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妄訳・曾呂里物語  作者: 帝江
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ろくろ首 THE ORIGIN(巻第一「女のまうねんまよひありく事」)

 越前国の北ノ庄の話である。


 ある男が夜を押して上方へ向かっていて、途中「さはや」という場所に差し掛かったのだが、そこにある大きな石塔の下から、鶏が一羽、道へと飛び立って男の前に出てきた。


 月夜の明かり照らされた鶏のよくよく見てみれば、なんと女の首である。


 女の首は男を見ると怪しく笑いかけてきた。




 男が少しも騒ぐことなく、刀を抜いて斬りかかると、女の首はそのまま道筋を変えて、上方へと逃げていく。


 男は後を追いかけ、府中の町の「かみひぢ」という場所で追いついたところで、女の首は、近くのある家の窓へぴょんと飛び込み、内に入ってしまった。




 不思議なことだと思った男は、しばらくその家の前に佇み、内の様子を伺っていると、女房が夫を起こす声がして、


「あらおそろしや、たった今見た夢の中で、さはや野を通っていたのだけれど、そこで男が一人、私を斬ろうと追いかけてきたので、必死でこの家まで逃げてきたと思ったら、そこで夢から覚めました。ひどい寝汗をかきましたよ……」


などと、大きく息を吐きながら語っているのが聞こえる。




 これを聞いた男は、戸を叩くと、


「失礼ながら申し上げたいことがございます。開けてはいただけないでしょうか」


 と云い、内に入るや、


「先ほど御内儀を追いかけていたのは己でございます。さてあの女の首の正体は、人間でございましたか。あの怪しき姿、その罪業の程を思えば、なんと嘆かわしいことでしょう」


と女房とその夫に一通り説明すると去っていった。




 女房は身の程を嘆いて、このような有様では、夫とこれ以上添い続けることはとても辛くてできないと思い、京へ上ると出家し、北野真西寺に籠って、一心に菩提心を祈ったという。




 滅多にない、珍しい話である。

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