再戦
----------しずく視点-----------
ぼくは荒野で戦った時と同じように、ジャッカルリーダへかけていく。だけどあの時と違うのはぼくの実力と相手の使役している魔物の種類と数になる。マルクスさんは、くーねぇにお願いしてぼくはジャッカルリーダのところへ行こうとしたのがだが、予想以上にシャドーウルフが厄介だった。
「面倒だな」
ぼくの周囲にいるハウンド達は、襲いかかってきても冷静に対応すれば問題なく斬ることはできる。だけど一番の問題は奇襲気味に影から襲撃してくるシャドーウルフの存在だ。今はぼくの影に自身の魔力を通すことによって、出てくることはわかるんだけどこれがなかったら本当に奇襲だよ。
そう思いつつ、周りのハウンドは刀で首や足を切り、足元から来るシャドーウルフは軽く跳躍し刀を払う形で首や足を切り捨てていく。スムーズに無力化できているが、雑魚の数が多くどうしても時間をかかっている。そうしていると、ジャッカルリーダが風弾を打ち込んできた。
「使い慣れてないからしたくなかったんだけど【ダークブレード】」
「grrrr」
「やっぱり向こうも油断してなさそうだね。それにしても嫌なタイミングで使ってくるしっ」
ジャッカルリーダの撃ってきた風弾を、刀に使ったダークブレードを使い風弾を全て切り裂き、飛びかかろうとしていたハウンドたちもまとめて切り伏せた。そのまま手に持った闇刀を自身の影に突き刺しシャドーウルフを1匹仕留める。
「ふぅ、これで残りはあのデカ物かな。それはそうとくーねぇ大丈夫かな」
周囲にいたハウンドたちをあらかた片したあとにくーねぇの方に視線を向けると。足を抑えてうずくまっていた。それを見たら急激に頭が冷めていく気がした。
「ねぇ、君たちだよね。くーねぇに傷つけたのって。まぁこの場には君たちの他にはいないんだけど」
ぼくは使い馴らすまで使わないようにしようと思っていた、積水へのダークブレードを発動させた。大太刀ほどのサイズの刀と少し長めの刀の2本持ち、すたすたとジャッカルリーダへ正面から近づいていく。ジャッカルリーダはそんなぼくへ怯えたような表情をしながら爪を振り下ろしてくる。ぼくはその爪を積水で切り裂く。だが、切り裂いたのは爪だけではなくジャッカルリーダの前足の中ほどまで一息に切り裂いた。
「graaaaaa!!!」
「くーねぇに怪我させた以上、前みたいに逃がしはしないよ」
ぼくは足を切られた痛みに絶叫しているジャッカルリーダに無慈悲な一言を告げ、積水をベースに作り出した闇刀を跳躍しジャッカルリーダの首筋に当てる。そのまま刀の峯の部分に当てた腕にグッと力を入れジャッカルリーダの首を落とした。
「くーねぇ、大丈夫?」
「しずく、お疲れ。大丈夫だよラビィが直してくれたし」
「きゅきゅ~」
「ラビィありがとう」
ジャッカルリーダの首を落とし、周囲の確認をしたあとくーねぇのところに駆けていく。そのままくーねぇの足の様子を聞いてみるとラビィが直してくれたようだった。それを確認したぼくは歓喜のあまりラビィに抱きついて撫で繰り回した。
「きゅっ!きゅ~」
「あっ、ごめん」
ラビィが必死にぼくの腕から脱出しようとしていたのに気づいたぼくは、謝りつつ地面におろしてあげた。
「しずくさん。お疲れ様です」
「マルクスさん、大丈夫でしたか?」
「えぇ。おかげさまで」
マルクスさんも大丈夫だったようで何よりだ。ぼくはミラにシャドーウルフについて聞いてみることにした。
「ねぇ、ミラ」
「何?」
「シャドーウルフって普段どう対処してるの?」
「あぁ、そのこと。シャドーウルフは本来人は滅多に襲わない魔物だよ。ただ今回はジャッカルリーダの配下になってたみたいだから、トップの指示で襲ってきた感じ」
「ということは、普段はそこまで気にしなくていいんだね」
「うん、普段は影に隠れ、地面に降りてきた鳥とかを奇襲して食料を取ってる感じ。狩猟の時以外は日陰でゆっくりしてる魔物だよ」
ミラから普段は気にしなくていいと聞いたので、そこまで気にせずにいいようだった。その答え聞いたあとウルフたちを収納して回ることになった。
「くーねぇ、出発の準備できて・・・」
「しずく、どうかした?」
「ん、ちょっと誰かに見られてる気がしたから。今はそんな気配ないから気のせいだったのかな」
「そっか、でもちょっと警戒しておこうか」
さっき感じた謎の視線をくーねぇ伝えたあとカストルへの道中を再開するのだった。
----------くるみ視点-----------
しずくから気になる報告を受けたけど、現状監視している人がいたとしてもどうすることもできないのでとりあえず放置することにした。用事があるなら、そのうち接触してくるでしょうという考えだ。
それにしてもカールとミールには感謝しかない。以前戦ったときは苦戦したのに、今回はしずくがすんなり首を落としていた。
それにしても、あの切り方は鮮やかだった。ギロチンの如く上段から刀を振り下ろし首を切り落としていた。
「マルクスさん。すみません私たちの不手際のせいで巻き込んでしまって」
「いえいえ、構いませんよ。こんな経験そうできるものではありませんので」
「そう言ってくれると助かります」
私がマルクスさんに謝ると気にしないと言ってくれたので、素直に受け取ることにした。ここでこれ以上話し合っても仕方ないので、しずくがウルフたちの死体を格納したのを確認してからこの場を移動を提案した。
みんなで話し合った結果、移動することにした。移動中は今までの陣形と同じように、御者台に私、右側にミラ、左側にしずくで移動することになった。
さっきの襲撃以降は、襲撃を受けることなく、日が暮れてくる。このまま野宿かと思ったが、少し言った先に、小さい村が見えてきたので今日はその村にお邪魔することにした。
「マルクスさんいらっしゃい」
「一晩おじゃましますね」
村の守兵さんとマルクスさんが挨拶し、私たちも頭を下げながら村にはいった。村に入った後は、翌日の待ち合わせの時間を決めてからその日は分かれることにした。私たちは守兵さんに宿屋を取るために聞いてみることにした。
「すみません、宿ってどこにありますか?」
「う~ん、ここに宿屋はひとつしかないんだけど、女の子にはちょっと設備不足かもしれないかな」
「構いませんよ。私たちは冒険者なので」
「そうかい、そこの街の中央の右側の家が宿屋を兼ねているよ」
守兵さんが教えてくれた家を訪ねてみるとそこには、恰幅の良いおばちゃんがいた。
「こんばんは。ここは宿屋って聞いたんですけど」
「こんばんは、間違ってないよ。お客は珍しいけどね」
おばさんが愛想の笑顔で答えてくれた。なので、私たちは言葉に甘えここに一晩お邪魔することにした。この時、マルクスさんがどこに泊まるかということを確認しておくべきだったと後悔することになるのだった。




