防御特訓開始
翌日目が覚めるとまだ誰も起きていなかった。
「ん~、今日は久しぶりに朝ごはん作ろうかな」
「く~ねぇ?」
「ごめんお越しちゃった?まだ早いから寝てていいよ」
「ん、わかっt・・・ムニャムニャ」
一度伸びをしてから独り言をつぶやくとしずくを起こしてしまったので、まだ寝てていいと伝えるとしずくは、すぐに寝息を立て始めてしまった。そんなしずくの頭をポンポンと2回なでてから、食堂へと向かっていった。そこで、ふとここの調理場どこだろうと思い、少し教会内を探索することにした。
勝手に部屋に入るのもまずいと思いまず、教会の聖堂に足を踏み入れた。聖堂では、既にアルヘナが仕事を始めていたようで、聖堂内の掃除をしている。
「アルヘナちゃん、おはよう」
「これは、くるみ様おはようございます」
「こんなに朝早くから掃除?」
「はい、人が来ることは多くありませんが一応日が昇っているあいだは利用可能なので」
「それは、精が出ますね」
「この教会を預かるものとして当然です。それでこんなお時間に何か御用でしょうか?」
「あぁ、早く起きたので朝ごはん作ろうかなって」
「そ・・・そんな、くるみ様の手を煩わせるなんて」
「気にしないで、普段から作ってるからもういつものことだし」
「そうですか・・・。それでしたら今日の朝はお願いいたします」
アルヘナが、思ったよりすんない折れてくれた。そのまま、調理場へと案内してくれたので、今残っている食料を確認し、朝食の献立を考えることにした。
「今あるのはなんでも使ってくれていいので」
「くるみ、僕たちの分もよろしく」
「期待してるよ」
「なんでいるんですか」
「昨日の夜言ったとおり、ここら辺はいつでも出れるからね」
「それにくるみとアルヘナの料理美味しいし」
「カール様、ミール様、おはようございます」
「すっかり順応しているね」
「いえ、一昨日のお昼を除き毎回来ているのでもう慣れました」
アルヘナは少し遠い目をしながらそう言った。まぁ、唯一来なかった一昨日のお昼は、私たちのところで食べてたしね。
「一昨日の朝も?一緒に食べてなかったきがするけど」
「一昨日は色々と準備があったからね。くるみたちを送ったあとに頂いたよ」
「今日もこのあとカールと一緒にヤることあるからそろそろ席外すね。またあとで」
「ヤるって、今日の特訓の為の準備だよね。ちょっとミール」
そう言い残し、カールとミールは去っていった。まぁ、そんな二人はほっておいて、朝食の準備を始めようかな。材料は色々とあるな。あんまり重くなくて力になるものか。
そう考え行き着いた先は無難に和食だった。アルヘナに食材について聞いたところ、アイジという鯵に似た魚があったので、これの塩焼きと頻度は多くなかったけど、1回だけアルヘナが料理に使っていたお米を使って作っていこう。どうも、ここら辺でお米は炊くというより炒めて使うことのほうが多いみたい。
「じゃぁ作っていこうかな」
私は、てきぱきと準備を進めていく。まず、野菜を一口大に切ってから浅漬けにするため、冷蔵庫に入れる。お米は炊いてご飯にしてアイジは人数分塩焼きにするのとお味噌汁の具材にするために小さく切って湯掻いたあと、アラで出汁を取ってっと。味噌はないからそこはなんちゃってで味付けしちゃおう。
そうしていると日が昇ってきた。
「そろそろこっちも出来上がるし、ちょうどいい時間かな」
そう思っているとアルヘナが調理場にやってきたので、他の人たちの状況を聞いてみることにした。
「みなさん起きてきてますよ。そろそろ朝食にしましょう」
「ちょうど良かったみたいだね。こっちも出来上がったよ」
「おぉ、これは美味しそう」
「アルヘナちゃん、そう言ってくれるのは嬉しいけど食べるのは食堂でね」
「わ・・・わかって・・・・います」
そう言いつつも絶妙におこげを作った炊きたてごはんに目が釘付けだ。このままだとつまみ食いしそうなので、アルヘナと協力して食堂へ朝食を持っていった。と言ってもとなりの部屋だからそこまで苦じゃないけど。
テーブルの上に朝食をそれぞれの前においていくと一番最初に反応したのやっぱりしずくだ。
「うわぁ、和食だ~。これくーねぇが作ったの?」
「そうだよ、美味しく出来てるといいけど」
そう伝えながら、テーブルの真ん中に即興でつくった浅漬けをおいて食卓の準備も完成となった。
「ん~、美味しい」
「初めて食べたけど確かに美味しい」
しずくは感想を一言言ってくれたあとは黙々と食べていく。ミラは初めてのようで少し驚いていた。
「カールたちは口に合うかな?」
「うん、美味しいよ。この調理法は故郷の調理法なのかな?」
「はい、故郷では朝食は基本こういった食事でした」
「変に脂っこくないし美味しいしで、いいね」
どうも、カールとミールのお口にもあったみたいだ。アルヘナは、しずくと同じように白米を黙々と食べ続けているため、聞くまでもなさそうだ。
そんなこんなで言葉数も少なく(みんな黙々と食べていたこともあり)朝食が終わった。
「ふ~、ごちそうさま」
「お粗末さまでした。それにしても全て食べきるとは」
私の唖然も当然で、いつもアルヘナが作ってるより多めにご飯を作っていたので、残ったらおにぎりにして昼食にでもしようかなと思ってたんだけど、見事に全部食べきってくれた。嬉しいけど全部なくなるとは思ってなかったから驚きだった。
特にしずくとアルヘナ、ミールの3人がすごく食べた。
「さて、もう特訓の為の世界は作ってるから行こうか、準備はいい?」
『大丈夫です』
「じゃぁ行くよ、【転移】」
ミールの一言を最後に、私たちは光に包まれ一昨日板世界と同じような世界に飛ばされた。
「よしみんな無事に来てるね」
「今回はラビィちゃんはお休みだよ」
「きゅきゅっ!!」
「今回はちょっと危ないからね」
「ラビィちゃんこっちで私たちと遊んでようね」
そう言ってラビィの入った籠を持ち上げて、しきりになでていた。
(うん、ラビィは可愛いから仕方ない)
そんな様子を眺めていると、ついつい口元が緩んじゃうけどいまは気を引き締めて今日の特訓について聞いてみるとしよう。
「ラビィのことはお願いします。そレで今日の訓練ってどうなってるんですか?」
「そうだね、世界の基本的なところは一緒。安全重視のためリカバーの魔法はかけてあるよ」
「それでね、今回のノルマはこいつからがんばって逃げ切ってね」
そう言って、ミールは辺りの影から人型を作り出した。人型はどこかでっ見たことあるような形をしていた。そのまま色がついていくと特徴的な羽と尻尾が出来上がって気づいた。あの時私たちが完敗した魔族の少女がそこにいた。
「いやいや、無理。あの時数分しかもたなかったんだし」
「でも、今度襲ってきたときのことを考えたら対抗できるようにならないと」
「そうだよね」
私は仕方なく、しずくは後ろ向きに、ミラは前向きにそれぞれ異なった返答をした。だけど、ノルマはわかったけどルールはいまいち分からないため、後続の説明を待った。
「さすがにこれはすぐにはしないよ。まぁ終了二日前ぐらいから相手しもらうけど」
「それまでは、魔力を封じた上で一定時間ごと相手を変えて魔物の相手をして貰うよ」
「それと今回は攻撃禁止、あと夜の敵襲はないから安心して休むといいよ」
「「はい」」
「・・・・できる気がしない」
しずくとミラは元気よい返事に、私の諦めの言葉はかき消された。




