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第4話:受け継がれる想い ―宰相の遺言、託された未来―

読者の皆様、こんにちは!作者のUTAMAROです。


外伝『万年筆の軌跡』最終話、第4話の更新です。いつもお読みいただき、ありがとうございます。



前回、安部臣三は内閣総理大臣として、孤独な戦いを続けていました。


国民に「最強の宰相」と称されながらも、その胸には誰にも明かせない苦悩と、万年筆に記された「百年後の日本」への願いを抱えて――。



今回は、この外伝の最終話。


安部臣三元総理が直面する最後の試練が描かれます。


彼が晩年に危惧した「見えざる影」の正体とは。そしてその影が、彼の運命にどのように影響を与えていくのか。



そして、彼の死後、妻・晶江夫人は、夫が託した万年筆に込められた真の願いを、いかにして小林鷹志総理へと繋いでいくのか。


彼の果たせなかった願いは、誰に受け継がれるのか――。



偉大な宰相の遺志が、未来の困難な使命へと託される感動の最終話。


どうぞ、外伝の結末を心ゆくまでお楽しみください。



宰相・安部臣三の孤独な戦いは、常に終わりなきものだった。


 国内の政争、国際社会からの重圧、そして国民からの批判。彼は、己の信念を万年筆に書き綴りながら、ただひたすらに、日本という国のために尽くし続けた。



 だが、彼の信念を試す最後の困難は、彼の身に、そしてこの国に、静かに忍び寄っていた。


 晩年。臣三は、万年筆を握る手の力が、次第に衰えていくのを感じていた。病魔が彼の体を蝕み、残り時間が少ないことを悟る。しかし、彼を何よりも苦しめたのは、自身の体調ではなかった。むしろ、自身の死期が迫るにつれて、その「見えざる影」が、より鮮明に、そして不気味にその姿を現し始めていることへの、焦燥感だった。



 「見えざる影」。


 彼が晩年に抱き始めた、この国の根幹を揺るがしかねない、得体の知れない脅威。


 海外からの情報操作、国内の世論の分断、政治家たちの足元を狙う巧妙な罠。それらは、中華帝國という具体的な脅威の裏側で、組織的に、そして深く進行しているように見えた。



 彼は、麻生泰郎副総裁や高市冴苗総務大臣といった、次世代の保守本流を担うべき重鎮たちに、直接会ってその警告を発した。


 麻生には、「あの老いぼれた狸(小澤一郎)も、最近妙な動きをしている。背後には、得体の知れぬ影を感じる」と。


 高市には、「百年後の日本のためには、見えざる敵と戦う覚悟が必要だ。私は、その準備を十分にできなかった」と。


 しかし、当時の彼らには、その真意が完全に届いてはいなかった。各々の政局に追われ、目の前の「見えざる影」の巨大さを、まだ理解できていなかったのだ。



 日本の政治の表舞台から身を引き、後進の育成に尽力していた安部臣三元総理は、突然の凶弾に倒れた。


 その報は、日本中を悲しみと混乱に包んだ。



 晶江夫人は、深い悲しみの中で、夫の死の意味を問い続けていた。報道では、過激派の単独犯とされていたが、臣三が晩年に漏らした「見えざる影」の言葉が、脳裏を離れなかった。彼の死の背後には、単なる一過性の怒りではない、もっと深く、暗い“何か”が潜んでいるのではないか――。彼女の胸には、拭いきれない疑念がくすぶり続けていた。



 臣三は、晶江に愛用の万年筆を託した。


「この万年筆には、俺の『百年後の日本』への願いが詰まっている。いつか、この想いを理解し、俺の続きを歩む男が現れたら、そっと渡してやってくれ」


 晶江は、夫の言葉の意味を、その時はまだ、完全に理解してはいなかった。しかし、夫が最期までこの万年筆に込めていた、国への深い愛情だけは、確かに感じ取っていた。



 夫の死後。深い悲しみの中で、晶江は夫の遺志をどう繋ぐべきか葛藤した。


 政治の表舞台とは無縁の自分に、何ができるというのか。


 しかし、本編、小林鷹志が総裁選でストロング大統領からの「U.S.軍撤退」という未曾有の危機に直面し、四面楚歌に陥る姿をテレビで見た時。


 彼の不器用なまでの真摯さ、そして「国民一人ひとりの日常を守る」という、地味だが揺るぎない覚悟。


 その姿に、晶江は、亡き夫と同じ「孤独」と「信念」を見たのだ。


 そして、夫が晩年に警告していた「見えざる影」と、小林総理を襲う「中華帝國のデマ攻撃」が、まるで繋がっているかのように感じられた。



 ――この人だ。この男こそ、夫の想いを継ぎ、夫が果たせなかった戦いを引き継ぐべき者なのだ。



 彼女は、夫が託した万年筆を手に、深夜の官邸へと向かった。


 その重みが、今、小林鷹志の掌に受け継がれたのだ。


 偉大な宰相の遺志は、新たな世代のリーダーたちへ、確かに託された。



(外伝:万年筆の軌跡 ―安部臣三とその妻― 第4話 了)


(完)



『外伝:万年筆の軌跡 ―安部臣三とその妻―』最終話「受け継がれる想い」、最後までお読みいただきありがとうございます。


いかがでしたでしょうか。



「百年後の日本のために」――。


安部臣三元総理が万年筆に託した、その揺るぎない信念。


そして、その孤独な戦いを、時に奔放に、時に静かに支え続けた妻・安部晶江夫人の深い愛情。


本編では語られなかった彼らの物語が、小林鷹志総理が受け継いだ万年筆の重みを、さらに深く、感動的なものとして皆様の心に残せたなら幸いです。



この外伝は、これで完結となります。


本編を補完し、物語に深みを与えることができたなら幸いです。



『宰相の椅子』の物語は、これからも続きます。


続編では、小林・小泉新体制が、この強大な「観星会」という敵とどう戦っていくのか。



安部元総理が果たせなかった願いは受け継がれ、次なる戦いが始まります。



続編の情報は、作者の活動報告やSNSで随時お知らせいたします。


どうぞ、次なる物語にご期待ください!


ブックマークや評価をいただけますと、本当に、本当に執筆の励みになります!



作者:UTAMARO



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