第7話 結成! 冒険者ユニオン!
アルケー達が怪我人を治療している頃、三郎、笑亜、菊子、ウィルは村にある大きな農家まで来ていた。
「ここに街から逃げて来た冒険者共が居るのか?」
「でもここ馬小屋ですよね?」
「ここの村人は魔王軍来襲を聞いて、馬を連れてさっさと逃げたんでな。空いてたんで彼等に使ってもらっている」
そう兵士に説明された三郎が横にある母屋を見ると、そちらは王国軍の兵士達が出入りしている。
「母屋の方はお前さん達が使ってるんだな」
「ああ、こっちには貴族出身の隊長達もいるからな」
「なるほど。確かに高貴な御人を馬小屋に押し込める訳にはいかねえわな」
自身もそういう人達と接する機会が多かった三郎はその考えも理解出来た。
「案内ありがとう御座いました。後ほど改めて指揮官さんにもご挨拶に参ります」
菊子は案内してくれた兵士にお礼を言って馬小屋に入る。中は獣臭が充満しており、確かに貴族にこんな場所に入れる訳にはいかない。
しかしだからと言って、自分のギルドに所属する冒険者達に充てがわれるのもいい気分はしない。後で指揮官に言って建物を変えてもらおうと決めた。
「ギルドマスター!? 何故ここに!?」
馬小屋に入ると中に居た冒険者は、いきなり現れた自分達のトップに驚いて集まって来た。
菊子は目元がぴくりとさせてどう言ったら良いものかと思案する。
まさか情報伝達ミスで来てしまったなんて言える筈がない。言っても良いがその場合、悪者になるのは横で青ざめてる支部長のウィルだ。トップの言動としてこれはよろしくない。
「あんたらを助けに来たんや。えらい目に合ったようやけどもう大丈夫。腕のええ回復魔法士も連れて来たから怪我しとる人は言い」
「おお! ありがとうございます! ギルドマスター!」
冒険者達は涙を流して喜ぶ。
菊子はちょっとした機転で彼等の信頼と士気を上げることに成功したのだ。ここはさすが経営者と言った所だろう。
そんな中、熟練の風格がある冒険者が彼女の前に出て来た。
「ギルドマスター。お願いがあるのですが」
「何でっしゃろ?」
「我々にはリーダーが居ません。なのでギルドマスターには我々の代表になって頂き、王国軍と今後の事について話し合って頂きたいのです」
「うちが代表に? まあ元からその為に来たんやけど、軍と何かあったん?」
何だか引っ掛かる言い方と、彼の必死そうな顔に菊子は疑問に思う。
その問いに男は悔しそうな顔をして言った。
「軍は我々にリーダーが居ないのを良い事に、ポーション等のアイテムを全て徴発していったのです。更に戦力を補う為に冒険者を軍の指揮下に加えるとか言い始めて……」
「はあ? それほんま?」
菊子の声に怒気が孕む。
元々、軍とは協力して街を守ろうという盟約を結んでいたが、それは王国軍は王国軍で冒険者はギルドの指揮下での話しだ。
それなのに勝手に冒険者が持つアイテムを徴発し、軍の指揮下に入れるなんて許されたものではない。
「冒険者達は各パーティーの寄せ集め。個人個人も平民出身が多いですからね。貴族である王国軍指揮官が大きく出るのも頷けます」
横に居たウィルが所見を言うが、寄せ集めだの平民出身だの余計な事を言ったばかりに、皆から睨まれ慌てて謝った。
その間に菊子は考える。
(リーダーになれば間違いなく魔王軍との戦闘に駆り出される。うちの大嫌いな戦闘に)
今回のアンキラザシュタット防衛に出向いたのだって、堅牢な街の防御と王国軍戦力とワープシステムによる退路があったからだ。
だが今はそのいずれもない。
村の砦なんて街と比べたら積木の様な物だし、王国軍も敗残兵しか残ってない。
(明らかに当初の想定より悪い状況。普段ならこんな役目は誰かに頼むんやけど……)
街で悲惨な目に遭ってる人達、この村まで逃げて来た人達、そして自分に助けを求める冒険者達の姿を見て、何もしない訳にはいかない。
「分かりました。これよりうちが皆さんのリーダーとなりましょう。ただ一つお聞きします。まだ魔王軍と戦う気はありますか? 正直もう逃げたいと思とる人は? そういう人は抜けてもらっても構いません」
だが冒険者達の中にここから離れる者は居なかった。
「俺はまだまだやってやりますよ!」
「元からその為に冒険者になったんだ!」
「ここら辺は俺の故郷なんです! 奴等の好き勝手にさせません!」
皆々、血気盛んに闘志を漲らせる。
ならばとそれに応える様に菊子は声を発した。
「よろしい。ではこれより皆さんはうちの指揮下に入ってもらい、ここに連合隊を結成します!」
菊子の宣言に冒険者達は湧き立つ。
ようやく自分達を導いてくれる人が現れたと、これまでの不安も吹き飛ばして喜んだ。
「これであいつ等にでかい顔されずに済む!」
「ユニオンか。2年前のスタンピード以来だ!」
ユニオンとは冒険者パーティーでは対処出来ない超大型モンスターやモンスターの大群と戦う為に、複数のパーティーが団結し編成される連合隊だ。
菊子はユニオンリーダーとなる事で彼等を麾下に加え、軍からの横暴から守ろうとしたのだ。
「ほな、ここの指揮官さんにご挨拶しに行こか」
菊子は不敵な微笑みを浮かべて、王国軍指揮官の元にカチコミに行った。




