個別特訓_しずく編 後編2
前話更新時に誤って完結としてしまいました。
話はまだまだ続きますのでお付き合いお願いします。
集中しつつ切る相手を選択しながら切っていく。だが、出てくる人数がどんどん多くなってくることによって対処が少しづつ、大変になってくる。だけど今まで以上に集中しているおかげで判別の時間が短くなってくる。そのおかげで、いまのところ腕輪からブ~という音は聞こえてこない。
少しづつ正確に対応ができるようになってきている。そのおかげで6日目の午前中は、ブ~の回数は3回程度で終わった。
「しずく、今日は順調だね」
「カール、順調だけどどうもうまくいかないんだよ」
「そうは言ってもくるみの影は一切切らないのはある意味凄いと思うけどね」
「そこは愛だね」
そう話していると、ミールがこちらにやってきた。それを見たカールが驚いた顔をして問いただしている。
「ミール、君はミラの方を優先的に見ているんじゃないのかい?」
「あぁ、ミラは大丈夫だよ。今は最後の射的だから正直暇なんだよね」
「その様子だと、ミラは順調なんだ」
「そうだよ、そういうしずくはどうなの?」
「ぼくは微妙な感じ」
「とは言いつつくるみの影には一切攻撃してないけどね」
「「えっ!それって普通じゃん」」
「君らふたりは、まぁ僕はミラの様子を見るついでにご飯届けてくるよ」
そうカールが呆れつつ伝えたあと去っていった。なのでここに残ったのはぼくとミールの二人だけとなる。
「そうだ、しずく午後からどうする?」
「どうするって?」
「え~っとね~、私と模擬戦するのが一つ。その変わりにノルマの達成には繋がらないけどね。もう一つは引き続き特訓することかな」
「どうしようかな、どうせ今日はもうノルマ達成できないしな。でも模擬戦ってミールにそこまで時間の余裕あるの?」
「あぁ、それはないな。よしカールにお願いしてみよう」
「全然関係ないけど、ミールってご飯出せないの?」
「あぁ~」
そう言ってミールは目を逸した。ミールに聞いてみるとこの食事を出すのも結局は魔法のようで、想像力がないと見た目や味がひどくなるようだ。しかも、美味しいとかいう曖昧ものじゃダメで、詳しい味を想像する必要があるという。なので、料理が苦手な人は美味しいのが作れないどころか見た目も酷くなるということだった。
「ということはミールは料理できない?」
「別にいいでしょ、そういうのはお兄ちゃんのお願いしてるんだし。そのほうが美味しいんだし」
「お兄ちゃん?」
「いや、ちが」
「いいよいいよ、ここにはぼくたちしかいないんだし」
「そうだとしても他人に聞かれるのは嫌なものは嫌」
「まぁ気持ちは分かるな。普段と違う言い方すると恥ずかしいよね」
「そうそう、そうなんだよ」
そんなふうに二人で話していると聞いていたのかカールから言葉が返ってきた。
「それで、模擬戦にするのかい?」
「カール、もしかして聞いてたの?」
「重要なところだけね」
そうカールが頬を掻きながら答えた。横目でミールを見てみるとホッとしていたが、ぼくは直感で聞いてたなと思った。
「ミールそろそろ戻っておきな聞いてみたらあと10ポイントでクリアって話だから」
「うそっ!もう。さすがに早すぎだよ」
「頑張ってね」
ミールを見送ったあとぼくはカールにお願いしてみることにした。
「カール、模擬戦の相手になってくれるの?」
「あぁその話、しずくがよければ相手してもいいよ」
「なんなら明日も強い相手用意くらいしようか?」
「いいの?」
「その代わり、味方の選別は失敗となるけどね」
「どうしよう、今日はもう何回か切っちゃってるから仕方ないとして明日か」
「なんか今日も諦めてるようだけど、明日のために練習とかは考えないんだね」
「それもいいけど、いまのままだと足りない気がするんだよ」
そうカールに相談する。相談の結果、今日と明日は実力向上に当てることになった。その結果追加特訓である相手の識別は失敗となったけど。
「そうだね。僕もしくは明日の相手に一太刀でも当てることができればこの短刀上げるよ」
そう言ってカールは持っている漆黒の短刀を見せてきてくれる。なんでもこの短刀は神器のようで魔力のとおりや切れ味などが他と比べ物にならないらしい。
そんな聞いた限り簡単な条件にこの報酬をつけてくるということはとっても難しいことになりそうだ。
「さぁ、早速始めようか。好きなところからかかってくるといい」
「それじゃぁ遠慮なく行かせてもらうよ」
そう声を掛けてからぼくは駆け出した。最初は何合か正面から打ち合ったがカールが手加減しているのがありありとわかる。何度か打ち合ったあと、色々な魔法を使い奇襲をかけていくのだがカールもいくつかの魔法を使いすべてを防がれてしまった。そのまま、時間が経過して夕方となった。夕方になる少し前にカールはくるみの元に行くと言って去っていった。
くーねぇに食事を渡してきたのかカールが戻ってくる。翌日のことをカールに話を聞くと相手はブラックドラゴンのようだ。
(一太刀?できる気がしない)
そんな思いでいると翌日になってしまった。
翌日になり、朝食を食べると戻ってきたカールに連れられ山の麓に到着した。山の麓には黒い龍が待っていた。黒い竜は僕たちに気づくとむくりと体を起こした。
「GYAAAAAAA」
ドラゴンが鳴き声をあげると、ぼくに向けて腕を振り下ろしてきた。それを横に走って躱した。その腕が地面に着くと小石があたりに飛び散った。カールがいた方を見てみると、既にカールはいなくなっていた。
「こいつ相手に午前中で一太刀か」
ぼくは、最初何度か相手の攻撃を確認する。一番躱しやすいのは噛み付きと踏みつけ。一番躱しにくいのはブレスだった。それを確認したぼくは、カウンターでドラゴンに攻撃できないかということを試みることにした。ぼくは、正面から向かってくる顔に向けダークブレードを振るう。正直このサイズだとバインドは聞かないと思うから。
ダークブレードの長さを調整し口の中を切りつけれるように、ダークブレードを突き入れる。だが、ブラックドラゴンもそれに気づいたのか、口を閉じ顎の力だけでダークブレードの片方がおられてしまった。
「うそ、力押しで折られた」
「GURRRRRRR」
「絶対切ってやる」
そう自分の活を入れ、ドラゴンの足に向けダークブレードを振り下ろした。だが予想通り、ウロコにはじかれ刃が通ることはなかった。
(やっぱり無理か。まぁこれは予想通りかな。多分しっぽも同じだろうな)
「さて、どこが柔らかいかな」
そう独り言を言うと、不意にブラックドラゴンが瞬きしているのが見えた。ちらっと空を見てみるとお昼も近づいてきている。ぼくは最後の攻撃を仕掛けるため、シャドウウォークを使いブラックドラゴンの背後へ周り、しっぽの付け根に飛び乗り背中を駆け上がっていく。首のあたりまでいったところで、腕がぼくのところに伸びてきた。ぼくはその腕を跳んで躱しなんとか頭に生える角に捕まることができた。そのまま、顔の前まで降りていき短刀から作ったダークブレードを目に突き刺した。
片手で突き刺したが、力が足りず刺さることがなかった。なので、角に足を巻いて背筋で反動を付け、両手でブラックドラゴンの目に突き刺した。
「GYAAAAA!!!」
あまりの痛みに、ブラックドラゴンは顔を振り回した。その動きに耐え切れず、飛ばされてしまう。このまま、地面に叩きつけられるわけにはいかないので空中で体制を立て直し、短刀を無理やり地面にぶつけ勢いを殺した。「バキッ!!」だが、無理に地面にさしたこともあり、買ったばかりの短刀が折れてしまった。
その後は刀を利用し応戦していく。隻眼になったことによって死角はできるようになったが、ブラックドラゴンにも手加減というものがなくなった。そのあとは、午後まで防戦一方で飛ばされながらお昼まで耐えることしかできなかった。
「しずくお疲れ。後おめでとう」
その一言を聞いたぼくは、転移の光に包まれステラシオンに戻ることになった。
次回少し遅れるかもしれません。




