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エピローグ チョコの味


「そんなわけで、バレンタイン企画やるよ!」


 星会長が突拍子も無くそんなことを言い出した。

 家庭科室でみんなでチョコを作りましょうって企画らしい。

 バレンタインの前日に行われる。


「面白そうです」


 御船が賛同する。

 まあ、俺もそう思う。


「俺も、いいと思う」


「そういう訳で、僕にチョコ作って〜、宮沢っち〜」


「嫌です」


「じゃあ僕のチョコを受け取ってください!」


「もっと嫌です」


「もっとなの!?」


 星会長と宮沢副会長のいつものやり取り。

 会長は副会長を振り向かせるために生徒会長になったらしい。

 なんて不純な動機。


「会長のチョコを作るのは嫌ですが、企画自体は賛成です」


 一応全会一致した所で、行動に移る。

 場所の確保とかは既にしてあるらしい。


「じゃあ、黒崎君は家庭科室の備品をチェックして来てくれない?」


「おう」


「御船さんはイベントの広告を作って欲しいな」


「了解です」


「宮沢っちは、僕と買い出し!」


「1人で行きます」


「ガーン!」


「会長は別の仕事あるので、それを片付けてください」


「分かったよ……しくしく」






 ——家庭科室に行き、備品の数を数える。

 鍋とか、ボウルとか、クリームとかかき混ぜるアレ(いつも名前分からずに使ってる)とかの数をメモする。

 設営の時に必要そうだから、ついでにコンセントの位置も確認した。


「こんなもんか」


 生徒会室に戻る時、家庭科部員に出くわした。

 今から部活を始めるらしい。


「黒崎じゃん。聞いたよ、チョコ作るイベントやるんだってね」


「ああ、会長の発案でな」


 クラスメイトの『竹之内』。

 生徒会活動を始めてから、俺に話しかけてくれる相手が増えた気がする。


「黒崎は誰かに作るの?」


「俺か?」


 何も考えてなかった。

 親父に……は、一応喜びそうだけどバレンタインに渡すのはキモいよな。

 だったら、やっぱり御船だな。


「生徒会の後輩だな」


「それって、いつも一緒にいる女の子?」


「いつもってほど一緒にはいないだろうが」


「そうかなあ、2人は仲良いって言うか、お似合いって言うか、ひょっとして付き合ってんの?」


「ば、ばば、馬鹿野郎! そんなんじゃねえよ!」


「めっちゃ動揺してるし……」


「うるせえ!」






 ——生徒会室に戻ると、哀愁漂う感じで星会長が仕事をしていた。


「あ、黒崎君お疲れー」


「おう、お疲れ会長」


 もう生徒会室に俺がいるのも当たり前になってきたな。

 そう言えば、最近は地学講義室には言っていない。

 俺も御船も、問題が解決して、それぞれの生活をしている。

 御船と会うのはこの生徒会活動でのみとなっていた。

 俺と御船はお互いに『居場所』になった。

 でも、今は新しい『居場所』を見つけたり、元ある『居場所』を取り戻している。

 もう俺達は、あの地学講義室でお互いを励まし合わなくても大丈夫な訳だ。

 それでも一緒にいたいと思うのは別に不思議な箏じゃない。

 友達なんだから、当たり前のことだ。

 でも、何か寂しいって言うか……。

 何なんだろうな。

 今の俺は、御船にとって何者なんだろうか。






——そんな感じでバレンタイン前日。家庭科室でチョコ作りが行われる。


「黒崎君~、上手くいかないよ~」


 会長が助けを求めてくる。


「ちょっと貸してみろ」


「おお、さすが黒崎君! お菓子作りも出来るの?」


「まあ、時々作るからな。作った方が安い場合もあるから」


 作業をしていると、騒がしい女子の声が聞こえる。

 参加率は、やっぱり女子の方が多い。

 仲良しグループで参加したり、部活仲間でだったり、色々。

 女子の輪の中に御船がいた。そして、いつもの微笑み。

 俺がいない場所で。

 遠い所に行ってしまったような気がする。


「黒崎君、御船さんのことが気になる?」


「いや、上手くやれてるかなって」


「ふ~ん。ところでさ、チョコ渡すならどこがいいかな」


「人気の無い所ならどこでもいいんじゃね?」


「そっかそっか。よし、宮沢っちに受け取ってもらえるように頑張るぞ!」


「ご愁傷様」


「何でもう敗北してるの!?」






 しばらく作業していると、御船がこっちに来た。


「黒崎さん、食べてみてください」


 御船の作ったチョコは形はちょっと崩れていたが、ちゃんとしたものだった。


「どれどれ……」


 口に入れる。

 こ、これは……!

 ぬちゃ、ぐにゅ、ばきっ。

 何だこの食感。どうしてこうなった。


「どうですか?」


「兵器としては合格だな」


「お菓子としては?」


「赤点」


「そんなにダメでしたか……」


「ああ、俺が教えてやるよ」


「えっと、黒崎さんは忙しいでしょうし、武藤さんに教えてもらいます」


 再び女子の輪に戻って行った。

 別にそこまで忙しくないのになあ……。

 やっぱり同姓と一緒の方が良いのだろうか。

 俺はもっと御船と一緒にいたいのに。

 でも、今の御船には別に友達がいるんだ。ずっと俺を見てくれる訳じゃない。

 俺はあくまで友達の内の1人でしかない。


 俺は今日、やらなければならない事が出来た。






 ——久しぶりの地学講義室。片付けが終わった後、御船と2人でここに来た。


「久しぶりですね、ここは」


「まあ、本当は勝手に使っちゃいけないんだがな」


 本当に懐かしい。

 休み時間と放課後、御船と2人で過ごした時間。

 あの時間があったから、今の俺がある。


「だから、この鍵を使うのは今日が最後だ」


 俺が1年の時に勝手に作った合鍵。


「ちょっと、寂しいですね」


「でも、俺達にもうこの場所は必要ない。そうだろ?」


「そうですね……」


「俺達は、これまで支え合って、頑張ってきたよな」


「はい。黒崎さんのおかげで、クラスに友達が出来ました。本当にありがとうございます」


「礼を言うのは俺の方もだ。おかげで親父と仲直り出来た。ありがとな」


 こうやってきちんと礼を言ったことは無かった。

 でも、今日の目的はそれじゃない。


「でもな、最近ちょっと困った事があってな」


「困った事? 私で良ければ力になりますよ」


「寂しいんだよ。お前と一緒にいられなくて」


「えっ」


 御船はびっくりしていた。


「確かに、一緒にいる時間は減りましたね」


「そうだな、でもそれは良いことだ。『居場所』が増えたって事だから。だけどな、もっと一緒にいたいって思うんだよな」


「黒崎さん……」


「だから、俺は言わなくちゃいけない」










「御船、俺の恋人になってくれ」











 御船にチョコを差し出す。

 1日早いバレンタイン。

 しかも逆チョコ。

 でも、これが俺の気持ちだ。


「黒崎さん……。」


 御船はチョコを受け取る。

 そして、微笑んだ。


「先に言われちゃいましたね」


「それって……」


「私も、黒崎さんの事が好きです。受け取ってください」


 御船が俺にチョコを差し出した。


「武藤さんに教えてもらいましたから、上手くなっているはずです」


「不味くても食うよ。お前のなら」


「美味しくなってますよ!」


「じゃあ、一緒にチョコ食べるか」


「はい!」


 御船が俺に作ってくれたチョコ。

 ばりっ。

 ちょっと硬い……。

 でも、美味しい。


「御船」


「はい」


「これから先も色々あると思うけど、俺達ならきっと大丈夫だよな」


「はい……黒崎さん、末永くよろしくお願いします」


「それだとプロポーズみたいじゃねえか?」


「末永く、一緒にいたいです」


「そうだな……御船」


 これからもずっとずっと一緒だ。





 初めてのキスの味は、甘かった。


 初めて長編を書きました。

 最後まで書き終わった感想ですが、短編に比べてかなりしんどいですね(o´Д`)=з

 今作はちょっも暗い雰囲気になり過ぎたと思うので、自分自身も途中でモチベーションが上がらず、そこら辺も反省です。

 とにかく、完結出来て良かったです。

 見てくださってありがとうございました。

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