表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妄訳・曾呂里物語  作者: 帝江
11/11

狐の仕返し(巻第一「狐をおどしてやがてあたをなす事」)

 ある山伏が、大峰より駆け出して、ある野原を通りかかると昼寝している狐を見つけた。


 近寄って耳元でほら貝を思いっきり強く吹くと、狐は肝を潰して、どこかへ逃げていった。




 その後、さらに進んだ山伏だが、まだ未の刻(午後二時ごろ)には早いかという頃になると、急に空がかき曇り、日が暮れてしまった。


 不思議に思って道を急ぐのだが、野原は広大で、泊まれそうな宿もない。


 そこで、目についた三昧堂に入り、火屋の天井に上がって寝ることにした。




 そこへ、どこからともなく、幽かな火の明かりが数多見えたかと思うと、次第に近づいてくる。


 よくよく見れば、この三昧堂へ向かってくる葬列である。


 およそ二、三百人もいるかと思しく、華やかな様子で、引導を終えると、やがて死骸に火をかけ、参列者は帰っていった。




「仕方なくとは云え、とんだ所に来てしまったことだ」


 山伏がそう思っていると、段々と焼けているはずの死人が、火の中から身震いしながら飛び出してきて、周囲をきっと見回すと、山伏を見つけるなり、


「そこにいるのはどなたでしょうか? 知らない道を独りで行くのは心細いので、私と共にいざ参りましょう」


と飛びかかってきたので、そのまま山伏は気絶してしまった。




 ややしばらくして、次第に意識が戻ってくれば、まだ昼の七つ時で、そこは三昧堂ではなかった。


 さては、ほら貝で驚かされた狐の意趣返しであったか、と気づいたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ