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第十二話 仕掛けられた罠 ―総裁選最終盤、闇が牙を剥く―

『宰相の椅子』第十二話の更新です。


いつもお読みいただき、本当にありがとうございます。


前回、小林鷹志総理は、ストロング大統領との緊迫の頂上会談で、見事、日本の国益を守り抜きました。


この外交成果は、総裁選を戦う小林総理にとって、大きな追い風となるはずでした。


しかし、「光」が強ければ、それを打ち消そうとする「影」もまた、牙を剥きます。


今回は、物語の第二の、そして最大のクライマックス。


投票日を目前に控え、日本中を震撼させる衝撃のスキャンダルが報じられます。


「小林総理に違法献金疑惑!?」


これは単なる個人への攻撃ではない。国の未来を左右する総裁選への、明確な介入だった。


絶望的な状況の中、このデマ攻撃は、観星会が仕掛けた完璧な罠でした。


四面楚歌に陥る小林陣営。もはや万策尽きたかに見えた時、宇宙からの奇妙なメッセージが、物語の歯車を動かし始める――。


どうぞ、息を詰めてお読みください。

第十一話の頂上会談から、わずか数日。


 小林鷹志総理とユニフィア・ステーツ大統領・ストロングの「新しいディール」は、日本国内で大きな話題を呼んでいた。


 「外交の小林、ここにあり!」「危機の宰相、国の未来を拓く!」


 メディアは手のひらを返し、世論も一気に小林総理への評価を高めた。総裁選の情勢は、大きく小林有利へと傾きつつあった。


 『蒼鷹会』の若手議員たちは、連日のメディア出演でこの外交成果をアピールし、国民の間に「安定と実績」への期待感を広げていた。



 しかし、投票日まで、あと三日。


 最も油断のならない時期だった。



 その日、日本中を震撼させる衝撃のニュースが、電子版の週刊誌で先行公開された。



 【スクープ!】


 『小林総理に違法献金疑惑! 経済安保の裏で、中華帝國系企業から巨額資金還流か!?』



 記事には、巧妙に偽造された銀行の取引記録や、匿名の「元秘書」の証言などが、あたかも真実であるかのように掲載されていた。



 その報道は瞬く間にネットを駆け巡り、SNSは炎上。テレビのワイドショーも、一日中この話題で持ちきりとなった。


「小林総理は、経済安保を掲げて国民を欺いていたのか!」


「清廉潔白だと思っていたのに、やはり裏では…」


 世論は一気に反・小林へと傾いた。



 小泉新次郎陣営は、この機を逃さなかった。


「もし事実ならば言語道断。総理は直ちに説明責任を果たすべきだ」


 官義偉が、冷静な顔でメディアの前で語る。


「経済安保と謳いながら、裏で中華帝國と繋がっていたとすれば、これは売国行為に等しい」


 その言葉は、国民の不安と不信感をさらに煽った。


 小泉新次郎も、「真実を明らかにすることが、国民への責任だ」と、総理への追及を強めた。



 小林陣営は、完全な寝耳に水で大混乱に陥った。


「事実無根です! 全てデマです!」


 小林は、記者団に囲まれ、必死に声を張り上げた。しかし、偽造された証拠と、怒りに燃える世論の前では、彼の言葉は虚しく響くだけだった。


 『蒼鷹会』の若手たちは、ネット上の火消しに奔走するが、炎上の勢いは止まらない。


「誰がこんな情報を…!?」


 向井淳が、怒りに震える。しかし、情報源は巧妙に隠蔽されており、追跡は困難を極めた。



 もはや万策尽きたかに見えた。提供された偽造データは、表向きは完璧に偽装されており、検証には時間がかかる。決定的な反論は、投票日までに間に合わないだろう。



 選対本部の重い空気の中、麻生泰郎は葉巻をくゆらせながら、静かに高市冴苗に問いかけた。


「あの『爆弾』、ついに投下されたか。高市、どうする」


「…仕組まれた罠です。この情報戦の巧みさは、これまでの党内争いのレベルではありません」


 高市の顔には、悔しさと焦りが滲んでいた。


「もはや、古い政治のやり方では、このような見えざる敵には太刀打ちできないということでしょう。この国は、私たち自身の足元から揺さぶられています」


「……時代の転換点、というわけか。厄介なことだ」


 麻生の低い呟きが、沈黙の中に消えていった。



 その日の深夜。


 小林は、再び一人、官邸の執務室で絶望的な状況を打破するための策を練っていた。しかし、どれだけ頭を巡らせても、有効な手は見つからない。疲労と、国民からの不信感という重圧が、彼の全身にのしかかる。



 その時だった。


 彼のデスクに置かれたスマートフォンが、微かに振動した。


 SNS「Y」の通知。


 イーロン・マーズからの、一本の投稿だった。



『日本の選挙、面白いね。ある週刊誌の記事の出所データ、どうも中華帝國のサーバーから発信されているみたいだ。ハッキングかな? それとも工作? Funny! #観星会』



 その投稿は、あまりにも唐突で、あまりにも奇妙だった。


 小林は、その短い文章の意味を測りかね、ただじっと画面を見つめていた。


 しかし、同じく深夜の党本部の一室で、その投稿を見た『蒼鷹会』の向井淳の顔色は、一瞬にして青ざめた。



「この投稿…まさか…!」



 彼の瞳には、絶望の闇の底に、一条の光が射したかのような、強い輝きが宿っていた。



(第十二話 了)



最後までお読みいただき、ありがとうございます。


第十二話「仕掛けられた罠」、いかがでしたでしょうか。


投票日を目前に仕掛けられた「観星会」のデマ攻撃。


日本中を震撼させた衝撃のスキャンダルは、小林鷹志総理を絶望の淵へと突き落とし、総裁選の流れは完全に小泉新次郎へと傾きました。


まさに、万策尽きたかに見えた時。


宇宙の彼方から届いた、イーロン・マーズの謎のメッセージが、物語の歯車を大きく動かし始めました。



「この投稿…まさか…!」



『蒼鷹会』の若き頭脳が、そのメッセージに隠された真実に気づく――。


しかし、彼らが使える時間はほとんどない。迫りくる投票日までに、この巨大な陰謀を暴き、世論を覆すことは可能なのか?


そして、この国の未来を決めるのは、どちらのリーダーなのか?



次回、第十三話『審判の日』。


総裁選、いよいよクライマックス。


全ての情報が錯綜し、国民の、そして議員の、最後の選択が下されます。


どうぞ、次回の更新を楽しみにお待ちください!


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