ゴブリンソルジャー戦 3
洞窟という密閉された空間でゴブリンソルジャーの絶叫が響き渡った。
その声を間近で聞いていたしずくがフラフラしながらこっちに戻ってくるのが視界に入る。対しゴブリンソルジャーは矢を引き抜いたあと剣をがむしゃらに振り回して周囲を無闇矢鱈に牽制している。
「うるさかった~、まだ耳がキーンってしてる」
「でも、これで優勢に戦えると思う」
「そうだね、盾と片目潰したから」
そう思っていたがここからさらに時間がかかってしまっている。なぜなら、守るという行動をしなくなったことにより、顔に飛んでくる矢を持っている剣で叩き落としている。一方しずくは、ゴブリンソルジャーが剣を振り回していることにより、容易に近づくことができていない。
そんな中しずくは、シャドウウォークを使い影に潜りゴブリンソルジャーの後ろに周り込み刀を振るった。
その刀に気づいたゴブリンソルジャーは、盾を持っていた右手で防ごうと腕を持ち上げたが、盾を持っていなかったことにより刀が腕の半ばまで切れた。だが、その場で刀が止まってしまいしずくの動きが止まってしまう。それを見たゴブリンソルジャーは、ニタリと笑みを浮かべしずくへ持っていた剣を突き刺してくる。
ゴブリンソルジャーが、突き刺して来たのを冷静に見てしずくは首を横に動かすことにより躱した。何度か、ゴブリンソルジャーが突き刺ししずくが躱すを繰り返すと、ゴブリンソルジャーもしびれを切らしたのか持っていた剣を振り上げしずくに斬りかかってきた。
「うわぁ、さすがにそれは躱せないって」
しずくがぼやきながら刀を手放しバックステップでゴブリンソルジャーの剣を躱す。躱すことはできたがゴブリンソルジャーから距離をっとたことにより刀を手放してしまった。
だがしずくの奇襲によりゴブリンソルジャーも片腕を使えなくしたので充分な結果に終わったと言える。
「はぁはぁ、す~は~」
しずくは息を整えつつ額から流れる汗をぬぐいながらゴブリンソルジャーの動きに注視している。一方ゴブリンソルジャーもしずくが危険と判断したのかしずくの方に向き直り走っていく。
しずくが切った右腕はだらんと垂れており動かすことができていないようだ。
「ゲギャギャ!」
「くーねぇのおかげでなんとか躱せてるかな」
私は、時折ライトバインドを使って、行動の阻害をかけているけど少しづつその時間が短くなってきており、少しづつ効力が落ちてきている。効力の低下とともに、しずくの回避がギリギリになってきているのが目に見えてわかっているので私自身も焦りがでている。
ミラもしずくとゴブリンソルジャーの距離が近いことにより思うように攻撃ができていない。
「くーねぇのバインドも少しづつ時間も短くなってきてるしあれ使うしかないか【シャドウガレージ:取り出し】」
「ゲギャ?」
しずくが影から1本の刀を取り出した。それを見てゴブリンソルジャーが一層の警戒を見せている。しずくは、横に移動しゴブリンソルジャーと距離を置く。相手と距離が空いたことにより私とミラが攻撃できるようになった。
「【ウィンドカッター】」
「【ソーラーレイ】」
私とミラはそれぞれ攻撃魔法を放つ。しずくの刀ほどではないがミラのウィンドカッターにより切り傷が出来上がる。ソーラーレイは剣の横を斜めに受けることにより反射させ防いでいた。
「あの時のムチみたいにできれば応用性が広がるんだけどな」
「くるみ、まぐれに頼らないで」
「はーい」
私の一人言が聞こえていたのか、ミラに怒られてしまった。これが終わったら要練習かな。そう心に決めこの戦いに集中することにした。
「ゲギャ?!」
「てい」
横からかけてきたしずくに気づいたようで剣をしずくの方向に振り抜いていた。それをしずくは手に持っていた中程から折れた刀を使って受け止めている。
しずくは片手で降ってくる剣を刀で受け流しつつギリギリのところで絶えている。ゴブリンソルジャーも私たちを無視し、しずくの相手に集中しているのでこちらも少しやりやすい。
「くるみ、しずくと入れ替わってくる」
「わかった、気をつけてね」
そう言い残しミラがしずくの下へ短剣を持って駆けていく。そのまま背後からゴブリンソルジャーの首や足の脛を集中的に攻撃していくが傷をつけることまではできていないでいた。だが、ゴブリンソルジャーもそれを煩わしく感じたようで振り向きざまに持っている剣を振り抜いた。
振り抜いた剣を短剣で受け止めたがそのまま飛ばされてしまう。それによって距離が空きゴブリンソルジャーはミラに止めを指すべくゴブリンソルジャーは駆けていく。
それにより、しずくとの間に距離が空いた。一方しずくはクラウチングスタートの構えを取りゴブリンソルジャーに迂回しつつ駆けていく。
「どっせい!!」
しずくが女の子らしからぬ掛け声とともにゴブリンソルジャーの腕に残っていた刀の柄付近を飛び蹴りで押し込んだ。それにより、刀が腕を切り飛ばし刀はゴブリンソルジャーの鎧に当たり、地面に落ちた。
腕を落とされたことにより腕から血を滴らせながら目を血走らせしずくを睨みつけるゴブリンソルジャーに対ししずくは地面に落ちた刀を回収しゴブリンソルジャーと距離を取る。
「あちゃぁ。完全にご立腹だ」
「ゲギャ!!」
しずくのつぶやきにゴブリンソルジャーは一声鳴き突進していく。後ろからミラが攻撃してもさっきのように惹きつけることができていないのでしずくに任せきりにするしかなさそうだ。
そんな中しずくは折れた刀と普段使っている刀の二刀流にしゴブリンソルジャーの猛攻をさばき続けているが、攻撃に移ることができていなかった。そのまま横に回ろうと動き続けているとしずくはゴブリンソルジャーの垂らした血を踏んでしまい足を滑らせてしまう。
「やばっ!」
そんなしずくにゴブリンソルジャー、は上段から剣をふりおろした。その剣をしずくは持っていた2本の刀を交差することによりなんとか防ぐことができた。だが力が拮抗しているようでしずくもその場から動くことができなっていた。
ゴブリンソルジャーはさらに力を込めたようで少しづつ刀がしずくの顔に近づいていく。それに合わせゴブリンソルジャーの腕から血がさらに吹き出している。そのまま少し時間が経つとゴブリンソルジャーから力が抜けそのまま地面に倒れた。
「ふぅ、生きた心地しなかった」
「しずくお疲れ」
「しずく、くるみまだだよ、ラビィがそろそろ限界だからそっちの追加のゴブリンも倒さないと」
「そうだね」
「きゅ~・・・・」
「ラビィ大丈夫?」
「大丈夫、魔力使いすぎて気を失っただけみたい」
そう話しているとラビィも限界に達したようで目をつぶってその場に倒れ込んでしまった。そのまま動き出すことがないため心配になってしまった。
ラビィの様子をミラが見てくれたようで状況を伝えてくれている。それに合わせ今まで維持していた土壁が崩れ落ち奥からゴブリンがこちらに向け攻撃を仕掛けてきた。
それをしずくが2本の刀で切り伏せていく。そのまま時間をかけることなく追加で攻めてきたゴブリンを全滅させて奥へと向かっていくことにした。
これでゴブリンソルジャー戦最後です。でも第2章はもう少し続きます。




