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第2話 元騎士の青年

 昨日やって来た騎士達は、村の集会場を宿として夜を明かした。

 隊長のシャルディが言ったように、彼等はこれから数日間モンテドルフに駐留するらしい。

 朝から馬蹄を響かせて彼等は村を出発した。昨日破壊されたデーモンウェッジの調査、村周辺のパトロール、それと魔王軍の動向を見るらしい。

 慌ただしい朝を終えた頃、笑亜が居候していた家からアルケー達の家に引っ越して来た。

 これが中々の力仕事で、彼女の個人装備はもちろん、アイテムボックスという大荷物まで運ばなくてはならなかった。


「ハルトさん手伝ってくれてありがとうございます。今までお世話になりました」


 笑亜は今まで世話になった家の主人であるハルトにお礼を言う。


「同じ村にいるんだから、そう畏まらないでくれ。困った事があれば遠慮なく頼ってくれよ」


 ハルトは人の良い笑顔で返す。

 笑亜とはそれ程大きく歳が離れてないので、端から見ると気の良い兄と素直な妹の様だ。


「貴方はこれから仕事?」


 アルケーは彼が持つ鍬を見て問う。


「ええそうです。貴方に腕を治してもらったお陰で、こうやって畑仕事が出来ます。本当にありがとうございました!」


 ハルトはもう大丈夫と言わんばかりに、治してもらった腕をパンっと叩く。

 彼は元騎士だったらしいが、自分には向いていなかったとかで、こうやって辺境の村で農夫として働いている。

 日中の農作業で肌はこんがりと焼け、指の爪の間には土が入り込んでいる。彼曰く、もうすっかり農民の手らしい。

 そうやって懸命に働くのも愛する妻がいるためだろう。


「あんまり無理して、また奥さんに心配かけちゃダメよ?」

「はい! もうジュリに心配はかけません! お腹の子供の為にも頑張りますよ俺!」


 何とも素直で活発な好青年だろうか。アルケーはそんな彼を好ましく思った。


「気合い十分ね。ところで何でフードなんか被ってるの?」


 ふとアルケーは彼が深々と被っている頭巾が気になった。

 別に頭巾くらい珍しい物では無いのだが、少なくとも村で着用している人間は彼だけだ。


「あー、最近日差しが強いので。日除けですよ日除け」


 ハルトは特に気にした様子も無く人の良い笑顔で返す。


「もうこんがり焼けてるじゃない」


 その言葉にハルトは「確かに」と笑った。

 彼が畑仕事に出発すると、ちょうどアイテムボックスを運び終えた三郎が家から出て来た。 


「話は終わったか? なら俺達も行こうぜ」

「行くってどこへ?」


 特に今日は何かをするという話は無かった筈だ。むしろ昨日、デーモンウェッジ破壊という面倒事を片付けたばかりなのだから、今日はゆっくりと甘い物でも食べて居たかった所だ。

 だが三郎はそんなの許さない。


笑亜(こいつ)の鍛錬だよ。あとお前さんも来い。この足腰鍛えてやるよ」


 そう言ってアルケーの太ももに触れる。


「ヒッ!? このっ、セクハラオヤジ!」


 こんな事をされて黙ってはいられない。

 アルケーは怒りの鉄拳を振るうが、三郎は難なくそれを躱しパンパンアンと二拍一礼する。


「拝むな!」


 こんな事で拝まれても全然嬉しくない。


「て言うか、何で私までそんな面倒な事に付き合わされないと行けないのよ?」

「お前さんどんくさ過ぎるんだよ。そんなんでこれから魔王の所まで行くつもりか? その前に山なり森なりで野垂れ死ぬぞ」


 むかつくが三郎の言葉にぐうの音も出ない。

 昨日も笑亜に呼ばれてデュラハン浄化に行く途中、二度転んだ。

 我が世界ながら地形がでこぼこ過ぎる。


(こんな事ならもっと平坦な世界にすべきだったわ……)


 冗談半分本気半分でアルケーは後悔した。

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