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特攻花~TOKKOKA~ 英霊の祈りを込めて  作者: 佐久間五十六


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一兵卒とエリートの狭間で

 元帝国海軍飛曹長栄須豪富三夫97歳は、誰からの紹介もなく、宇野倉滝三に話を聞いた帰り道に偶然道を聞かれてその礼に名刺をもらった、という偶然の産物だった。

 橋本、安岡、宇野倉と学年はさほど変わらないが、話す事も聞く事も鮮明に出来た。それは小野井もビックリした。

 「あの時の若いのか?覚えとるぞ、道案内をしてくれた。」

 「海上自衛隊鹿屋航空基地所属3等海尉小野井武士と申します。」

 「御主自衛官なのか?その若さで3尉とはエリートだな?」

 「防衛大卒ですがエリートと呼ばれる程ではないです。」

 「で、今日は何をしにこの老いぼれの所へ来たのか?」

 「特攻の事について聞きたくて来たのですが、辛いようでしたら帰ります。」

 「あの頃の話を若い者に伝えるのは、生き延びた者の宿命だからな。それにワシはあと少ししか生きられんからな。」

 「え?そうなんですか?」

 「ワシが何年生きちょると思う?97歳だぞ。」

 「ワシはお前さんの様なエリートではなかったからな。現場の一兵卒からの叩き上げじゃった。最終階級はポツダム宣言受諾後に上がったから、現場では2等飛行軍曹(2飛曹)だったな。日本海軍航空隊のエースと呼ばれるような人は皆、ワシの様な叩き上げが主じゃった。海軍兵学校出の新米飛行隊長など、目ではない。腕に覚えはあったぞ。」

 「鹿屋に元々いた訳ではない。ワシは南方のラバウルやその周辺の島で空戦を繰り広げていた。じゃが、戦況の悪化で内地に戻される事になった。アメリカ軍の航空機は頑丈だった。対する日本海軍航空隊の誇る零戦は軽量化の為防弾板を外すなど、兵隊の命を粗末にしていた。ワンショットライター等と揶揄された陸軍の一式陸攻はその典型だった。後にこの防衛能力の低さが日本軍を致命的な状況に持って行ってしまうのだが、零戦より強い機種を出せたアメリカとそうではなく零戦一本で勝負に出た日本軍とでは雲泥の差があった。」

 「パイロットの頑張りではどうしようもない問題ではあったが、開戦時無敵を誇った零戦だった為、ほとんどバージョンアップされることなく日本航空機業界とアメリカの航空機開発力では、わずか3年で零戦を旧式にするだけの開発スピードがアメリカにはあった。日進月歩の航空機開発において日本のそれは戦争の勝敗を左右するものになっていた。物量や、国力ではアメリカに敵わない事を知りながら戦に望んだ大日本帝国だったが、我が方は、人的ミスを多く重ねて敗退して行く。」

 「日本はヒューマンエラーと物質文明によって敗れた。と言っても良い。現場はいつもベストなパフォーマンスをしていたとワシは思う。上官に逆らう事が許されないのは、軍隊の常であるが、特攻の命令だけは部下に出したくなかった。そう言う人達を侮辱するような事はして欲しくないとワシは思うな…。」

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