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双子姉妹の異世界旅行  作者: ライ
幕間 魔族暗躍
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海賊_2

 なるほど、団長は思っていた以上に色々と考えて行動していたみたいだ。その証拠に今私は幹部3人に取り囲まれている。

(あの野郎、最後の最後に予定狂わせやがって)


「再度聞くぞコプタ。お前は何者だ」

「仕方ないな、できれば恐怖支配はしたくなかったんだが」


 そうぼやきながら私はシャドウモンタージュを解除した。しばらくの間変装していたのでいたるところがこってしまって仕方がなかい。


「なるほどそういうことか。この魔族めが」

「その魔族に全滅させらるんだ。さぁ、私に従えない奴は全員まとめてかかってこい。全員まとめて殺してやるよ」

「単なる魔族風情がこの量の人数に勝てると思っているのか」


 魔銃を構えた幹部(名前は覚える気もない)が周囲にいる海賊たちに指示を出し、私にサーベルを向けてきた。それを見た私は心底がっかりしている。高々人間ごときにミュセル様直属の4人の内のひとりである私が負けるはずもない。さぁ、ここからは殺戮の時間だ。


「私に従うやつは外に出ていろ。そいつだけは部下として助けてやる」


 そう言うと幹部3人を残し、下っ端どもは我さきにと外に逃げ出していった。それを見た幹部たちは苦虫を噛み潰したような顔をしていたが、気を引き締めて私を挟むように移動した。私の正面には魔銃を持った幹部とサーベルを構えた二人、私の後ろには木製の杖の先端に槍をつけたような独特なフォルムの槍をもっている。


「さぁ仲間に裏切られた君たちには退場してもらう」

「な・・・なに・・を・・・」


 魔銃を構えた幹部がその一言だけ残し、私の周囲にいた3人の幹部は身体の一部を切り飛ばされていた。


「最近雑魚ばっかで感覚にぶったかな」


 私は、既に死んだ3人の死体を見ながら独り言をつぶやいた。魔族の少女は3人とも即死させるつもりだった。だが現実として後ろの幹部は首が飛び、正面にいたひとりは胸元を切り裂かれていた。ここまではよかったが、魔銃を持った幹部だけは腹を裂かれたことによって、即死をまぬがれていた。だが程なくして息絶えていた。


 そのあとは、扉を開け外に出た下っ端たちの下へ行くことにした。だが、扉を開けても誰もいなかったので、いつも食事をとっていた広間へと移動してみた。するとそこには部屋から出て行った数の3割程度の人数しか残っていなかった。なので私は近場にいた人に聞いてみた。


「ねぇ、ほかの人たちは?」

「へい、お嬢の力を見て逃げてい行きやした」

「そうなんだ、それと君は死んでいいよ」

「へっ?」


 一番後ろにいて、なにか通信系の魔道具を使おうとしていた下っ端を魔弾で撃ち殺した。相手を見ていたほかの下っ端たちは、言葉を失い素直に私の言うことを従ってくれるようになった。


「お嬢何故彼を」

「国からのスパイは邪魔になるだけだからね。それとお嬢ってなに?」

「いえ、お名前もわかりませんし、団長というのにも違和感がありましたので」

「そういうこと、私はパイモン。まぁ好きに読んでくれていい」

「わかりやした。それで俺たちはこのあとどうするのでしょう」

「やることは基本変わらないよ。ただ今度からは手当たり次第狙っていく。もちろん君たちにも強くなってもらう」

「それは構いませんが俺たちはどうやって強くするんです?」

「まぁてっとりばやく魔法を使えるようになってもらうよ。それと引越しだ。ここは数日もしたら国から討伐隊がくる。それまでに島へ移動する」


 そう告げると残った下っ端たちは出航の準備をするため、急いで準備をはじめるのだった。そんな中私は再び使い魔をキャンサー共和国へと飛ばし討伐隊の出動日を探ることにした。


「へぇ、ここに襲撃かけるのは明後日か思ったより襲撃日が近いみたいだなそれならこっちも歓迎の準備を進めておくか」


 歓迎の準備と言っても、特別に料理を作るといった微笑ましいものではない、魔族の少女パイモンの魔力をこの洞窟全体へ行き届かせ、この洞窟自体を一種のダンジョンとする。そしてダンジョン完成のスイッチになるのが船の出航とした。


 翌日、私と残った者たちは船に乗り込み新たなアジトにするための島を目指しけ出航する


「お前ら出航するぞ」

『おぉぉぉ~』


 下っ端どもの野太い声が洞窟に木霊する。反響する声を聞きながら、船が洞窟から海へと出た。それと同時に船が出た洞窟はモヤに包まれ穴が閉じた。それを見ていた海賊の一人が私に聞いてきた。


「お嬢あれは一体」

「あぁ、明日くる予定の国からの討伐隊に対するちょっとしたサプライズ」


 このサプライズによりキャンサー共和国の浜辺の隅に、後に海賊の眠る洞窟と名付けられるダンジョンが出来上がった。

ダンジョンは置いといて実際船に乗り込んだ私たちは以前見つけた離島へ移動を開始した。


「お嬢、ところで俺たちはどこに向かっているのですか?」

「言ってなかったか、場所としてはふたご島とキャンサー共和国の大体中央にある離島よ。そこまではこいつが案内する」


 そう伝えた私は、判別がつきやすいようにコウモリの使い魔を案内役におき、船の奥へと戻ることにした。

 自分の部屋に入り、自身の右手を握っては開いてを繰り返してみる。その段階では既に痛みを感じることはなくなっていた。そのまま軽く前へ拳を突き出す。その際に、ジクジクと痛みが伝わってくる。それを確認し、顔をしかめた。その後は、自室でゆっくりと過ごした。


 そんな時間も半日が過ぎ、部屋にひとりの海賊が近づいてきているのに気づき目を覚ました。


「お嬢、島が見えてきました」

「わかった、すぐ行く」


 そう告げてから、甲板に向かう前に身体の凝りをほぐしてから移動を開始することにした。


「お嬢、お待ちしておりやした」

「船が止まっているがどうかしたか?」

「へい、実はあの島の近海に大型の魔物が住んでいるようでして迂闊に近づくことができないのです」

「そうか、なら寝起きの軽い運動だ。私に任せてくれ」

「へい、わかりやした。身体の一部が見えただけでもかなりの大きさですのでお気を付けください」

「私を誰だと思っている。たかが大きいだけの魔物に遅れは取らん」


 それだけ告げてから、自前の翼で空へ飛び上がり島の近くへ近づいていく。船と島の中腹あたりまで差し掛かったところで、海面から巨大な触腕が私の足目掛け伸びてきた。


「ふん、くだらん。彼我の差も分からぬ雑魚か」


 私は海面から伸びてきた触腕を掴み、そのまま島の方へ投げ飛ばした。投げ飛ばしたことにより相手の全貌を掴むことができた。私の足をつかもうとしていたのは触腕含め50m程ある大きさのクラーケンだった。


「なるほど、若いクラーケンだったのか。今後のために少し協力を取り付けようか」


 そう考え気絶して海面にぷか~と浮かんでいるクラーケンの頭を手加減しながら叩き気絶から起こしてあげる。そのあとは、特に戦闘なども起きることもなくいうことを聞いてくれるようになったので、島の周辺の守りを任せ船と一緒に島へ入る事ができた。


「さっすがお嬢」

「お疲れ様です」


 島へ入ると、緊張が抜けたのか海賊たちが思い思いに労いの言葉をかけてくれた。だが、ここからは私以上にこいつらが地獄を見ることになるんだがな。と考えつつその言葉に答えることにした。


 その夜、私は今まで根城としていた洞窟とキャンサー共和国の双方に使い魔を飛ばし状況の確認を行っていく。討伐隊の遠征結果は明日以降にならないと分からないので、キャンサー共和国の方はついで程度ではあるが。

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