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第6話 私達の目的

 騎士達の共犯者探しは翌日朝から行われた。

 元々モンテドルフは小さな村なので取り調べる世帯数はそう多くない。しかし小さな村だからこそ、騎士達は村人達を下に見ている節があった。

 先ず彼等は斧や弓矢といった武器になりそうな物を捜査の名目で取り上げた。それから家宅捜索だと言って家に押し入り食料や家具を奪って行ったのだ。

 被害にあった村人が文句を言うと「参考証拠として調べたら返す」と言い、更に反抗すると剣と権力をちらつかせて脅した。

 そんな状況に三郎は眉をひそめる。彼もまた、太刀と弓矢と鎧を没収されたのである。

 三郎達が住む家はまだ家宅捜索の騎士達は来ていない。今は昨日シャルディが言ったように、外出せず彼等が来るのを待っているのである。

 それでもあんな強盗まがいな奴等が来ると分かっていて、大人しくしていられないのが三郎だ。だから焦れったい様子で、騎士達の言う通りにしようと言い出したアルケーに訴えた。


「あいつ等やりたい放題じゃねえか。なぁ、アルケーよぉ。あんな賊みたいな連中の言いなりになる事ねえぞ。いっそ、のしちまおう。奴等の居る集会場に火着けて来て良いか?」

「物騒な事言わないでくれる!? だいたい武器も鎧も取られたのにどうやって戦うのよ?」


 その質問に対し三郎は自らの太々とした腕の力瘤をパシンッと叩いた。


「バ~カ〜な〜のぉ〜?」


 あまりにも短絡、単純、脳筋な作戦にアルケーは呆れて果てた。


(この何にでも噛み付く性格どうにかならないのかしら)


 と思いつつ一呼吸し落ち着いて彼を諭す。


「私達の目的は魔王カラミティを討ち倒す事よ。人間と争う事では無いわ。余計な事をして面倒を増やさないでちょうだい」

「ちぇ、面白くねえなぁ!」


 三郎は不満そうに口をへの字に曲げた。


「あの、ハルトさんはどうなるんでしょう?」


 笑亜が不安そうな顔をして聞く。ハルトとジュリは今まで彼女を住まわせてくれた恩人だ。その2人が窮地に陥っているのが堪らなく心配なのだ。


「普通に考えればジュリを連れ去った罪で罰せられるでしょうね」

「ハルトさんは誘拐なんてしていません!」

「本人達はどうあれ、公爵家はそう思ってないのよ。だから騎士達もこうやって躍起になってるんじゃない。まあ、ジュリの弁護があれば命は助かるかもだけど、一緒には暮らせないでしょう」

「そんな……。そんなのあんまりです」

「洗脳されてるって話だったが、お前さんから見てどうなんだ?」


 次に三郎がアルケーに問う。

 騎士達はジュリが洗脳されていると言っているが、魔法というものに縁が無かった三郎にはその区別が出来ないのだ。


「ジュリは洗脳なんてされてない。どんなにバレにくい洗脳魔法でも女神の目は誤魔化せないわ」

「当たり前です! あの二人はちゃんと愛し合っています! だから何とか助ける事は出来ませんか?」


 笑亜は必死な目で訴える。


「私は女神。人間のいざこざに関わるつもりは無いわ。神はただ見守るだけよ」


 だがアルケーは冷徹なまでにハルトを見捨てると言い切った。

 笑亜は悲しそうに落胆した。

 しかしアルケーにとって、世界を司る神の役目とは世界の育成であり統治ではないのだ。

 今回、魔王討伐の目的で下界にやって来てはいるが、それはあくまで自分の世界にやって来た害虫駆除のため。人間を救うためではない。

 

(人間の社会ルールに女神が関与してはダメ。彼等は彼等で生きて行かないと世界は育たない。女神は偶像、心の寄り添いで良いのよ)


 だからアルケーは強い口調で2人に言い聞かせた。


「良い二人共。騎士達の調べには大人しく従いなさい。元々共犯者なんて居ないんだから、すぐに疑いも晴れるわ。そうしたらすぐに魔王討伐に向けて準備するわよ。分かった? 特に三郎」

「俺かよ」

「貴方が一番の不安要素よ。絶対、騎士に手を出しちゃダメだからね」

「分かってるよ。俺だって場の空気くらい読めらあ」


 言われずとも承知してると三郎は煩わしそうに返す。

 家の扉が叩かれたのはそんな時だった。

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