月は思わず口を挟んだ。
「それってイラストレーターでおわりません?」
「すいません」
若い女の人が編集の入り口から奥にかけてにおそるおそる声をかけた。三人の目がエントランスにそそがれた。
「連絡滞ってごめんなさい。木村明子です。五十嵐さんはおられますか」
線の細いお嬢さんでむさ苦しい編集長、五十嵐をたずねるなんて、もしかして彼女が大型新人なのだろうか。




