第4話 女神の魔法
集会場にはモンスター襲撃から避難した村人達が集まっていた。
モンスターは去ったとは言え、平和な日常を突然壊された人達は心配そうに身を寄せ合っている。
子供を連れた母親達は一箇所に集まり、不安そうにする我が子を勇気付け、その反対側にはモンスターにやられたのか、傷付いた村人達が床に寝かされていた。
「ハルトさん!? どうしたんですか!?」
笑亜はその中のハルトという青年に駆け寄る。
その側には大きなお腹を抱えた女性と老人が彼の手当てをしていた。
「おお笑亜、無事だったか!」
「村長。ジュリさん。何があったんです?」
「こいつジュリを逃がそうとしてモンスターと戦ったらしい」
村長が事の経緯を説明する。
笑亜が目を向けるとハルトは情けなさそうに苦笑いで返した。
「はは、元騎士だってのに面目ない」
「バカ! 心配したんだからぁ!」
そんなハルトにジュリは怒る。
そんなやり取りを見つつアルケーは笑亜に問いかけた。
「笑亜、その人達は?」
「この村の村長と私が居候させてもらってるハルトさんとジュリさん夫妻です」
そう言われてハルトとジュリに目を向けた。
確かに左の薬指に契りの指輪がはめられている。と言うことはジュリのお腹には赤ちゃんが居るのだろう。
「なるほど、愛する妻と子を守る為に戦ったってところか。その心意気、天晴!!」
「声がデカい!」
アルケーは三郎を小突く。
「あの、貴方達はどちら様でしょうか?」
「旅の魔法士アルケーよ。こっちのデカいのは従者の三郎。笑亜とは知り合いでね。偶然モンスターと戦う彼女を見かけて加勢させてもらったわ」
「そうでしたか。私はこのモンテドルフの村長トビーと申します。モンスターを追い払って下さりありがとうございました」
トビーは2人に頭を下げてお礼を言った。
アルケーは周囲の怪我人達に目を向ける。
「……大分怪我人が居るようね」
「死んだ者は居りませんが、モンスターに襲われたり、逃げる途中で転んだりで10人ほど怪我人が出ました」
「ふ~ん」
アルケーは腕に当木と包帯で応急処置されたハルトの腕を診る。
「骨が折れてるわね」
「はい。ちょいとドジを踏みました」
「笑い事では済まないわよ。奥さん泣いてるじゃない」
キッと強い目を彼に向ける。
睨まれたハルトは心配そうにする妻に目を向けた後、反省したのか申し訳無さそうに「はい……」と返した。
その返事を聞いたアルケーは彼の折れた腕に手をかざす。
「少しじっとしてなさい。超回復」
アルケーは回復魔法を施す。
すると痛みに耐えていたハルトの表情が見る見る驚きの顔へと変わって行く。治療が終わった彼は包帯を解くと当木を取っ払った。
「え? 何ともない? 動く!? 腕が動く! ありがとうございます!」
一瞬で完治した自分の腕を試す様に振りながら、ハルトはアルケーに深々と感謝した。
「さあ次は貴方ね。見せてみなさい」
アルケーはさっさと次の怪我人を見始める。
あっという間の治療にその場にいた誰もが、まるで救いの神が来たかの様に言葉を失って驚いた。
「あ、貴方は一体何者なのです?」
「さっきも言ったでしょ? 旅の魔法士よ。はい終わった。次」
片手間仕事の様に怪我人を癒やして行く。
「何て御方じゃ。これほどの魔法士に会ったのは初めてじゃ」
村長もだが三郎もこの力には驚いた。
確かに神域で戦った時、彼はアルケーをボロ布の様に傷めつけたはずなのに、次に襲って来た彼女は傷跡一つ無かった。
自分の怪我を治してくれた時だってそうだ。北条との戦いで瀕死の重傷だったはずなのに、彼女のお陰でこうやって生きている。
こうして眼の前でその奇跡を見せられると、改めて彼女が人を超えた存在であるのだと実感させられた。
10分も掛からずアルケーは全員の怪我を完治させてしまった。
「ありがとうございます。貴方様は村の恩人です。何とお礼を言えば良いのやら」
彼等を代表して村長が深くお礼を言った。
「大した事はしてないわ。苦しんでる人が居たから助けたまでよ。でもそうねえ、恩に思ってくれるなら宿とご飯を戴けるかしら?」
アルケーはちゃっかりと報酬を要求する。
「そのくらいお安い御用です! アルケー様のような魔法士が偶然訪れてもらえるとは何と言う幸運! これも女神アルケミスのお導きでしょう!」
と村長はその女神本人に感謝を述べた。
「ええ、女神様に感謝しましょう」
アルケーは上機嫌に自画自賛するのだった。




