印税でがっぽり儲けるはずが、実は…。
デジタル紙芝居を書籍化する前に、やらねばならない事があった。それは、この作品をもっと見てもらい、多くの人の意見を聞く事である。
これまでに何度か公の場で紹介はした事があるものの、日数や人数は圧倒的に不足していたのであった。
そこで、小野井は仕事が休みになる土日を利用して、公民館等の場を借りて、お金のかからない無料公演をする事にした。
そうやって、知名度を上げた上での書籍化の方が、圧倒的に国民に普及すると踏んだ上でのモノであった。
今は九州、四国、中国地方までしか出張出来ないが、どうしても全国の人にこの作品を見てもらいたいという願望があった。
とは言え、平日は任務でくたくたになってしまう。仕事は休めない。このデジタル紙芝居活動は言ってみれば"部活"だ。それに日浦3佐からは自衛官としての本来任務はきちんとこなせ。と言われている。
だが、現役の幹部自衛官による無料公演は、世論をざわつかせ、その効果は絶大なるものがあった。
SNSも活用し、「あの作品をただで見れるのは、勿体ない。」とか、「絶対見るべきだ。」というような肯定的な意見がある一方で、「自衛官としてのコンプライアンスを逸脱している。」とか、「保守的な面が否めなく右翼的な思想を子供に植え付けるのは良くない。」といったリベラルな人達からも厳しい意見を戴いた。
デジタル紙芝居は、現代のニーズにあっている。見る側も、語り部もこの媒体でやるのがbestだった。語り部は小野井が積極的にやった。ただ自分の作った文章を読むだけなのだが、ただ無機質に棒読みしてしまうのではなく、感情を込め、アクセントをつける事で見ている人間をその世界観に引きずり込むナレーションでなければ、ならなかった。
慣れて来ると、どこでどのような強弱をつければいいのかという事が分かる様になっていった。自分の書いた文章だから尚更なのかもしれないが、そういう状態になるのに、時間はかからなかった。
歴史は嘘をつかない。拡大も縮小もしない歴史事実が人々に少しずつ受けられていた要因なのかもしれない。ただ、もう少し国民の認知度を上げる必要があるかもしれない。と小野井は思っていた。
何せ、制作費用の半分以上が税金(国費)で賄われ、売り上げの75%は国に支払うという契約がなされていたからである。諸費用を鑑みると、小野井の手元には10%にも満たない額しか残らなかった。




