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妄訳・曾呂里物語  作者: 帝江
9/11

自らの潔白を証明した狐(巻第一「狐人にむかひてわびことする事」)

 寛永八年未歳のこと(『曾呂里物語』板行から約三十年ほど前)、関東は武蔵国にて、さる御方の邸には植え込みと溜池があり、そこに白鴈を放し飼いにしていた。


 そこへ狐がやって来て、鴈を獲ったので、殿様は腹を立てて、近習にこう申しつけた。


「我が飼い鳥を狐どもが獲ったこと、憎たらしい事である。明日は植え込みの中を狩り立てて、巣穴を探し出し、狐どもを皆殺しにせよ!」


 近習一同、「かしこまりました」と申し上げた。




 その晩、宿直をしていた者の夢の中で何者かの声がする。


「殿の飼い鳥たちを植え込みに棲む狐が獲ったとご立腹のこと、御尤もではございますが、しかしながら、それは違います。他所から来た狐が獲ったのでございます。彼奴らは我々が成敗いたしますゆえ、明日の狐狩りはお許しくださいますよう、道理をもちまして、お願い申し上げます」


 まるで現実の出来事のように思われたので、不思議な夢を見たものだなと思いながら、このことは誰にも云わないまま、その日は暮れた。




 サテ、その日は殿に来客が多かったので、狐狩りの沙汰がないまま、日が暮れ、夜になった。


 昨晩と同じく、何者かが夢の中に再び現れて、


「もう! なんて非情な方なのでしょう。昨夜お詫び申し上げたというのに、殿に訴えてくださらなかったのですね。来客が多かったので命拾いできたものの、明日には必ずや狐狩りをされるに違いない」


と云うので、さすがに二晩続けてありありと夢に見るのは不思議なことだと思い、殿の御前に参上して、事の仔細を申し上げた。


 殿も、


「今夜は私も不思議な夢を見た。そういうことならば、明日の狐狩りは中止にしよう」


と云って、狐狩りは中止になった。




 明けて翌早朝、何者かに殺されたとみられる、大きな狐の死骸が五匹、縁に置かれていた。


 昔話の類ではない、不思議な話だったのでここに書き記した。

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