個別特訓_しずく編 前編1
----------しずく視点-----------
カールにくーねぇのことを頼んだあとぼくに向け、魔族の少女もどきが駆けてくる。それに合わせ、刀と短刀を両手に持ちダークブレードを発動させた。
「【イービルランス】」
準備万端に整ったぼくに、魔族の少女もどきはイービルランスを放ってきた。ぼくは、イービルランスを躱すのではなく、左手に持ったダークブレードで斜め下へと弾く。イービルランスの機動が変わったことにより一度球体となり再度、穂先ぼくに合わせ飛んでくる。それを確認し、魔族の少女もどきの場所も確認すると、ぼくとの距離が最初の半分ほどまで縮まっている。
(ここから気を付けないといけないな)
現在ぼくと魔族の少女もどきとの距離は5mあるかないか。この距離だと既にぼくと魔族の少女もどき両方の射程距離に入ることになる。そんな時、奴の姿が消えた。それに対し、ぼくは直感を頼りに、イービルランスを躱したあと、イービルランスのけつを押すように剣を振るう。すると、後ろにいた魔族の少女もどきが驚愕の表情を見せたあと、イービルランスを手で受け、そのままダークブレードの刃を手で止めた。
「今回は攻撃していいんだから、この前みたいにはいかないよ」
相手に伝わっているかは分からないが、魔族の少女もどきの口元が笑ったような気がした。そのあとは、周囲の魔物もぼくに対し攻撃を仕掛けてくるようになり、完全に乱戦の状況となってしまう。そんな中、近づいてきた魔物から片っ端に倒していく。
周囲の魔物を倒していくと、次第に辺りの状況がぼやけていく。そんな中、刀の届く位置にいる物体を続けざまに切っていく。そうして、周囲のものを切っていると不意に指で木を叩くコンコンという音が耳に聞こえてきた。
その音を聞くとぼやけていた視界が次第に戻ってきた。そして、周囲を見てみるとゴブリンはもちろん、ブラッドボアやウルフといった魔物の死体があたりに散乱していた。だけど、その死体の山の中にも魔族の少女もどきのものがなかった。周囲を観察いると、カールが来ていることに気づいた。
「お疲れ、随分派手にやってるね。・・・・ってどうかした?」
ぼくが周囲をきょろきょろみていたので、カールがどうかしたのかと訪ねてきたので、素直に答えることにした。
「カール、ミールはいないの?」
「あぁ、ミールを探してたんだ。ごめんね、ミールはミラのことを優先的に見てもらってるよ。寂しいと思うけど僕で我慢してね」
「べ、別に寂しくないし。ブラコンミールがカールと一緒にいないが不思議なだけだし」
「うんうん、そうだね」
カールはぼくの言葉に対し微笑みながら返答してくれる。
(これ絶対勘違いしてる奴だ)
そう思いはしたけど、反論しても言い訳にしか聞こえなくなりそうだったから反論を諦め、なんできたのかを聞いてみることにした。
「それで、なんできたの?」
「あぁ、忘れるところだった。昼食の時間だからご飯をだそうと思ってね」
昼食と聴いて思い出したかのようにお腹が「くぅ~」と鳴る。それを聞いたカールは、数度頷いたあと机と椅子、昼食を出してくれた。お腹が減っていたこともあり、お礼をいったあとすぐにお昼を食べ始める。そんなぼくを見たカールは、ミラのところに行ってくるといって去っていった。
カールが去ったあとに、一人で食べるお昼は味気ないものだった。
お昼も終わり午後、相手はまた魔物かなと思いきや違った。午後の相手は鎧を纏った兵士が相手となった。兵士たちは隊列を組み徐々にぼくとの距離を詰めてくる。そして、15m程離れたところで動きを止めた。動きを止めた隊列から大声がなりひびく。
「前衛は相手を通すな。魔法隊、弓隊は斉射準備に入れ」
(指示が聞こえるのはありがたい)
そう思い隊列の中へ掛けよろうとしたところで、私の足元に1本の矢が突き刺さった。その一瞬によって10m圏内に兵士の前衛を捉えることができず、非常にも斉射開始の支持が出された。そのあとも断続的に隊長からの指示が飛ぶ。
「魔法隊、弓隊第1班斉射開始、第2班は斉射準備に入れ。第3班も第2班終了後に斉射開始だ。準備を怠るな。第4班大型魔法準備」
「大型魔法ってやばい気しかしない」
そんなことを考えている間も、ぼく目掛け数多の矢や火球、風の刃といったものが無数に飛んでくる。僕は仕方なくシャドウウォークを使い隊列の前衛との距離を詰めることにした。
「相手は闇属性使いだ。聖騎士隊前へでろ。第2班やつが出てきたと同時に矢を主体に攻撃」
その支持を耳にしつつダークブレードを展開し前衛に斬りかかる。
「!?」
だが、そんな考えも見通されていたかのように、ぼくが出てきたタイミングで空から矢の雨が降り注ぐ。ぼくは咄嗟に前へと飛び込み乱戦へと持ち込もうとした。腕や足に切り傷を作るも世界のルールによって直るから大きな問題はない。そういうこともあり前へ飛び込んだのだが、矢の雨に驚き確認を疎かにしてしまった。
隊列の前衛が、影に潜る前の装備と変わっていることに気づくのが遅れてしまった。
「あれが、聞こえてた聖騎士隊って連中かな」
ぼくは、ダークブレードを振りぬこうとしたが聖騎士隊の持つ騎士盾で受け止められてしまう。その後少しするとダークブレードは、壊れた。
「第3班、俺の前方3m位置に斉射開始」
「がっ!」
どうやらぼくの剣を受け止めたのは、この部隊の隊長だったようだ。隊長さんが第3班と言われる人たちに支持を出したあと、ぼくのお腹を思いっきり蹴飛ばした。
「普通、女の子のお腹蹴っ飛ばす?」
「戦場に経てば女子供も関係ない。第4班10秒後に攻撃、近接舞台は下がれ」
隊長の言葉に共感を持ちつつ、上空から降り注ぐ攻撃を捌いていく。そんな時、一瞬周囲の空気が変わった気がした。ぼくはその感覚に従いシャドウウォークで隊列から距離をとる。だが、距離をとったのが悪手だった。悪手だったといえど、今までにいたところに雷が落ちていたので躱すしかなかったのだが。
距離をとったところで再度隊長の声が響き渡る。
「充分に距離をとれた。複合魔法放つ準備」
隊長のその一言とともに、上空に巨大な岩が作られる。その巨岩に周囲から炎の魔法で火を纏った。岩の大きさの問題なのか、炎の熱量の問題なのかまではわからないが、以前ミールに見せてもらったように溶岩になることはなかったのは救いかもしれない。とはいえ、このままだと危ないことには変わりはなかった。
「仕方ない、練習もなしに使いたくなかったけど、あれは打たせたらまずいやつだ」
ぼくはそう呟くと意識を集中させる。幸いにも今、前方にいる兵士たちは全員敵だ。集中力を高め、イメージを固めていく。そうしているうちに向こう側の魔法の準備が整った。
「10秒後奴にめがけて落とせ」
その言葉を聞き時間が残っていないことを悟る。だけどここで焦ることもできない。
「5・・・・4・・・・・3・・・・2」
隊長の数える数字がどんどん少なくなっていく。この時にぼくの中でのイメージもかたまり、魔力面での準備も整った。
「1・・・・・撃t」
「【シャドウソーン】」
『うわぁぁぁ』
ぼくはイメージが固まったので魔法を行使する。すると、隊列ひとりひとりの足元の影から無数の刺が精製され軽装の兵士を串刺しにしていく。それにより複合魔法のコントロールが乱れ、そのまま自由落下で地面に落ち爆発した。ぼくは、爆風に飛ばされないように、ダークバインドで足元を固定しなんとか耐える。爆風が収まると部隊のいたところに小さなクレータができており舞台は全滅していた。
しずくちゃんの特訓が2話で終わりそうにない




