一生懸命に全精力を込めて
小野井はデジタル紙芝居を直属の上司である日浦3佐にもきちんと見せていた。日浦3佐の感想は以下の通りである。
「小野井が、作って来たなら上出来じゃないか。いや出来すぎなくらいだ。でも、1つだけ加えて欲しい事がある。それはすばりオオキンケイギクの黄色い花の絵だ。タイトルが特攻花なのに、特攻花らしき花が出てこないのは、不自然だと思わないか?」
小野井は日浦3佐の指摘に納得した。確かに花の絵がない。一番肝心な部分を描いていなかった。しかもそれに気付かずにいた所を指摘する辺りは流石である。
小野井は直ぐにオオキンケイギクを花の図鑑で調べた。そして、それを絵コンテ担当の山井曹長に託した。山井曹長は、造作もなくデジタル版と絵本版、2パターンのオオキンケイギクをデザインした。この修正版をもう一度日浦3佐の所へ持って行った。日浦3佐の合格が無ければ、世の中に完全な状態では出せないと、感じたからだ。小野井は、無意識的に日浦3佐を最終審査官と捉え、完全版を世に送り込もうとしていた。
「しかし、こんな短期間で任務をこなしながら、これだけハイクオリティの物を作るとは大したものだな。」
その言葉は承認の言葉であると小野井は受け取った。そして、小野井は念のため法律の専門家である弁護士にも相談した。パワーポイントを使ったデジタル紙芝居と絵本は、法的には何の問題もないと御墨付きを頂いた。その確証を得てから、いよいよデジタル紙芝居、特攻花-TOKKOKA-~英霊の祈りを込めて~を配信する作業に入った。電子書籍として出版手配も整えた。と同時にデジタル紙芝居を用いての公演会の計画も同時進行で行った。
小野井は決して難しい事をやっているつもりはなく、その自覚も無かった。だが前例の無い現役の自衛官による異例の、いや慰霊の為の著作物の創作と公演会は、大変な事であった。
今は多くの人にこの特攻花を見てもらいたい。それ以外の感情というものは、小野井には存在していなかった。それを示す行動を小野井はとっている。誰よりも一生懸命にこの作品を作り上げた小野井武士という人間の全精力がこの作品にはあった。




