防御特訓_1
私の弱気が流されたところで、始まった防御特訓最初の相手はいつものように、ゴブリンが相手だった。ゴブリンぐらいなら、なんとかなるかと思っていたがそれは大きな誤算だった。
「ちょっ、うわぁ、まっ」
しゃがんだり後ろに下がったりで、ギリギリの回避をしている。まぁいい意味でのギリギリの回避じゃないんだけど。そうしていると、ゴブリンの後ろに漆黒の短刀をを持ったカールが現れて、ゴブリンの首を落とした。
カールたちが出てくるところ初めて見た。とどうでもいいことを考えていると、カールがこちらに話しかけてくる。
「思ったよりくるみの運動音痴はひどいね」
「面目ない」
「少し面倒だけど個別設定するしかないか」
「個別設定?」
「うん、基本は全員まとめてやっちゃうんだけど個別でもできなくはないからね」
意味がわからず首をかしげていると、カールが端的に説明してくれた。説明しながらでもてきぱきとコンソールのようなものを操作していく。
「よし、これでいいかな」
「何変えたんですか?」
「しずくたちは封じている魔力を使えるようにしたんだよ。それでつかえる?」
「ちょっと待ってください」
私は、いつも試しに使っているフラッシュが普通に使えることを確認した。カールもそれを見てひとつ頷いてそのまま帰っていった。
それと同時に、またゴブリンが目の前に現れて私に襲いかかってくる。今回はさっきとは違い、ライトーシールドを使い攻撃を防ぎ切ることができている。
(ゴブリンの速度が半分ぐらいなら魔法使わなくてもなんとかなるんだけどな)
そう考えていると、顔の横をゴブリンの剣が通り過ぎた。それに冷や汗を掻きながら回避に集中して回避を続ける。ミラとしずくは短剣と刀をうまく使うことで、スタート位置から動くことなく攻撃を捌いているのが見て取れた。そうしていると、ゴブリンが3匹とも雷に打たれて黒焦げとなった。
「ふぅ、なんとかなった~」
「くーねぇこういうの苦手だもんね」
「ミントさんがなげだしたから相当なもの」
「あはは」
乾いた笑いで、返答としていると今度はブラッドボアが1頭出てきた。今度は、ブラッドボアが相手のようだ。ブラッドボアは、突進の素振りを見せることなく、こちらに突撃してくる。
それを私たちはそれぞれ横に移動することで回避をしていた。そのあとも何度か一直線に突進してきたが最初と同じように躱しきることができている。
「これは簡単かも」
「そうだね基本1直線だからね」
わたしとしずくで話していると、ブラッドボアはさっきより遅い速度で突撃してきた。
(スタミナ尽きたのかな)
と思いさっきまでと同じように、しずくとは別方向に躱すと私の方に曲がってきた。それを見た私は少し焦ってしまい横に飛び込む形で回避してしまった。それを見たブラッドボアは、大きく回り頭をさらに低くし私の方に近づいてくる。
「【ライトシールド】」
私は、正面に張ったライトシールドを利用し、少し時間を稼ぎ何とか横に転がることで、突進を躱すことができた。それによってなんとか起き上がる。
その後、夕方までブラッドボアの攻撃を避け続けた。夕方になると同時にブラッドボアに雷が落ち今日の特訓が終了となった。
防御特訓がはじまり2日目。この日の最初の相手は木の魔物、4体のトレントが相手となった。
「くるみ、下」
「ちょ、ちょっと」
ミラが忠告をしてくれたにもかかわらず、私は躱すことができず片足にトレントの根が巻き付き宙吊りにされる。そんな私に、トレントは自身の葉っぱを飛ばしてくる。トレントの飛ばしてきた葉っぱに対し、セイントシールドで防ごうとした。だが、上下が反転していることによって光の盾を展開する場所を間違ってしまった。
「痛ッ!」
「くーねぇをはなせ!!」
頬や腕を少し切られてしまったが、すぐにリカバリーにより傷が癒えていく。しずくとミラもそれぞれの獲物で、葉っぱを全て叩き落としてから私の足を縛っていた根っこを切った。切られたことによって根っこは引っ込んでいった。
「ねぇ、これっていつまで続くの?」
「そんなものみんながある程度躱せるようになるまでだよ」
「あっ、カール、ちょっ、まっ」
しずくがつぶやいたところにカールが返答した。それに対し、しずくは、一瞬カールの方に目を向けたが、足元から出てきた根を躱し横に飛び回避している。一方私はトレントの根っこや蔦を交わすので精一杯だ。
「しずくはもう音を上げたの?」
「ミール。まだ、大丈夫だよ」
「まぁ、時間がかかっている原因はくるみが躱したりするのが苦手って言うのもあるかな」
「ご・・・ごめん・・・ね。わぁ・・・」
「大丈夫だから、くーねぇは自分のことに集中して」
久しぶりに、しずくに怒られてしまったので、カールたちの相手をしずくに任せて回避に専念することにした。
「多分そろそろ終わるよ」
そうカールが言うと同時に、敵が切り替わる度に落ちている雷がトレントの上に降ってきた。
「終わったみたいだね。って大丈夫?」
「はぁ・・・はぁ・・・。大・・・丈夫」
「まぁ、その感じだと次は危ないから少し休憩にするね」
「は~い」
休憩中に、カールへ聞いてみると、どうやら今回は出現のタイミングや魔物はカール達で、ある程度調整できるようだ。そのため今回ある程度余裕を作ってくれている。
「カール次の魔物も決めれるって言ってたけど次の魔物って?」
「そうだね、比較敵簡単なストーンゴーレムってところでどうだろう」
「あの石の塊のやつか」
「鈍重だから簡単でしょ」
「実際に攻撃訓練の時も躱せてたし」
「あれって攻撃っていう認識でいいの?」
「実際には違うけど似たようなもんだよ」
「それじゃぁ、そろそろ再開しようか」
カールがそう伝えると私たちの前にストーンゴーレムが降ってきた。
「ズシン」
ストーンゴーレムが着地するとともに地面が揺れた。さらにゴーレムの足元は小さいがクレーターできていたので、どのぐらいの高さから降ってきたのだろう。
「ねぇ、カール、なんで空から」
「いやぁ、なんとなくノリで」
「ノリは大事」
そんな話をしていると、ストーンゴーレムが腕を振り上げ下ろしてきた。その速さは依然より速度があるように見えた。その腕を私たちは散会し躱したが、地面は抉れ小石が散らばった。
「ちょっと、この前より早くない?」
「しずく、そんなのもちろんだよ。普段は、魔力による身体強化で、動体視力とかも上がってるんだから」
「ここからが本当の特訓だよ。少しづつ魔力強化なしの動体視力を鍛えてもらう」
「もちろん、このパンチに潰されたら命の保証はしないから気を付けてね」
ミールは、口元を笑みを浮かべながらカールと一緒に帰って行った。そんな二人に気を配る余裕もなく、私たちは必死にストーンゴーレムの攻撃をかわし続ける。嫌なことに拳をたたきつけるたびに飛び散る礫も、ものによっては切り傷となるため完全に回避しきるのは厳しい。だから、そこはライトシールドをうまく利用し攻撃ダメージを最小限に抑える。
何度か、拳骨を躱しているとゴーレムも拳骨パンチだと意味がないと判断したのか、前にまっすぐに突き出すようなパンチや横に振りぬくように腕を動かし始めた。そんな攻撃を、しずくとミラはゴーレムとの距離を調整することで、私はゴーレムから距離をとることでかわしていく。
そんな状況に、ゴーレムもしびれを切らしたのか、右腕を前にだし、左手を二の腕のところに置き私に向けてきたのだった。




