ポルックス到着と加護について
3章開始です。この章は少しゲームチックな感じになります。
各章数人新キャラ出る予定です。基本その章限りのキャラですが。
ゴブリン掃討作戦が完了した翌日、挨拶もそこそこに適当な依頼を受けクルートを出ることにした。受付に聞いてみると、ここからポルックスへは徒歩で10日間程歩けば着くらしい。ただそこまで何もないわけでなく、途中に村などもあるらしい。他にも、乗合馬車があるようだけど、私たちは使わないことにした。
クルートを出た後は、旅程はそこまで大きく崩れることなく、10日目の夕方にはポルックスに到着した。道中に受注したクエストのおかげもあり手持ちは小金貨1枚分まで溜まっている。さすがに使い勝手もの問題もあり小銀貨10枚の大銀貨9枚で持ち歩いているけど。
「よし、今日はこのまま宿を取って休もうか」
「そうだね、カールから早く来るように言われているけど、遅いと迷惑だろうし」
「じゃあ、今までどおりギルドに報告してからいいお店聞こう」
『さんせ~』
私たちは、今日の宿を求め街の中央に向けて歩き出した。
ポルックスの街の中央には大きな噴水があり、近くに冒険者ギルドを見つけることができた。
「おぉ、ここの冒険者ギルドは大きいね」
「当たり前、ここは首都カストルに並ぶジェミニ王国の2大都市なんだから」
「あぁ、確かにカストルも大きかったね」
大きさに、感心しながらギルドに近づいていくと「ダンッ!」と、大きな音がして修道服を来た11歳ぐらいの少女が、ギルドから出てきて私たちの方に走って来た。それを見た私たちは横にどけて少女を見送る。
不思議そうに見送った私たちは、気にせずにギルドに入っていく。そのままギルドの受付へ行き、依頼の報告を済ませた。その時だ、ギルド員さんからさっきの少女の話ができたのは。
「あなたたちがくるみさんとしずくさんでしたか」
「はい、そうですけど」
「よかった。さっきの走り去っていく女の子見てない?」
「修道服の子だよね?その子ならみたよ。すぐに走って行っちゃったけど」
「そうです。そうです。その子です」
「彼女一体何者なんですか?」
「彼女はふたごの祠の管理人さんよ。なんでも、そろそろ君たちがくるってお告げがあったみたいで一昨日から通っているのよ」
「それじゃぁ、なんで走り去って行ったんですか?」
「さぁ? なんかぼんやりしたあとに慌てて出て行っちゃったから」
そう話していると、再びギルドの扉が開いた音がしたので、邪魔にならないよう受付の前を開けて脇によることにした。入口を確認してみると、他の冒険者が帰ってきたというわけではなく、件の少女が落ち込んだ様子で、トボトボと歩いて帰ってきていた。
「アルヘナちゃん待ち人来てるよ」
「うそ~!?」
アルヘナと言われた少女が、落ち込んでいたのが嘘のように顔を輝かせて、ぴょこぴょこと受付へ走り寄ってきた。受付に到着した少女にギルド員さんが私たちの方を指差した。その指の先を追って私たちと目があう。
少女は、私たちの前に来てペコリとお辞儀をしてから自己紹介を始めた。
「こほん、お見苦しいところをお見せしました。くるみ様としずく様でしょうか?私はふたごの祠の管理をしているアルヘナです」
「アルヘナちゃん、ちょっと様付けは辞めて~。私たちそんなに大層な存在じゃないから」
「ですが、お二人はカール様、ミール様のご、ん~・・・ん~・・・」
「それ以降の話は別な場所で、落ち着いて話せる場所ある?」
ミラは、このままだとまずいという空気を感じたのか、重要な言葉を発する前に口を抑え、落ち着かせている。ミラの質問にアルヘナはこくこくと頷き、場所を移動することにした。
アルヘナに連れられて、ポルックスの城壁の近くまで歩いてきた。城壁の近くと言っても、あたり一面寂れているという訳でもないが、少しづつ建物の数も少なくなってきている。
「ここら辺ってなんにもないね。なんで?」
「それはここら辺一体は既にふたごの祠の土地になっています」
「そうなんだ」
「他の神様の祠もこんなにはじっこにあるの?」
「いいえ、他の御柱の方々はそれぞれの街の中央付近にあると伺っています」
「じゃあ、なんでここだけこんなはずれなの?」
「実あまり公になっていないのですが、カール様、ミール様、特にミール様の方が短気のようで中央外れた、ここら辺に祠が建てられたと聞いていますね」
話しながら歩いていると、正面に二つの塔が見えてきた。塔の下には普通の教会がありその中に4人で入っていく。
中は、普通の教会と同じように長椅子が設置され正面に男神と女神の立像が置いてあった。
「ようこそ、ここはふたごの祠を管理する教会になります。ここなら落ち着いて話すことができます」
「わかったよ。それじゃ話は戻すけどなんで私たちに様付けなの?」
「それは、お二人がカール様とミール様のご加護を受けているからになります」
「えっ!? 加護ってそんなに珍しいの?結構すんなりもらえたけど」
「本来、加護はそれぞれの神に認められて与えられるものです。なので、それぞれの祠の管理人は奉る神の加護を持ったお方に、敬意を払うのはあたり前のことです」
アルヘナはそう説明してくれた。これで様付けで呼ばれたことに納得がいく。すると私たちが話しているところに少年と少女が近づいてくる。
「やぁ、こんばんは。そっちの子は久しぶりかな」
「やぁやぁ遠いところお疲れ」
そこに、カールとミールが現れたので、私としずくはいつもどおり対応することにした。だがミラとアルヘナの二人は頭を下げていた。
それを見てカールは苦笑しミールは満足そうな顔をしている。
「いやぁ、最近警戒されたり、しずくたちみたいな娘達としか話していなかったから新鮮だね」
とはミールの言である。
「さて、本題に入っていいかな」
「その前に、質問いい?」
「なんだい、しずく?」
「なんで、加護持ちって少ないの?」
「しずくって本当に馬鹿ね。加護持ちなんてそんなに大量に作れるわけ無いでしょ。そもそも加護は無条件に渡せるようなものじゃないんだし」
「うっそだ~。ぼくたちの時、ついでとばかりにくれたじゃん」
「二人に任せるとまた喧嘩になるからここからは、僕が引き継ぐね。君たちの場合こちらの都合に巻き込んだことにたいするお詫びと加護を受け取る資格があったからあの場で与えたに過ぎないよ。それに僕たちの加護を持っていると制限されるものもあるからいいことばかりじゃないし」
「えっ、それ初耳なんですけど」
「あぁ、また彼女は説明忘れてたのか」
「違うと思うよ。多分知らなかったんじゃないかな」
ミールとカールは私たちに、説明をしてくれた。なんでも神の加護にはいくつか段階があり、一番持っている人が多いのから加護、寵愛、後継者となっているらしい。後継者まで行くと両者の合意の元で、神の座にもつくことができるとか。悪い点としては神の力が及び過ぎないように、ギルドランクは最高Aランク迄となる。
「といったところかな。他にも寵愛まで行けば、寿命は一気に伸びるしそれ相応の力も与えるよ」
「なるほど、それじゃあカールたちの能力って?」
「それは明日見せてあげるからそれまでのお楽しみで」
「えぇ、けち。ここで見せてくれていいじゃん」
「けちってなによしずく。ここで使ってもいいけどこの教会ごとここら辺更地にしちゃうかもよ」
「うぐっ。それは困る」
「へへぇ、本当にしずくは考えなしなんだから」
「なんだと~」
そんなしずくとミールは無視し、カールとの話を続けていくが一方のミラとアルヘナのふたりは、口を開けて呆けていた。そんな二人に気づいたカールが、手をパンパンと叩きミールたちの口喧嘩を一旦中断させ、アルヘナへごはんを人数分お願いしたのだった。




