1.柚月米
(私この会社でやっていけるかな)
柚月米は上司の編集長と対峙しながらため息を吐いた。
柚月は出版社に就職した。
いい大学に入りそれなりな大手の出版社に。
もともと、出版社は就活の第一志望ではなかった。本当は広告代理店に入りたかった。
昔から本は好きで、マンガも小説も好き。
趣味を仕事にするのはどうなのかと思っていたので広告代理店が第一志望だが、広告代理店を受けていいところまでいったが落ちてしまった。
出版社はその時点で内定をくれていた。
第一志望を落ち、気力も戻らず、そのまま今の自分を求めてくれる会社にすとんと入ってしまった。
本好きだから、好きなことだから、失敗したとしても後悔はしないだろうという感じで。
入社した当時はみんな忙しいから、放っておかれた。
いや、みんな忙しそうだが一部すごく暇な先輩もいた。会社でずっと麻雀やり続けて家に帰らない先輩もいたし、フロアーでサッカーしている人たちもいた。結局その先輩たちはいなくなってしまったけど。怖っ。
入社数年は苦しかった思い出しかない。現場で一生懸命やっていたが。難しかった。
やっぱりこの業界は当たったもん勝ちで、ヒット作さえ出ればいいという雰囲気。けれど、なかなかそれが出てこない。
けれど、そうこうしているうちに担当漫画家のブレイクが始まった。そこから急に売れ始めた。人気漫画家の名前が認知され、そこから意外と楽。何をやっても結構当たるようになった。
この調子で順風満帆に行くと思ったが、急に担当変更を編集長から言われた。
「あのさー、目かけてる漫画家いるんだけどなかなか目が出ないんだ、マイがついてやって」
(編集長、それは試練ですか?それとも嫌がらせですか!)




