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状況把握4

維心は、記憶の玉を見終わって、ぐっと眉を寄せて考え込んでいた。

今見た全ての記憶を、頭の中でまとめてそれぞれを繋ぎ合わせ、あちらで何が起こっているのかそれぞれの視点から整理していたのだ。

同じように、隣りで考え込む炎嘉は、椅子の背にもたれかかって一見寝ているようにも見える。

維心は、あれらの視点がようやく分かって、炎嘉の方を向いた。

「…炎嘉。まさか寝ておるのではなかろうな。」

炎嘉は、チラと片方の目を開けてこちらを見た。

「誰が寝ておるのだ。あれらの記憶を整理しておるのだ。とはいえ、もう終わる。」と、体をソファから起こして、息をついた。「…全てはあの、ドラゴンの新しい王のせいか。ヴィランとか申したな。」

維心は、頷いた。

「あれが王座に就いてすぐ、周辺の城へ侵攻し、軒並み傘下に加えて参ったのだ、力での。逆らえば、皆殺しにされる。服従の証として、それぞれの王妃と子を一人ずつ、ドラゴンの城へと住まわせることになっており、王達はそれらを質に取られておるから逆らえぬ。此度の侵攻では、本州へとたどり着かねば子を一人ずつ殺すと言われておった。だからあれらは、退くに退けずに前進しておったのだ。」

炎嘉は、頷く。

「とはいえ、ドラゴン側のことが分からぬの。ドラゴンの軍神はすぐに退いたゆえ、最初主の気に当たって消滅した奴ら以外は、撤退して参った。何を思うてヴィランがこちらへ侵攻しておるのか、肝心のところが傘下の宮の王の記憶では分からぬ。」

維心は、フーと長い息をついた。

「ドラゴンを捕らえるしかないか。とはいえ、次の機会を待つしかないの。どうせすぐに参ろうが、もしこなんだら我は一度、宮へ戻る。」

炎嘉は、驚いたような顔をした。

「なんと申した?そうは言うても、主が退いたらすぐに来るのではないのか。」

維心は、首を振った。

「それならそれで良い。また来るゆえな。それよりも、我が不在である宮が案じられる。前も言うたように、北から来るのはまだ良い方なのだ。」

炎嘉は、それこそ怪訝な顔をした。

「北西は無いと申しておったではないか。南東と東は海。他にどこから来ると申す?」

維心は、それこそ険しい顔をした。

「…炎嘉。我は龍であろうが。」

炎嘉は、ますます眉根を寄せた。

「今さら何ぞ。それがどうした。」

維心は、自分の手を広げて見せ、その長い指の間にある、少し他の神より指の間の膜が大きい部分を見せながら、続けた。

「我ら龍に水が関係あるか。むしろ水は誰よりも得意ぞ。太古の昔、我らは同族で戦う時、海の中で戦っておる時もあったほどぞ。そしてドラゴンも、同じような能力を持っておる。」

炎嘉は、目を見開いて維心の手を見つめた。そうだ、なぜにそれに気付かなかった。自分達が水の中は得意でなく、潜るぐらいは出来ても戦うなどとても無理なので、考えたことも無かった。

「それは…つまり、あれらは海から来るかもしれぬと?」

維心は、険しい顔のまま、頷いた。

「その通りぞ。そうなると、上陸せぬように迎え撃てるのは我ら龍族だけ。ここへ出て来ておる場合ではないのだ。あちらの戦略が、もし我をこちらへ足止めしておいて、あちらから上陸して先に落とすつもりであったらなんとする。あちらには、維月も居るのだぞ。我は、長く宮を空けることは出来ぬのだ。」

言われて、炎嘉はなぜか居ても立っても居られないような心地になった。それならば、ドラゴンが上陸したのちに最初に入るのは炎嘉の領地かもしれない。龍と隣同士で海岸線を領地としている鳥は、海から来られたら分が悪かった。

「ならば…ならばここの見張りは焔に任せて、我らは戻った方が良い!海の中で阻むのは、主らでなくば無理ではないか!少なくとも主は、宮に居らねば!」

維心は、炎嘉の反応を見て、大きなため息をついた。

「そう言うと思うたわ。我もいろいろと考えを巡らせておるうちに、そのような考えが浮かんで参って安穏としておられぬなと思うたところ。こうして捕虜側の考えも分かった今、龍を五千だけここへ残して、一万は連れて宮へ帰るかと考えておるのだ。」

炎嘉は、何度も頷いた。

「そうだ、帰ろうぞ!我の軍神の方を少し多めにここへ残すゆえ、主は帰った方が良い!その代わり、主らには我が宮も守ってもらわねばならぬがの。ここに残したら今少ない軍神が更に少のうなってどうしようもないしな。」

維心がそれに返答しようと口を開いた時、戸の向こうから声がした。

「龍王様、龍の宮、鷹の宮より急ぎの書状が参りましてございます。」

維心は、片眉を上げた。書状?

「これへ。」

扉が開き、旭の軍神筆頭である朱門が入って来て、膝をついた。そうして、三つの書状を維心に差し出した。

「こちらでございます。」

維心は、頷いて受け取る。

一つは、箔炎からの書状、もう一つは、鵬からの書状、そして最後は、維月からの文だった。

「どうしたのだ、文など寄越して。」

維心は、迷わず維月の文を真っ先に開いた。炎嘉は、驚いて言った。

「こら、維月ではなく箔炎のを先にせぬか!この状況で何を考えておるのだ主は。」

維心は、言われながらも維月の文から手を放さなかった。それどころか、箔炎と鵬の文を炎嘉に放って寄越した。

「そら。主が読めば良いわ。」と、維月の文に目を落とした。「…美加?ミハイルと…。」

維心は、その文をじっと見つめた。維月の字からは、必死の訴えを感じていて、美加とミハイルが箔炎の宮に、北西の大陸を逃れてこちらへ渡って来て保護して欲しいと言っているから、どうか助けてやって欲しいと切々と綴られてあった。そして、最後に、『とてもお会いしとうございます。お早くお戻りくださいませ。』と、書き添えて終えられてある。

維心は、立ち上がった。

「帰る。箔炎はミハイルのことをどうのと言うて来ておるのだろうが。」

炎嘉は、維心が立ち上がったので驚いて書状から目を離して答えた。

「何ぞ、維月が言うておるか。その通りよ、どうしたら良いかと。鵬は、早めに対応策を命じてくれと。」

維心は、頷く。

「美加は我らの前世の孫に当たり、維月は案じておるのだ。あれは罪を犯して北へとやられたが、そこで改心してようやっておったもの。此度は戻って良かったものよ。これで少しは、あちらの思惑が分かるやもしれぬではないか。ミハイルはドラゴンなのだ、我らに有益な情報が必ずあるはずぞ。維月が早く帰れと申しておるし、我は帰る。炎嘉、主はどうする。」

結局は最後の一押しは維月が帰れと言ったからではないかと思いながらも、炎嘉は立ち上がった。

「我も帰る。軍神は8千残す。主、義心はどうするのだ。ここへ置いて帰るか?」

維心は、首を振った。

「あちらに上陸しようとしたら、あれが居らねば我とて戦いづらいもの。連れて帰る。だが、次席の帝羽と三位の新月は残す。新月は元よりこちらに住んでおったゆえ、地の利があるしの。あれらにこちらの五千を任せるわ。」

炎嘉は、息をついた。

「ならば我は嘉張を残そうぞ。何かあった時に迅速に動けるのはあれしか居らぬしな。宮には炎耀と炎月が居るし、我もあちらの守りは何とかするわ。とにかくは、帰ろうぞ。旭には、何か気取ったら出撃前にこちらに使者を送れと申しておこうぞ。」

維心は頷いて、もう歩き出しながら言った。

「行くぞ!指示を出して、我らは己の宮へ!」

そうして、維心と炎嘉は自分の軍神達が待つ外へと出て飛んだのだった。

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