砂漠
ジリジリと体力を削る、冬の暑さ。まさに異常気象だ。バシャン。頭から冷水が降ってくる。
「これで涼しくなるだろ」
「ありがとう」
「……やっぱりお前は異常だ。怪物だ」
一般的にこう言うのをいじめというのだろう。『相手がいじめと思えばいじめ』とよく言われているが、じゃあ逆もしかりだろう。ものを隠され、壊され、グループを外され、先生ですら直視しない。そんな状況でもいじめだとは思わない。あいつが言うように俺が異常だ。
「また、やられたの……、ごめんね。私のせいで」
俺の顔をなぞる。その手首には幾千もの虚しさの跡が残る。
「いじめとは感じない。君は笑っていたほうがかわいい」
彼女さえいれば俺はなんとかなる。君が俺に依存してくれるなら。
「君は私のせいで感情を──」
それを最後まで言わせることはない。言わせてしまえばこの関係が終わる。大きな借りを俺が彼女に突き刺している。それでいい。それでいい。
「じゃあ、また明日」
「うん、今日もありがとう」
夕焼け空をバックに彼女は手を振り続ける。笑顔で。別れる寂しさが君からの愛情を一番感じる。
「じゃーねー!ばいばいー」
ひときわ大きな声で見送った。
俺は彼の元へ走る。水をかけてくれたクラスメイトだ。
「今日もありがとう」
はい、今日の分。そう言って俺が手渡したのは札束。
「……もうやめてくれ、お金の問題じゃない」
西日が差して彼の顔はよく見えないが、喜んでいるだろうか
「なんで、最初に始めたのは君でしょ、あお金以外に欲しいものでもあるの」
「そういうことじゃない、俺が耐えられない」
まったく理解できない。はぁまたダメになったか。
「はぁ。いいよじゃあバイバイ」
俺と君は真っ赤に染まる。また誰かに手を出してもらわないとな。
全ては彼女のために。彼女が標的にならないように、そして俺に依存してくれるように。
俺は彼女という砂漠のオアシスというよりはサボテンになりたい。