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第3話 歩けアルケー

 三郎が2人を連れて来たのは、村の横を流れる川だった。そこは大小様々な石が転がり非常に足場が悪い。

 その光景を見たアルケーは足を踏み入れる前から、うんざりした顔になった。


(何でこんな場所に連れてくるのよ)


 森のでこぼこでさえも満足に歩けないアルケーにとって、ここは地獄だ。どこをどう歩いたら良いのか全く分からない。絶対、100%、確実に転ぶ。

 女神であるというプライドに拘る彼女にとって、歩いて転ぶなんてドジは女神的にNGなのだ。

 そんな既にやる気のないアルケーに三郎は言った。


「よし、歩け」

「何よ?」

「歩け」

「だから何よ? 名前だけじゃ分かんないでしょ」

「違っげぇよ! ここを()()つってんだよ!」


 アルケーと歩けを聞き間違えていた。


「こんな所、歩ける訳ないでしょ!」

「普通の人間は歩けるんだよ。お前さんは今日ここを歩いて、とにかく足場の悪い地形に慣れろ」

「ふざけんな! いきなり難易度マックスじゃない!」

「何だよマックスって? こんな所で音を上げてちゃあ話しになんねえぞ」


 昨日、一昨日とアルケーの行動を見て三郎は理解したのだ。


(この女神は度を超えたどんくさ女神だ)


 確かに彼女の魔法は威力抜群。モンスターの大群だって余裕で葬る力があるが、そのメリットをチャラにして余りある運動音痴というデメリットがある。

 これから魔王を倒しに行くと言うのに、歩くだけでこてんこてん転ぶ女神なんて戦力外なのだ。せめて足腰を鍛えて、悪路でも踏破できるようになってもらわねば困る。

 だから三郎はやり返しも兼ねて、昨日アルケーに言われた事をそっくりに挑発してやった。 


「おやおやぁ? 毎度毎度、女神だ何だ言っときながら歩く事も出来ねえのか? あ~あ、やっぱ女神つっても大した事ねえなあ。アルケーからアルケナーイに名を改めたらどうだ?」


 するとアルケーは悔しそうに口をへし曲げる。


「や、やってやろうじゃないこのバカ! 人間に出来て女神に出来ない事は無いのよ!」


 ムキになったアルケーは河原に足を踏み入れる。

 馬鹿にされたままではいられないと、ガニ股になる事も構わず、力強く一歩一歩踏み込んだ。


「アルケー様。もっと力をーー」

「黙って笑亜!」


 笑亜のアドバイスも聞かず、積み上がった石に足を置いた時だった。


 グギッ!


「ビャッ!?」


 石が転がり、そのまま足をぐねりながら盛大にバンザイしながら転倒した。

 そのあまりにも芸術点の高い転け方に笑亜は言葉が出なかった。


(くぅ~。やってられない。やってられないわ! こんな事!)


 痛いし、疲れるし、恥ずかしい。こんなのは女神の姿じゃない。

 そんな恥辱に歯を噛み締めアルケーは顔を上げ叫んだ。


「もう、帰ーー!!」


 だがその時、向こうで面白そうにニヤけている三郎の腹立つ顔が見えた。


「ーーらない!!」


 すぐに超回復(リヴァイブヒール)を発動し足を治療する。

 そして三郎に向けて指を差す。


「見てなさいよ! 今にここでタップダンスが出来る様になってやるんだから!」

「何だタップダンスって?」


 聞いた事のない単語に三郎は首を傾げた。

 だがそんなの知ったこっちゃない。腹の立つ従者を見返してやるために、アルケーはまた一歩一歩踏み出した。

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