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双子姉妹の異世界旅行  作者: ライ
3章「特訓」
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攻撃特訓_4

 トレントを倒した日の夜は、昨晩以上に凄惨な状況となっていた。私たちの周囲にゾンビやスケルトン、虫といった魔物が近づいてくるのは、昨晩と同じだが今回はそれ以外に、トレントの炭からカーボムという黒い球体に火が付いた魔物が飛び跳ねているのが見受けられる。何故、新しく見る魔物の名前がわかるかというと、見かけた時にミラに確認したからだ。


「ミラちゃん、あの黒い球体って何?」

「あれはカーボム。倒し方は火を消せばそのまま倒せる」

「それならぼくの仕事だね」

「大丈夫だと思うけど、一定以上の衝撃を与えると爆発するから気をつけてね」

「はーい」


こういう会話が繰り広げられていた。

 私たちの周囲にいる魔物を倒していると、時たまボンという音が聞こえてきた。私はソーラーウィップを横に薙ぐことによって、近くにいたゾンビたちと巻き込まれたカーボムたちがボンボンと音を建てて倒していく。

近くに危険がないことを確認し、音のした方に顔を向けると顔を煤で真っ黒にしたしずくがいた。


「しずく、大丈夫?」

「うん、痛くはないけど毎回顔が」

「ぷっ」

「もう、くーねぇ笑わないでよ」


 そう言って、ポカポカと痛くない程度に殴ってくる。そうしていても、周囲に警戒を怠らずに近づいてくる魔物を順次魔法で倒していく。

 その関係でミラも文句を言ってこない。一方、ミラは淡々と矢と魔法、ラビィの協力を得て安定して対処している。そのまま、時間が経過し月が頂辺になったところでラビィが力尽きて寝床に帰って寝てしまったので、私たちだけで対応していく。ラビィが脱落して以降は、ソーラーウィップを使って空中にいる魔物をまとめて倒すようにしている。

そのまま、今晩も眠ることができずに夜が明けてしまった。


 日が登ると、ゾンビたちは太陽光にやられて死に、虫たちは近づいてこなくなるので、ここでひと段落となる。なので眠い目をこすりながら朝食の準備を始めた。


「これはちょっと優先的に対応しなくちゃいけない」

「そうだね。このままだと寝不足で大きな問題が起きるよ」

「でも現状だと、どうしようもないよね」

「今日一日は昼に寝ちゃってもいいなじゃない?」

「その手があったか」


 そうして、3日目は特に行動を起こすでもなくそれぞれ5時間程交代で眠った。夜は今まで同様モンスターラッシュに悩まされたけど。


 4日目になり眠気も多少マシになった私たちは、再度森に入るため行動を開始する。森の中は2日目に入った時より明るくなっている。トレントを片っ端に倒したことにより、木の密集率が下がったのが原因だ。そのまま森の中で、ゴブリンたちと数戦を交わした進んでいくと、正面の木がこちらに倒れてきた。それを察したラビィは、土壁を展開したことで押しつぶされることは防ぐことができた。だがまもなく土壁も崩されてしまう。

 土煙を上げ崩れた土壁の向こうには以前戦った時より一回り大きいブラッドボアがいた。


「ミラちゃん、あれって」

「うん、多分大人のブラッドボア」

「ブモォォォォォォ

「【きゅきゅっ】」


 そう話していると、ブラッドボアがこちらに向け突進をしてきたので、ラビィが再度土壁を展開し多少の時間を稼いだ。その僅かに稼がれた時間によって、私たちはブラッドボアの突進を回避することができた。


「ちょっと、私たち襲ってこないじゃなかったの?」

「ブラッドボアからしたら襲っているわけじゃないのかも」


 そう思っていたら、数本の木をなぎ倒したあとブラッドボアは止まり、こちらに振り返って私たちを見ていた。それは明らかに私たちのことを敵と認識しているようで、私たちも臨戦態勢にへと移行する。


「この前のようには行かないんだから【ダークブレード】」


 しずくは刀を闇の剣にしブラッドボアへ突きつけた。

 対するブラッドボアは、前足で地面を何度か蹴った私たちの方に突進してくる。それを確認したしずく以外の2人と1匹は、横に飛びブラッドボアの突進を躱したがしずくは真っ向から闇の剣を振り抜く。

 闇の剣がブラッドボアに当たる直前、ブラッドボアは自身の牙で闇の剣を下からすくい上げた。それによりブラッドボアは一時的に止まりはしたが、しずくは腕を上に上げられてしまい、胴ががら空きになる。そこへブラッドボアが再度突進を仕掛けてくる。


「やばっ」

「しずく【セイントシールド】」

「ブモォォォ」


 私は、しずくへセイントシールドを使いなんとか止めようとしたが、ブラッドボアの突進力の方が上回り止めることができなかった。そのままブラッドボアは、しずくのお腹へ向けブラッドボアは頭をかち上げた。

「かはっ!!!」


ブラッドボアの牙がしずくのお腹に刺さったあと、上に飛ばされてしまった。そのままここに来てからよく目にする回復の光を発しながら枝に雑巾のようにかかってしまった。


「しずく!!」

「大丈夫、回復の光出てたから死んでないから」


そう言って、しずくの下へ走り出そうとしている私をミラが抑えてくれている。でも戦闘中にそんな隙を見せれば、相手は攻撃してくるのは当たり前のことで、ブラッドボアは私たち二人に向かって突進をしてきた。


「ブモ!?」


だが、ブラッドボアが私たちのところに到着する前に横から何かが当たったようで、遠くに飛ばされていた。今までブラッドボアがいたところを見てみるとそこには、胴体の大半が土色で背中が緑色の大きなトカゲがいた。トカゲは自分が突き飛ばしたブラッドボアを咥えたあと私たちを一瞥する。

 ブラッドボアが突き飛ばされた音に気づき、突き飛ばしたトカゲを警戒していたミラの頬を汗が伝うとトカゲは森の中に消えていってしまった。


 トカゲが去った後、私は木にぶら下がったしずくをラビィの土壁を利用し、なんとか救出し息があることを確認すると、へなへなと地面に座り込んでしまった。しずくは、気を失っているだけのようでそのまま膝枕してあげながらさっきのトカゲについてミラに聞いてみることにした。


「ミラちゃんさっきのトカゲって」

「うん、くるみの想像通りドラゴンの1体だよ」

「なんていうドラゴン?」

「アースドラゴン、地中に潜って不意打ちを最初に仕掛けることで有名」

「でも私たちに攻撃してこなかったということはルールとしては大丈夫っていうことなんだよね?」

「その考えでいいと思うけど念のためカール様とミール様に聞いたほうがいいかも」

「う・・・う~ん」


そう話しているとしずくが目を覚ました。それに気づいた私は、即座にしずくに大丈夫か確認してみると特に異常はないようだったので正面から抱きついて涙を流した。


 私が落ち着くの待ってからしずくが飛ばされたあとのことをしずくに話した。対するしずくも調子に乗っていたと反省し、再び森の中を移動する。そのあとは、特に問題が起きることはなかったが、森の中ということもあり植物型の魔物や芋虫のような魔物に多く遭遇した。 

 巨大なイモムシに嫌悪感を抱きつつも、森の中を進んでいくと森を抜け山の麓に到着する。そこで今、日は休もうということになり、一足早く数時間だけ仮眠を取り夕飯の準備を開始した。


「う~ん、いい匂い」

「ちょうど、お昼だしお昼食べに来たよ」

「あぁ、カールとミールいらっしゃい」


 夕飯の準備が終わると、カールとミールがやってきたのでさっきのブラッドボアの件について、聞いてみることにした。


「あぁ、そんなことがあったんだ・・」

「ちょっとミール何か隠してるんじゃないの?」

「いや、そ・・・そんなことないよ」


 ミールが、あからさまに目をそらしながら答えているので、一切ごまかしきれていない。そんなミールを見かねてカールが説明をしてくれる。


「いやぁ、実は根幹部分が以前作った設定をそのまま流用しちゃってね」

「その設定ていうのは?」

「時間経過とともに魔物の凶暴化」

「?」


 一瞬私たちは、二人の言っていることが理解できなかった。だけど、さっきのブラッドボアのことを考えるとなんとなく察することができた。


「それって大問題なんじゃ?」

「そうなんだけど、直す場合作り直しになるから別にいいかなって」

「そんな理由で僕殺されかけたの?」

「大丈夫、ドラゴンとかの凶暴化は10日以上あとだからこの訓練には支障ないはず」

「信用ならないな」

「まぁ、そういうわけだから僕たちは帰るよ。ごちそうさま」

「あっ、ちょっと」


 それだけ言い残し、カールとミールは去っていった。というか逃げていった。

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