第1話 任務
「第3コロニーでの任務ご苦労だった。疲れているところ悪いが次の任務だ。」
俺は疲れているどころじゃない。包帯ぐるぐるのミイラみたいな奴に次の任務を任せるとは…悪魔ってのはこういうやつのことを言うんだろうか。
「無理ですよ大佐。この怪我見てくださいよ!」
「大丈夫だ。さっき女医さんに「大佐が来る前に包帯でぐるぐる巻きにしてくれ」って頼んでいたのを聞いてたぞ」
遅かったか...。
仕事をしなくていいように出来る完璧な作戦だと思ったのに。
「怪我してるのは知っているが……ユニス、今手があいてるのはお前だけだ。ミニアもアマスも別の任務がある。他に優秀な奴はいないし...な、頼む!」
せっかくの休暇を(まあ病院生活だけど)潰されてしまうとは。
しかしお世話になっている人の頼みを断る訳にもいかない。
「分かりましたよ……。で、どこに行けばいいんですか?」
「地球だ」
――――
「マクロ・ハリス、この問題の答えは」
「答えはリトセント条約です」
「よろしい。この条約がいつ決められたのかをみなさん知っていますか?これは地球の....」
マクロ・ハリス。この名前になってもうすぐで2ヶ月になるが未だになれない。
受験の時も名前の欄にユニスと書きそうになった。
「さっきの問題よく分かったな」
隣の奴に声をかけられた。
確か名前はラスカ・バラサロナだったか。
首席合格者の名前はちゃんと覚えている。
「どうも」
軽く会釈して俺はまた授業に集中する。
そもそもなぜ俺がここにいるのかから話そう。
大佐に告げられた任務はストリクト士官学校内部にある技術開発部が開発している新兵器の設計図の奪取だ。
そのために地球人になり名前も変わった。
わざわざ地球出身の戸籍を買った理由は火星出身のものがストリクト士官学校を受験することはできないからだ。
地球と火星は戦争している。
ストリクト士官学校の卒業生は軍の中でも要職に着くものが多い。
敵側の人間を軍の中枢まで入れたくないのは当然だ。
戦争で何度も両者は衝突したが現在は膠着状態となっている。
地球側はその膠着状態を破るために新兵器の開発を始めたというわけだ。
火星側も俺みたいなのを送り込んで設計図を奪取しようと必死だ。
上もその新兵器次第で戦況が変わると評価したということだろう。
入学してしばらくした時に士官候補生全員が集められて「この中から新兵器のテストパイロットを選ぶ」と言われた。
その言葉から察するに操縦する系の兵器であると予想できる。
テストパイロットの選出方法は明かされなかったが成績で選ぶ可能性が高いだろう。
関門となるのは総合成績1位で入学した隣の席の首席君。
他にも俺が把握出来ていないだけで凄いやつがいるらしい。
そいつらを押しのけてテストパイロットになるのは骨が折れるが任務だしやるしかない。