戻ってきた日常
一週間に及ぶゼロファイターへの取材?というよりは調査を終えた小野井は、久しぶりに鹿屋航空基地に戻ってきていた。自分の日常の業務もそこそこに、早速集めた資料やメモや記憶を頼りにゼロファイター達の生の声をレポート(形)にしていた。そこへ上官の日浦強志3等海佐が現れる。
「おお、小野井3尉帰ってきたか…。で、どうだい進んでるか?」
「見ての通り業務後にコツコツとやってる次第ですよ。」
「どうだった?"生きる伝説"は凄かっただろ?」
「寝たきり老人もいましたが、圧倒されましたよ。」
「ジェット機のパイロットも凄いが、レシプロ機のパイロットも凄かっただろ?」
「肌艶が抜群に良くてビックリしましたよ。それも若い時の貯金だって。」
「4人だっけ?あれ?当初の予定だと3人じゃなかったか?」
「一人は偶然道を聞かれた人なんです。」
「皆さんそれぞれ悲痛な想いをしているばかりの人達でした。」
「ゼロファイターも人の子だからな。」
「そうですね。」
「でも、肝心要のオオキンケイギクについては何も分かりませんでした。」
「それは、その内分かるんじゃねぇか?」
「そうですね。その意味でも、大変意義深いものになりました。」
「休暇を一週間もくれと言われたのは初めてだったぜ。」
「お前は将来有望なエリートなんだぞ?まぁ、そんな事はお前にゃあ関係ないのかもな。」
「期待はするぞ。」
「御期待に答えられるよう精進致します。」
「戦争経験者の話を生で聞けるなんて、何物にも変えがたいぞ?」
「そうですね。話を聞いた人は皆さん80~90歳以上の後期高齢者ばかりでした。」
「人間だからな。特攻経験者とは言え。」
「自分もきっとこれが最初で最後だなと思って聞いていました。」
「小野井3尉、これだけは言っておく。感情移入し過ぎるなよ。」
「はい。冷静な事実の積み上げの上にしか真実はありません。」
「感情と言うのはな、厄介なもので話を必要以上に大きくしてしまう習性がある。」
「所で、きりがないのですが、終わりはどうしたら良いですか?」
「そうだな。お前が気が済むまで、納得するまでやれば良いさ。」
「分かりました。私はこの取材を形にしようと思っています。」
「ほう。楽しみだな。でも今は聞かないでおく。」
「無論、日常の業務に支障がない程度にやりますから。」
「防大を出てるお前なら大丈夫だろう。」
「こんなにワクワクするのは初めてです。」




