海賊_3
時としてはくるみ達が特訓を始めた頃、パイモンも海賊たちへ魔法を教え始めていた。まず最初に海賊たちには島に生えている木から枝を持ってこさせた。
「お嬢、これで大丈夫でしょうか」
「問題ない【フレイム】よし、これからお前たちには魔法の練習をして貰う」
海賊たちが、持ってきた枝にフレイムをで火を灯す。それによって準備は整った。これから順次魔法を使えるようにしていく。そのためにまず魔力の放出から進めていく。
「お前たち、適当に辺りに魔力を放出していろ」
『へい』
海賊たちが返事をしたのを見てから、昨日飛ばしておいた使い魔からの情報の整理を始める。その結果、海賊を討伐しようとした討伐隊はダンジョン攻略を行わず撤退を選択したようで、入口付近から奥へ進まなかったようだ。一方、キャンサー共和国の方は戻ってきた討伐隊を送り出したあとは特に動きはなかった。
「それじゃ、引き続きお願いね」
そう言って使い魔のコウモリを見送った。その間にも少しづつだが魔力の放出ができる人が出てきているのだが欲しい属性の持ち主は出て来ていなかった。
そのあとも少し魔力を放出できる海賊が増えるも10人に満たなかった。
(まぁ、初日としては上々かな)
そう思っていると周辺を巡回させていた使い魔が1匹撃ち落とされるのを確認できた。それを知覚した私は現場に急行する。撃ち落とされたところにはコウモリが1羽とそのコウモリを持っているモノクルを付けた青年が立っていた。
「ちょっとバラム、私の使い魔倒すなんてどういう了見?」
「ちょっと近くまできたからね。それに中に人もいるからバレたら面倒だなと思ってこういった手を取らせてもらった」
「はぁ、仕方ないか。それでここら辺にきたのってガープの指図?」
「そんなに落ち込まないでよ。それとここに来たのは、ミュセル様を探しながら来たんだけど隠れるのがうまいのか、ふたご島の方にいるかはわからないけど見つからないんだ」
「多分ふたご島にはいないわよ。少し前までいたけど姿見なかったし。それに落ち込んでない」
私の反論は聞こえていないのか無視された。バラムと話ていると明日以降の予定を考え一つ妙案が浮かんだのでバラムに少し滞在してくれないかと尋ねる。
「バラム、明日お願いしたいことがあるから少し滞在してくれない?」
「いつも一人で何でもやるパイモンが珍しいね」
「まぁ、今は他人に邪魔されたくないんでね。それにここにいる海賊どもの教育したいし」
「また、面白いことやってるね。まぁわかったよ。詳しくは明日教えてちょうだい」
バラムと会話を終えたあと、現在のアジトに案内し海賊のみんなに紹介した。海賊たちは顔を青くさせさせてから私の部屋の隣に個室を要してくれた。海賊たちからしたら魔族が2人とかたまったものではなかったようで翌日は寝不足になっているものが数名存在した。
さて2日目に入り海賊たちは、昨日と同じく魔力放出をさせている。
(昨日と同じように後数名の達成が見られたら海賊家業の再開でいいかな)
「それで、俺に頼みたいことというのは?」
「ちょっと待って、うん、予定通り洞窟の調査は後回しになったか。それと私たちの追手もいないみたい。バラムお願いしたいことっていうのはキャンサー帝国へ向けてスタンピード起こしてくれる?」
「できなくはないが、また面倒なことを」
「できないの?」
「できなくはないが、さすがに今日中は無理だぞ」
「何日必要?」
「2、3日はくれ。さすがにそれより短時間では無理だ」
「構わない。多分こちらの状況的にもそれぐらいの時期が嬉しい」
そう簡単にできないのはわかっていたから問題ない。それに私の方も明日から海賊再開だからちょうどいい感じになるかもしれない。
私からの依頼を聞いたバラムはキャンサー共和国へと去っていった。バラムを見送ったあと、海賊たちが訓練を行っている場所へと移動する。そこではまだ魔力放出のできていない者たちが変なポーズをとったりしながら魔力放出を試みていた。
(なにこの阿鼻叫喚な状況)
そんなことを考えながら、奥の様子を確認してみる。奥では、既に魔力放出ができるようになった面子がそれぞれの属性に対し干渉をしているのが見えた。そんな中待っていた属性を利用できる奴が現れたようだった。私は海へ干渉をおこなっている海賊のところへ歩みをすすめる。
「おい、そこのお前」
「はい、なんでしょうか。パイモン様」
「えぇ、まず水属性の獲得ご苦労さま」
「ありがとうございます。こんな俺が魔法を使えるようになったのは全てパイモン様のおかげです」
海賊がお礼を行ってきたので、私は簡単に返事してから今後の予定を詰め、明日からの予定を話し始めることにした。予定を話す相手は私に一番最初に話しかけてきた海賊とさっき水魔法をつ使えるようになった海賊の2人になる。
「まず最初にこの海賊団のトップをはお前にやってもらう・・・え~っと」
「ヘリーです」
「ヘリー頼んだぞ」
私が名前を覚えていないのに気づいたのか、呆れた顔で名前を答えてくれた。もうひとり呼んだ水魔法を使えるようになった、男、コレラを幹部に添えた。
現状やることが決まったので、明日以降の予定を話すことにした。
「ヘリー明日から再び船を襲うことにする」
「へい、それで戦利品はどうしやしょう」
「戦利品は売らずに私たちがしばらく使うことにする。ここに移動したはいいが食料も多くないしな」
「確かにそうですね。一応しばらく持ちますが、1週間は持たないかと」
「私はどうすれば、水魔法を何かに使いたいんですよね?」
「そのとおりだ。コレラには最終的に水流を操作しこの島の近くに船を誘導できるようになってもらいたい」
「そんなこと可能なんですか?」
「理屈としては可能だ。だが、複数人必要だと思ってくれていい。今日明日ではそこまで上達しないだろうから練習するといい」
「そうさせていただきます」
「それと前提条件として、明日の襲撃は人には手を出すな。荷物を回収したら大人しく撤退する」
「どうしてですか?今までは人は生かしておかなかったはずですが」
「そんなの簡単だ。キャンサー共和国に私たちがまだ生きているということを知らしめるためだ」
「そんなことしたらまた討伐隊を組まれるんじゃ・・・」
「その心配はいらん、しばらくの間、手は出してこないだろう。それに我々にはクラーケンがいるからそうそう攻め込まれることはない」
「そこまで言うなら信じます」
「あぁ、ちゃんとそこらへんの根回しはしている。これで明日からの予定の話し合いは終了だ」
「わかりやした。ほかの面子にも伝え準備を始めておきやす」
ヘリーがそう言ったあと、一礼して外に出ていった。そのあと使い魔のコウモリが戻ってくる。私はコウモリの記憶と共有を図る。その結果ギルドとしては、洞窟の探索をメインに行うことに決めたそうだ。国としてはダンジョンは放置し、自治に取り組むことになったようだ。その結果に満足し、明日以降の準備に取り掛かる。
明日私のやることは船の中から様子を見つつ、危険になるまではおとなしくしているつもりだ。実験の最中だから危険になると手はかすがあくまでその程度となる。それに移動中にコレラの魔法の練習をさせたいので、簡単に土性の桶を作り上げることにした。他にも魔術練習用の小道具を作成していく。そうしていると思ったより時間が経過し、夜となっていた。




