プロローグ
初投稿です......生暖かい目で見てください。
生暖かい目で見てください。(二回目)
牛魔窟と呼ばれる洞窟がある。
入口はただの洞窟のようで、中に入り奥へと進むと、広大な円形の『場』にたどり着く。
壁面は血と、この『場』の主の体液によって黒くコーティングされており、異臭と共に異様な熱を発していた。
そんな『場』に立つ影が二つ。
天井に自生したヒカリゴケが照らすそれらの容貌は対照的だった。
片や、体長は十五メートルを越し、頭部に巨大な2本の牛角を戴き、強靭かつ壮大な6本の脚で地面を掴む『鬼』。世に、牛鬼と呼ばれるこの『場』の主。
片や、蒼い着流しを纏い、百七十センチ程度の体格に見合わぬ巨大な剣を構える男。
十六、七歳程度の男は、短く切り込まれた黒髪を、手に握るネジとパイプと鋼鉄の塊が上げる唸りで揺らし、牛鬼を睨みつけていた。
握る手に力を込めると、グリップの上部に嵌った青い宝石がキラリと光を発する。
踏み切る足に力を込め、フ、と息を入れると、突っ込んだ。
狙うは牛鬼の右前脚。
堅牢な甲殻に包まれ、もはや丸太と表現出来る程の脚に、男は剣を振り下ろした。
「纏え纏氷」
言って。
宝石が一際強く光を発し、剣の唸りと共にその力を解放する。
刀身から発せられたのは、氷。
一瞬で刃を形作ったそれは、牛鬼の甲殻を貫き、断ち切っていく。
だが、男が剣を振り切るよりも先に、牛鬼が動いた。
男を振り払うように右脚を振る。
男は力に逆らわず、跳んだ。
壁を踏み、降り立った男は、
「氷じゃ浅いか」
言うと、怒りの炎を瞳に宿らせた牛鬼が突っ込む。
男は剣を一振りし氷を剥がすと、懐から黄色の宝石を取り出す。
青い宝石をグリップから取り外し、黄の宝石を嵌め込んだ。
「鳴らせ、鳴雷」
バチリと、ほとばしるは電撃の波。
最初は一つ、次いで二つ。
音は次第に多く、大きくなり、そして――
「Guaaaaa!!」
牛鬼が男へぶち当たる。
だが、そこに男はおらず。
「かってえなぁ、おい」
身体を捻りから戻し、着地した男の背後で、牛鬼の六脚が弾ける。
斬ったのだ。
牛鬼という大質量の突進で生じた大気の流れに合わせ、捻り、乗って、斬ったのだ。
「Gunuuuuu......」
剣を持つ右手をだらりと下げ、残心のまま振り返る男に、牛鬼が恨めしげな目を向ける。
「おいおい、そんな目、すんなよ」
クク、と喉で笑い、
「お前、この『場』、何人だ?何人殺して作り上げた?」
笑いを収め、無表情に。
「死ねよ、鬼。己が罪を自覚し、ただ死ねよ」
外した青の宝石を取り出し、グリップへ近付ける男。
先程の攻撃の余波か、腕を這う雷が青く変わる。
「纏い鳴らせ。我が激情を現せよ、青雷。鳴雷纏氷、氷雷衝」
「Gryuuuuuuu!!!!」
牛鬼が、炎を吐く。
それは男を一瞬で消し飛ばせる程巨大な火球で。
「そんな柔なモンで、この激情、止まると思うなよ」
ただ一閃。
大上段からの振り下ろしは青雷を纏い。
火球を斬り裂き、牛鬼を断った。
響く音は慟哭に似て。
崩落した壁より差し込む光を背に受けた男。
人として鬼を討ち、鬼と呼ばれた男。
人呼んで、討滅鬼。
「ああクソ、腹減った」
三百と余年を生きた牛鬼。
討滅完了。
一章は全十一話構成です(エピローグ含め)。
二章はちょくちょく書き溜めしてます。
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