試練
30体近いリザードマンの雄叫びを聞いた私は、うるさすぎて正直耳が痛い。そんな中、ラビィに指示を出すのに苦戦しつつ、何とかミラに手を貸すように伝えることができた。私の方はソーラーウィップを使い、半数の15体のリザードマンを相手する。
「【ライトショットガン】」
私は初手で多数に攻撃するために、ライトショットガンを使う。今回は、模擬戦のときと違い、刃を撒き散らす仕様だ。だけどこの魔法の欠点として、狙いをつけることができない。その結果、切り傷をつけれたリザードマンがパッと見7体程。お腹等の柔らかいところに当たったのが3体程だった。その結果に、満足しつつ残りのリザードマンの相手をする。
「魔法がイメージ次第っていうのはやっぱり便利だな」
そう呟きながら、ピシィと地面に光のムチを打ち付けた。打ち付けた場所と私の間にいたリザードマンの腕を焼き切る。そうやって敵を倒していくと、赤いウロコを持った特殊な個体が前に出て来た。私は、警戒しながらもムチを振るう。すると、リザードマンは持っていた盾を構えソーラーウィップを打ち消した。
「確かミラちゃんが言うには魔法を使える個体がいないとのことだったけど【セイントシールド】」
特殊個体のリザードマンから放ってきた、水の礫をセイントシールドで防ぐ。少しの余裕のうちに、ミラたちの方を見てみると、矢による牽制とラビィのサポートでうまく立ち回っているようだ。それをみて安心して特殊個体の相手をする。
「まずはまた出さないと【ソーラーウィップ】」
私は再度ソーラーウィップを発動して、その場にとどまり雑魚を優先的に倒していく。完全に固定砲台とかしている状況だ。残り特殊個体含め残り3体となったところで、特殊個体が接近してきた。特殊個体は手に持った槍で、私につき出してくる。私は槍を横に飛ぶことで躱した。
(やばい、近づかれたら攻撃手段ない)
そう思いつつ、後ろに飛びずさることで、特殊個体との距離が空いた。そのタイミングで残りの通常のリザードマンを倒した。だが、このままでは有効打を作ることができなず、回避に専念するしかない。隙を見つつミラの方を確認すると、もうまもなく終わりそうだった。
(ミラちゃんたちの方がもう割りそうだから来るのを待とうかな)
そう思っていると特殊個体は槍を躱した私に手から魔法を打ち込んでくる。
「【ライトシールド】」
私は、ライトシールドを発動させるとパリンと音がしてすぐに相殺となった。特殊個体の魔法に対抗するように接近して、手からライトショットガンを放つ。すると近すぎたこともあり炸裂することなく特殊個体にあたってしまった。
「くっ」
だが近づいたことによって、特殊個体の持つ槍の石突で殴られ後ろに後退してしまう。それによって特殊個体との距離が空く。特殊個体と距離が空いたことにより相手の横から飛んでくる矢に気づくことができた。特殊個体は飛んできた矢に気づいたのか、手に持った槍を振り叩き落とす。それを確認したあとは前衛をミラに任せた。
「【セイントシールド】」
私は後ろに下がったあとすぐに、セイントシールドでミラに盾を張る。そのあとは後ろからラビィと一緒にミラの手助けをする。ミラは短剣を利用し、使っている槍の銅金の間を切った。それによって、特殊個体は武器を失った。武器がなくなったあとは爪や魔法で攻撃するも私の張ったセイントシールドを破壊することができず、お腹を切り裂かれて特殊個体は動かなくなった。
----------しずく視点-----------
普通のリザードマンよりふたまわり程大きいキングリザードマンに接近したぼくは、右手に持つダークブレードを振るった。それを片手に持った剣で防いでくる。防ぐのに使った剣をそのまま振り抜かれた。キングリザードマンに飛ばされたぼくは、短刀で作ったダークブレードを地面に突き刺しスピードを緩める。体制を立て直したぼくは、再び正面から短刀から作ったダークブレードを振り抜く。それを今度は、もう片方に持った斧で防ごうとしたが、当たる直前でダークブレードを解除し斧を抜けたところで再度発動させる。
「ゲギャ?!」
「あれを躱せるんだ。でも完全には躱しきれてなさそうだけど」
ぼくの言ったとおり、キングリザードマンのお腹からツーっと血がにじみ出ている。それを確認したぼくは、メイさんたちの実力の高さを改めて理解した。
(この切り方を所見で防いだノワールさん本当にスゴイだな)
ノワールさんの実力を理解した後、この戦いを終わらすために動き出すことにした。相手の実力もわかっているのは簡単で、正面からキングリザードのお腹をきりさいた。
「う~ん、やっぱりあの時のドラゴンの方が強かったな」
そんなことを思っているとどこからか当たり前だという声が聞こえてきたがしたが、気にせずにくーねぇの方を見てみるとくーねぇの方も問題もなく終わりそうだった。
----------くるみ視点-----------
リザードマンを掃討し洞窟の外に出ると、時間が昼前だった。私たちは野宿した場所へ戻って来て昼食を食べることにした。今回の反省会も程々に昼食を食べ終わると、周囲が白い空間に移動している。
「予想以上に楽勝だったね」
「あれぐらいなんともないと言いたいんだけど」
「ん?なにかあった?」
「実は・・・」
私は戦ったリザードマンの中に特殊個体がいたことを伝えた。伝えたところカールはそこまで気にした様子もなく話を進めていく。
「特殊個体に対して反応薄くないですか?」
「そんなこと言っても、ラビィも特殊個体だと思うよ。まぁここら辺だとというのはつくけど」
「ということは、場所しだいで特殊個体っていうだけ?」
「まぁ、そうだね。特殊個体には2種類あって地域的な特殊個体と本当の意味での特殊個体がいる」
「地域的なものはその名の通りで、魔物自体はステラシオンにいるけど、本来はいない地域にいる魔物だよ」
「本当の意味での特殊個体っていうのが一番厄介でほぼ前情報なしで戦う必要がある」
そうカールとミールが説明してくれた。そう考えると今回のリザードマンの特殊個体はそこまで気にする必要がなかったようだ。
「そうそう、ミールはなんで模擬戦見に来てたの?」
「しずくたちがどれだけ強くなったかなって思って」
「ミールは仕事放り出して君たちの方にいったんだよね」
「それっていいの?」
「いいのいいの、基本的な仕事は全部カールがやってくれてるから」
「まぁ、ミールの説教はあとにするとして、ほかに聞いておきたいことってあるかい?」
カールにそう言われたので気になっていたことを聞いてみることにした。
「ミール最初の確認の依頼の経緯ってどうだったの?」
「あぁ、あのクエスト?あれはなんでも行商隊とその護衛していた冒険者が巣を見つけて報告してくれたっていう内容だったかな」
「そっか、それだとやっぱりおかしいかな」
「そうだね、予想以上に奥地だね」
「??」
私とカールが訝しんでいるけど、依頼を受けた当のミールは首をかしげている。なのでカールと私で説明をしてあげる。
「まず、こんなところにある巣をどうやって行商隊が見つけたんだい?」
「それは行商隊の人がここら辺に来たからじゃない?」
「街道がない場所に商人が来ることがほぼない。来ようとしても護衛の冒険者が必ず止めに入るはずだ」
「ということは、この依頼って仕組まれてたってこと?」
「予想以上に物分りがいいね」
「へへ~んそうでしょ」
「褒めてないからね。ありがとう、くるみ少し気をつけてみるよ。この前の魔族の件もあるしね」
「お願いね」
気になっていることを一通り伝えたあと、カールたちと別れ、橋にある町へと移動した。町へついた私たちは、昨日と同じ宿屋で部屋を取ったあと、事の顛末を衛兵さんに報告をした。報告したあとは一泊し、ギルドへの報告はここにギルドがないためほかの街に行くことになる。私たちは、次の目的地、キャンサー共和国へ行くために橋をわたり港街へ向けて移動を開始した。
予想以上にさっくりと終わってしまった。
これで第3章終了です。
第4章は1ヶ月程明けてから投稿します。
ストックがないんじゃ。




