今後の予定
マルクスさんから特訓を受けた私たちはギルドの食堂に来ていた。だけど明るい机ということもなく暗い面持ちで料理を待っていた。そこへ料理を持ってウェイトレスさんが料理を置いていった。
「ごゆっくり」
「あぁ!!負けた!!」
「しずく、気持ちはわかるけど公共の場だから静かに」
しずくが料理を運ばれてきたのを待っていたのかそう叫んだ。それに対し、私はしずくを叱りつつなだめてあげる、しずくの声が周りの人達にも聞こえたのか、周囲の人たちがこちらを向いていた。その中に何人か苦笑いしている人たちがいたので、さっきまでマルクスさんにしごかれていたのを見ていた人のようだ。
「こんばんは、みんな大分しごかれたみたいだね」
「メイルさん、今晩は」
「マルクスさんに手も足も出なかった。それでいてまだ余裕あるみたいだったし」
「それに無属性なんて初めて聞いた」
私がメイルさんに挨拶すると、しずくがメイルさんにマルクスさんについて聞いていた。その質問にかぶせるように、ミラも質問を投げてくる。それを聞いていたのか思いもよらないところから答えが帰ってきた。
「無属性は誰でも使えるようになりますよ」
「あぁ、マルクスさん。サボっていたあいだの仕事は終わりました?」
「メイル残りは明日やるから安心してくれ。それに急ぎのは全て終わらせてある」
「それなら構いません」
マルクスさんとメイルさんの様子を見ていると、どうもメイルさんの方が立場が上のような気がしてくる。実際メイルさんに仕事のことを言われると顔色を悪くして懸命に弁解していた。
そんなマルクスさんは、隣の机から椅子を持ってきて泡麦茶を頼んでいた。
「まぁ、この人のことは置いといて、強さの秘密は今まで経験の問題ですね。この人こう見えてSランクに片足突っ込んでたぐらいですから」
「そんなに強かったんだ」
「メイル、この人とはひどいですな。それとミラさん今は現役の時以上だと思いますよ。あれから鍛錬も怠ってないですしね」
「それじゃ、なんで引退したんですか?」
「それは単純に後輩達の育成に興味を持ったからです。自分だけ強くても街は守れませんから」
マルクスさんはそう答えてくれた。確かにマルクスさんの考えは間違っていない。一人だけ強くても守りきれるものなんてたかがしれている。それより街としての防衛力を向上させるほうが街や国の防衛という意味にでは重要になる。
「それに少し懸念点もありましてね」
「そう思うんでしたら大人しくしていてください。つい最近キャンサーがスタンピードで大打撃を受けたんですから」
「実はそれも不思議な点がいくつかあるんですよ」
「その不思議な点を聞かせてもらっても」
「えぇ、この情報は秘匿対象の情報でもないので構いません」
ミラがマルクスさんに詳しい情報を求めたところ、マルクスさんは快く快諾してくれた。
「実は、キャンサーでスタンピードが起きる数日前に、近海を荒らしていた海賊の討伐作戦があったようです。ですが、その洞窟はダンジョンになっていたそうなんです。そして数日後、再び海賊が活動を開始しました。その数日後に問題のスタンピードが発生。その際、攻めてきた魔物は逃げることをせず、死ぬまでめせてきたとのことです」
「それが魔族の仕業と考えているんですね」
「えぇ、くるみさんの言うとおりです」
私がマルクスさんの考えていることを言うと肯定してくれた。確かにステラシオンに来てから日が浅い私たちでもその考えに行き着くのに、ずっと生活していたマルクスさんたちがこの答えに行き着くのは難しくないことだろう。
「さっき会った人はわからないけど、前の女の子は確かに色々やってたみたいだよね」
「どこでどんなことをしてたかわかりますか?」
「場所はクルートの近くで見つけたゴブリンの巣の中だよ。目的は詳しくはわからないけど実験がどうこう言ってた気がする」
「そうですか。カストルに来る途中にあった少年はおそらくですが、女帝であるミュセルを探しに来たのでしょう。彼女はしばらく前から行方をくらましているそうです」
「「!?」」
「どうかしましたか?この話は結構有名なのでそう驚くことでもないと思いますが」
「いえ、なんでもありません」
私としずくは、勝手に女帝が指揮をとって世界征服に乗り出していると思っていた。だが、実際は行方不明と聴き驚いて顔を見合わせた。そんな私としずくを見たマルクスさんが怪訝そうに訪ねてきたので、適当にごまかしておく。しずくもこの話はこれ以上しているとぼろが出ると判断したのか、話を変えることにしたようだ。
「マルクスさんさっきの無属性魔法誰でも使えるって言ってたけど本当なの?」
「あぁ、その話ですか。本当ですよ。自分魔力をほかの属性に影響を与えずに放出しているだけですので誰でもできるはずですよ」
「くーねぇできる?」
しずくが私に聞いてくる。そこで私は、自身の魔力を純粋に外に出そうとした。魔力視で確認をしているがどうしても薄く色がついてしまっており、純粋な魔力での放出ができていない。それを確認していたのかマルクスさんがいたずらが成功した子供のような顔をしていた。
「マルクスさんまさか嘘言いました?」
「いやいや、嘘のことは言っていませんよ。私の場合適正属性がなく、それでもどうにかして魔法を使おうとした結果、編み出したのがこの無属性です。ですのでそう簡単に習得されては困るのですよ」
マルクスさんはそう説明してくれた。それを聞いていたメイルさんは、呆れたような顔して追加で説明してくれた。
「この人、自分がしごいた冒険者全員に同じこと言っているのよ。それで、習得した人はひとりもいないの。だからあんな顔してたのよ。いい性格してるよね」
私たちは、メイルさんに肯定しつつ最初の暗い雰囲気がなくなり楽しく夕飯をとることができた。どうもメイルさんやマルクスさんに心配をかけてみたようで、二人ともほっとした表情だったのが印象的だった。
「ところでみなさん明日からどうする予定ですか?」
「特に決めてませんけど、キャンサー共和国へは今いけないんですよね」
「なんだったら条件付きで行けるように用立ててもいいですよ」
「マルクスさんその話詳しく聞かせて」
マルクさんの提案に一番に食いついたのは意外にもミラだった。、そんなミラに私たちは驚きつつも私たちも同じ意見だったので詳しく聞くことにした。
「こちらも今の状況はあまりよくありません。それに海賊も放置はできないので、海賊の制圧を条件にキャンサー共和国へ入国できるよう取り計らいましょう」
その話を聞いた私たちは顔を見合わせ、全員で頷いてからマルクスさんへ了承の返事をした。ただし、私たちだけということではなく、ふたご島の港街であるワサトでCランク冒険者を募集するという条件で了承することにしたのだ。
今後の予定も一通り話し終わり、いざ宿屋に向かおうとすると以前に来た時に会った、アークさんをはじめとするガンテツさん等に捕まってしまい、夜遅くまで騒ぐことになってしまった。この日の宿はメイルさんの好意に甘え、ギルドの1室を無料(料金は現況のガンテツさん等の折半)で貸してもらい一晩休むことになった。
誤字報告ありがとうございます。
内容確認し適時修正していきます。
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