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そして愛は突然に  作者: 志波 連
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【あらすじ、イーサンに辺境の戦地へ→イーサンは辺境の戦地へ】 キラキラと輝く緻密なレース模様のような木漏れ日の下で、大好きな恋人に膝枕をしているシェリー・ブラッド侯爵令嬢は、その恋人であるイーサン・シルバー伯爵家嫡男との結婚式を半年後に控え、幸せの絶頂ともいえる時間を過ごしていた。


「ねえ、やっぱりあのベールにするの?」


 寝ているのだとばかり思っていたイーサンがシェリーに声を掛ける。


「まだ迷っているの。だって異国の輝くような生地で作ったベールはお母様のご推薦だし、国産シルクの上品な方はお祖母様のお気に入りでしょう? 決められなくて」


「どっちを選んでもどっちかが傷つくのか……シェリーはどっちが好きなの? シェリーの好きな方にすれば良いんじゃない?」


「そうよね、でもどちらも好きなの」


「だったらどっちも使えば良いじゃない」


「どっちも?」


「そうさ。結婚式はお祖母様チョイスにして、披露宴ではお義母様の方にするんだ」


「ああ、それ良いわね。結婚式は厳かな感じの方が似合うし、披露宴は華やかな方がいいものね」


「さすが俺だろ? 惚れなおした?」


「ええ、さすがイーサンだわ。惚れなおしはしないけど」


「酷くない?」


「だってこれ以上好きになんてなれないほど好きなんだもん」


 そう言って顔を赤らめたシェリーの頬にイーサンが手を伸ばした。


「キスしたい」


 イーサンが上半身を起こしつつ、シェリーの頭を引き寄せようとしていたとき、二人の名を呼ぶ使用人の声がした。

 パッと離れ、声の方に顔を向けたシェリー。


「何事なの?」


 ブロン家の庭は、自然林を生かした作りになっているため、随分探したのだろう。

 使用人は肩で息をしていた。


「お嬢様、ご主人様がお呼びです。お二人で執務室に来るようにとのことでした。シルバー伯爵もご一緒にお待ちです」


「父上も?」


 驚いたイーサンがシェリーと顔を見合わせた。


「何事かしら」


「まあ、とにかく行ってみよう」


 立ち上がったイーサンに手を借りながら立ち上がったシェリーは、なぜか胸騒ぎを覚えた。


「お父様、入ってもよろしいですか?」


 ブロン侯爵の執務室前で声を掛けた。


「入りなさい」


 バリトンボイスが響き、ドアが開いた。

 イーサンにエスコートされながら入室したシェリーの目に飛び込んだのは、眉間に皺を寄せた父と、俯いて顔色を悪くしているイーサンの父シルバー伯爵の姿だった。


「シルバー伯爵様、ようこそいらっしゃいました」


 暗い雰囲気を無視して、シェリーがカーテシーで挨拶をした。


「ああ、シェリー嬢。お邪魔しているよ」


 いつもならもっと明るい声なのに……二人は顔を見合わせた。


「何事ですか?」


 イーサンの問いかけには応えず、ブロン侯爵が指先でソファーを指した。


「失礼します」


 二人の前に紅茶が運ばれたが、とても手を出せるような雰囲気では無い。


「お父様?」


 愛娘の顔をしっかりと見つめながら、ブロン侯爵が口を開く。


「二人とも落ち着いて聞きなさい。つい先ほど、王命により二人の婚約は解消することになった。シェリーは……アルバート第二王子殿下の妃となる」


 シェリーはひゅっという声にならない悲鳴をあげた。


「そんなっ! どういうことですか!」


 イーサンが立ち上がって抗議する。


「私に怒鳴るな。といっても無理か。私も散々怒鳴ってきた。しかしこれは決定事項だそうだ。覆ることは……無い」


 シルバー伯爵が後を続ける。


「第二王子殿下の婚約者だったミスティ侯爵令嬢が、隣国グリーナへ嫁ぐことになったんだよ。交易拡大の条件という名目だ。グリーナ国との交易は我が国の生命線だ。断るという選択肢は無いんだよ。わかってくれ」


「しかし! それとシェリーに何の関係があるのです? ましてや僕たちは半年もすれば結婚式を挙げることになってるんだ! 意味が分からない!」


 イーサンの父親は、荒ぶる息子を憐れんだ。


「お前の言うとおりだと思うよ。ブラッド侯爵も声を荒げて反対して下さったんだ。二人は愛し合っているのだと……引き裂くことはできないのだとね」


「だったら!」


 何も言わずギュッと拳を握るブラッド侯爵を見たイーサンが、冷静に言った。


「申し訳ございません。動転してしまいました」


 シェリーの横に座りなおしたイーサンに、シェリーは縋りつくように身を寄せた。


「ああ、君が大声を出すのも理解できるよ。私の力不足だ。申し訳ない」


 父の声にシェリーが泣き出した。


「お父様……なぜ? なぜ私が?」


「王妃殿下のご意向だ。年齢的に王家に嫁げる家格で未婚の娘は……お前しかいない」


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