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十死零生のカミカゼアタック

 特攻の事など、教わってはいない。小野井はそれを聞いた時、つくづく知るという事が大切な事だと思い始める。とにかくこれも何かの縁であろう。そう考えた小野井は納得の行くまでこのオオキンケイギクという花とその背景についての調査を継続する事を決める。無論、日々の業務に支障の無い程度に。

 特攻機による死者は太平洋戦争だけで、把握しているだけで約4400人にも及ぶ。この人数を多いと思うか少ないと思うかは、後世に残された者にとって大切な事である。

 大日本帝国陸海軍は大戦を通じて、甚だしい人命軽視の元に、作戦を遂行していた。当時こんな言葉が庶民の常識だった。

 「搭乗員(パイロット)は消耗品、整備兵は備品」

 赤紙一枚で入荷出来る消耗品は日本国内に数多といる。パイロットが死ねばまた補充すれば良い。という考え方の元にカミカゼアタックは敢行された。

 人類史上最もクレイジーな作戦を立案し、実行したのが、大本営(だいほんえい)だ。特攻は海軍の専売特許だったが、陸軍も海軍に負けじと愚かなスーサイドアタックを実施した。

 とにかく連合軍は当初はカミカゼに恐怖心を抱いていた。西洋の倫理観からすれば、己の命と刺し違えるという武士の気持ちは理解し難い。

 断じて行えば鬼神もこれを避く。とは正にこの事である。第二次世界大戦で命を落とした日本人の将兵は約230万人で、民間人の犠牲者を含めると、約300万人である。将兵の死亡者の約70%は、餓死が死因である。

 補給や無理な戦線の拡大さえしなければ、満足な食べ物もなく死ぬ事は無かった。小野井はそれを知る度にどうしてそんな無謀な事をしたのかという、無念さだけが残った。

 大切な事は、特攻隊員はヒロイズムに酔った国粋主義者などではないという事だ。どこにでもいる日本人や朝鮮人が祖国を守る為に、軍人相手に行った行動であり、イタズラに民間人を巻き込む自爆テロとは全く異なるものである。

 これは、見識の無い人間には理解できないかもしれないが、少なくとも小野井は、詳しくそれを調べるまでは分からなかった。

 そして、特攻を語る上で、小野井は最重要キーワードの所に辿り着く。「十死零生」九死に一生の作戦はあっても、十死零生の作戦は、作戦ではない。と、海軍上層部からは反対の声が根強かった。

 指揮官として、部下の命を預かる防大時代も海自幹候でも十死零生の作戦など有り得ない。と教わってはいた。作戦に必要な事は部下の死と引き換えではない。

 たとえ作戦が失敗に終わったとしても、部下の命があれば、再起は可能である。特攻の父大西瀧二郎中将は言う。「これは統率の外道だよ。」と。

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