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始まりは最悪の日②

二人はじっと見つめ合った、亮二は一度目の確かめるようなものではなく、再びキスした。架純のくちびるはとろけるように柔らかかった。


架純は熱の入ったキスに少し驚いたように目を開いた。しかし、キスのその間だけ亮二にされるがままになった。


キスをそっと終えると、二人はお互いに濡れた目で見つめ合った。静かに呼吸を整えている。



「あーあ、何でこんなことになっちゃったんだろうな」


亮二を見つめていた視線をすとんと落として架純はうつむき、自虐的にクスッと笑い、ボソッと呟いた。


架純は顔を少しうつむけたまま、亮二の顔をチラリと何度か上目遣いで意味ありげに見た。


「亮二君、ちょっとだけ手を出したかった? ちょっぴり私とこうしたかった?」


「そうじゃないよ」


「そうじゃないっていうのは? よく分からないな」


「ちょっぴりではない」


「はあ? 私、彼氏いるんだよ。亮二君は彼氏のいる弱っている女に手を出したよ」


亮二は何も言わずにじっと架純の話に耳を傾けている。


「私、こういうの好きじゃないの。こういうのっていうのは彼女のいる男の子が付き合っている間に他の女の子と仲良くやって、その子と付き合う準備ができるぎりぎりまで彼女と付き合い続けて、ぎりぎりまで彼女を利用して、別れて、すぐに次の子と付き合うような恋愛の仕方の事。分かる? 


その逆も嫌なの。女が彼氏がいる間に他の男と仲良くやって、関係ができたら彼氏を捨てて、すぐにその男と付き合い始めるとか」


「うん」


「うんじゃないよ。だって付き合ってきた人に失礼じゃない? 付き合っている期間に他に目星をつけて、暗黙の関係を作って、自分の都合だけで別れを切り出して、自分だけには他にいい人がもういるなんて。ずるくない? 


相手を傷つけるでしょ。今までは付き合ってきた大切な人だったはずなのに。自分にもっと良い人が出てきたらその人はどうでもよくなって傷つけていいの?」


架純は静かに怒りを抑えるように極力冷静にいようと努めていた。しかし、眼には次第に強い感情を、怒りと絶望的な悲しさをたたえながら話した。


「よくないと思う。理想的には」


「理想的には? じゃあ亮二君は仕方がないっていうの? そんな訳ないじゃん。もし誰かと付き合ってて、他にもっと良いと思える人ができてしまったと思ったら、その時点で、付き合ってる人と別れなきゃダメじゃないの? 


もしそうなっていても別れないでいるとしたら、もうそれは相手を自分のために利用しているだけだよ。ちゃんと別れて、それからもっと好きになってしまった人とうまくいくかは分からなくても、向き合わないとだめでしょ。


誰かと付き合いながら次の相手を探して、その人とうまくいきそうになったら乗り換えるなんてずるいよ。ぎりぎりまで引っ張っておいてさっと乗り換えるなんてずるいし、卑怯だよ。


別の相手にもうとっくに心が移ってるのに付き合ってる相手とキスしたり、残りの期間は良い思い出にしようとか、もう君とはあと少しだけの関係だけどそれまではとか本当に気持ち悪い。相手を利用して、自分の人間性を捨てるように恋愛に酔ってて嫌気がする。


そして他のいい人と付き合えそうになかったら、だめになったらそのまま何もなかったみたいに付き合い続けるとか汚らわしいよ。


その打算が上手くいったとして、後で自分と付き合っている時から他の人と関係を作り始めててすぐに付き合い始めたとか別れた相手が知ったらひどく傷つくよ。自分勝手すぎるよ。だからそういう恋愛は私は嫌なの」


「うん。分かる気がする」


「分かってないでしょ。亮二君、今私に何した? 彼氏のいる私にキスしたじゃん。こういうのは嫌なの。これで亮二君と私が何とかなるなんてことはもう嫌なの。そういう恋愛の仕方をする人とは私は無理なの」


架純は顔を手で覆い、うつむいてしまった。どこかにまき散らしてしまいたいような悲しみと、絶望を自分の中に何とか溜め込みこれ以上外には漏らさないように懸命に耐えてるように見えた。


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