表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そして愛は突然に  作者: 志波 連
97/97

97

 それから数十年、ゴールディ王国は医療大国として近隣諸国に名を馳せていた。

 オピュウムの栽培も順調で、庶民にも手が出る価格で安定供給できるまでになっている。

 

 元ヌベール辺境伯のタウンハウスに住んでいた黒狼は、去年近衛騎士隊長の座を降り、愛妻レモンを連れてのんびりと物見遊山に興じていた。

 二人の間には三人の男児が誕生し、長子は近衛一番隊を任されるほどの強さだ。


 イーサンとジュライは、辺境伯として今日もオピュウム畑の管理に余念がない。

 近々長女が黒狼とレモンの長子と婚約することになっている。


 結局アルバートとシェリーの間に子供は生まれなかった。

 そのせいかいつまでも新婚当時のような甘い空気を漂わせ、今でも二人仲よく同じ執務室を使っている。

 シュラインの長男を養子に迎え、王太子としての教育も進んでいた。


 ブルーノは旧ミスティ侯爵邸で、さらなるオピュウムの有効活用を研究し、ひとりっ子である娘も研究者として父を良く手助けしていた。


 あれからすぐに即位した隣国の王キースは、ゴールディ王国との強い絆を保ち、最強の同盟国として発展していった。


 そしてサミュエル。

 彼は対外的には生涯独身を貫き、国王代理として王をよく支え、シェリーを伴って出席していた公的な行事でも、若い頃と変わらないモテっぷりだった。

 彼の最後を看取ったのは、アルバートの侍従として仕えていたオースティンだ。

 アルバートが即位してすぐに、侍従を辞めたオースティンは、サミュエルと秘密裏に結婚した。

 王宮にある教会で、ごく近しい身内だけで挙げた結婚式。

 司祭もいない式だったが、二人は幸せそうに近いのキスを交わしたという。

 その時のオースティンは、かつてのローズを彷彿とさせる美しさだったらしい。

 二人の仲を知るのはもちろんこの時出席した6人だけだ。

 国王と王妃、近衛騎士隊長とレモン夫人、宰相とその夫人。

 

 これは前王と前王妃の死を伴った、あの大事件と同じように、ゴールディ王家最大の秘密としてどこにも記録は残されていない。


 絶世の美男と称され、多くの女性の涙に見送られながら逝ったサミュエル。

 その傍らで号泣するオースティン。

 彼の死後、オースティンは王家の墓守として静かに暮らしている。

 ゴールディ王国で同性婚が承認されたのは、サミュエルの死から3年の後だった。

 





おしまい


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] “完”“了”でもない“おしまい”で締めたにも理由があるのでしょうか。 内容は結構重いような気がするんです……だから⁈ [一言] やっと再読終わりました。 この最終話は群像劇のような締め…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ