産みの親のおべっか
日浦3佐がこんなにも思慮深い人だとは思わなかった。日浦3佐は小野井にこう言った。
「これだけは言っておくぞ。小野井、お前がどんな想いでこの絵本を作り上げたか。それが読者にどう伝わるかどうかが大切なんだ。いくら自分で素晴らしい出来のものが完成したからと言ってそれが、必ずしも世間の評価を得るとは限らない。言って見れば売れないものは自己満足だ。」
「これだけ一生懸命やりました。でも結果は良くありませんでした。それじゃあ駄目なんだ。自分で最高のモノを作り上げました。それが世間の評価を得ました。それでようやくOKなんだ。お前に絵本製作の才能があるか無いか。そんな事はどうでも良い。仮にも自衛官であるお前が、特攻について調べ万人が理解しやすいように工夫し世に広める。これは未だかつて誰もやった事がない事だ。勿論、責任は上官である俺がとってやる。」
「自衛官だって人間だ。表現の自由位あっても良いだろう。売上金は全て防衛省に入る。だから、日本の防衛費にもなる。これだけ画期的な事を若いお前がやる事は意義深い。俺は、この絵本を読んで素直に感動した。南方(東南アジア)に行っていた帝国海軍のパイロットの飛行服にオオキンケイギクの種がたまたま付着して、それが鹿屋基地に土着した。大まかなストーリーは、たった2、3行で表せる事かもしれない。だがお前が足で稼いだ元特攻兵士の生の声、デジタル化された挿し絵の臨場感。テキストも良く出来ている。」
「特攻で亡くなった4400人以上の御霊も喜んでくれている事だろう。勿論、世間がどう評価するかは、蓋を開けて見なければ分からん。だが、確実に俺は読者の心を掴むと思う。お前は良くやった。」
日浦3佐は満面の笑みで、小野井と握手した。小野井は業務の合間をぬって一生懸命やって来た事が報われたと、思った。上官のおべっかかもしれないが、それでもそう言ってくれた事は嬉しかった。
日浦3佐という上官がいなければ、きっと特攻花-TOKKOKA-は生まれる事は無かった。今それがようやく形になろうとしている。先人達が命をかけて何を守りたかったかという事が、この作品を見れば、その何かを考えさせてくれるモノになるだろう。




