ゴブリンソルジャー戦 2
「ゲギャアァァァァァァァ!!!」
洞窟の奥から一際大きいゴブリンの声が聞こえてきた。
その声に呼応するかのようにゴブリンソルジャーが鳴き始めた。鳴き始めるのに合わせてゴブリンソルジャーの姿が人周り大きくなったような気がした。
「これって、まずいんじゃない?」
「うん、多分最奥にいるゴブリンキングが鼓舞とかのバフ使ったんだと思う」
「だよね。ところでミラは足大丈夫?」
「一応。だけどとっさの行動はできないけど」
「ラビィ、魔力に余裕があるようなら回復してあげて」
「きゅい、【きゅうい】」
私たちは、一度一箇所に集まりゴブリンソルジャーの状況について話し合うと同時にミラの足の状態を聞いた。一応大丈夫そうだったが、ラビィにお願いするとラビィの魔力もそれなりに回復したのか、頷いてからヒールを唱えてくれた。
ミラは、足をぶらぶらさせながら足に痛みがないことを確認してから軽くジャンプしていた。そのまま頷いているので問題ないようだ。
そうしていると、ゴブリンソルジャーがこちらに振り向いてきた。そのままこちらに向けて走り出しててくる。
それにいち早く気づいたしずくが剣で受け止めた。それに、合わせしずくの足元から闇蛇を出して自分の足を固定した。
「痛~。足がおかしくなるかと思った」
「でもそのおかげでこっちは助かった」
「しずくありがとう。足大丈夫?」
「うん、なんとか、っと危ない」
しずくと話しているあいだに再度斬りかかってきた。しずくは、ゴブリンソルジャーの剣を今度は受け流すことによって体への負担を最小限にしている。
「不意打ちじゃなければこれぐらい」
「ゲギャ!」
しずくに受け流されたのが不服だったようで、剣をむやみやたらに振り回してくる。それに対ししずくは、受け流すのを諦めて回避に専念している。しずくは、闇蛇をうまくゴブリンソルジャーの腕に絡みつかせることにより躱せるだけの時間を稼いでいた。
ゴブリンソルジャーが攻撃を仕掛けたタイミングで私とミラはそれぞれ攻撃を試みるも魔法でなんとかカスリ傷をつけることができる程度だ。
そのまま時間も経過し、しずくも慣れてきたようで少しづつ反撃できるようになってきている。だが、しずくの息も上がってきておりあまり長いあいだ持ちそうにない。だから急いで対策を考える必要がある。
「ラビィ、少しのあいだあいつの動き止めるよ」
「きゅッ!!」
ラビィが頷いてくれたので簡単にやり方を説明する。
説明が終わると同時に、ゴブリンソルジャーが踏み込んだ足元を砂にする。足元がいきなり砂になったことにより、踏ん張りがきかなくなりゴブリンソルジャーの体制が崩れた。
崩れた体制に合わせ私は、ライトバインドを使い動きを封じる。
「【きゅ】」
ラビィが再度、ゴブリンソルジャーの倒れた砂場に魔力を流すことにより砂を固めて完全に動きを封じることに成功した。
それを見届けたしずくはこの機を逃さないように肘や首といった鎧の隙間をしよう的に攻撃していく。そして、こちらに戻ってくる前に頭を蹴り上げ兜を吹き飛ばしてから戻ってきた。
「おかえり、しずく。それにしてもすごい蹴り」
「さすがにあのままだとまずかった。くーねぇ、ラビィありがとう」
「さて、一時的に動きは封じれたけどこのあとどうする?」
「しずくが兜引っペがしたから頭に攻撃集中させるしかないんじゃないかな?」
「えっへん」
「やっぱりそれしかないか。あとくるみいま戦闘中だからそういうのは後で」
このあとの攻め方について、話し合っている最中にしずくがドヤ顔で胸を張ったので、抱きしめて頭を撫でてあげることにしたが、さすがに戦闘中ということもありミラに咎められてしまった。
(まぁ今は安全でもないからおとなしくやめておくしかないか)
そうしていると、ゴブリンソルジャーの埋まっている足元にヒビが入った。そのままゆっくり片手づつだが、地中に埋まった足と腕を引っ張り出していく。どれかひとつ出るとあとは楽に外に出てきてしまった。
出てきたゴブリンソルジャーは、私たちのところへ走って来た。それに合わせしずくも前へ出て刀で応戦する。それに対し、ゴブリンソルジャーは持っていた盾を使いしずくの攻撃を防いでいる。盾で防いだまま持っていた剣で、しずくに突きをしようとしていたが、ミラが頭めがけ矢を射掛けることにより、突きの追撃を退けていた。
しずくは、再び刀で攻撃をしていたが、ゴブリンソルジャーは堅実に盾で防いでいてなかなか有効なダメージを与えられていない。私は、ライトバインドを使うことで少しでも攻撃が当たるようにしているが、致命打には程遠かった。
それでも少しづつ切り傷を与えることができている。切り傷を与えているけどしずくの刀に普段以上に魔力を込めているのは用意に見て取れる。
使う魔力を上げたことによりゴブリンソルジャーの持つ盾や鎧にも傷をつけることができている。だけどこのまま持久戦になると、先にしずくの魔力が尽きてしまい、こっちの決定打が消えてしまうので、それまでに何らかの対処する必要がある。
しずくもそれに気づいているようで、少しづつしずくの攻撃も荒くなってきている。そんなときだった。ミラが短剣を持ち出して、しずくと入れ替わりで前衛を受け持ってくれた。そのまましずくは私のところまで戻ってくる。
「ちょっと疲れてきた」
「まぁ仕方ないね、【ライトバインド】」
しずくと話しながらもバインドでミラの手助けをしていく。さすがにしずくと違ってミラは純粋な前衛ではないため危ないところが時々ある。
「よし、息も整ってきたし焦る気持ちも落ち着いたからまた行ってくる。はむ。く~、スッとする~。くーねぇもそろそろきついでしょ。はいこれ」
「ありがとう」
私がしずくから受け取ったハーブを口に入れたのを確認したしずくは、影に潜りゴブリンソルジャーの後ろに出てゴブリンソルジャーの首に刀で斬りかかる。
完全に不意打ちしたことにより今までより、深く切り傷をつけることができた。それでもゴブリンソルジャーは、後ろにいるしずくに対し、振り向きざまに剣を横なぎに力任せに振り抜いた。
それにはしずくも躱しきることができず刀で受ける。だが、しずくの体重が軽すぎたこともありそのまま後ろに飛ばされてしまった。
「かはっ!」
そのまま飛ばされたしずくは壁に背中を打ち付けて肺に溜まった空気を吐き出していた。そんなしずくにゴブリンソルジャーは追撃を仕掛けるべく走っていく。それを許すわけにはいかないので私は、ゴブリンソルジャーの頭めがけてソーラレイを横に薙ぐ形で使った。
すると、予想外にソーラレイがしなりムチのようにゴブリンソルジャーの首を打つように向かっていく。だが、ゴブリンソルジャーはそれに気づいたようで盾で防ごうとしている。案の定盾に当たったが、ソーラレイが盾に巻きついてしまった。それによって首に当たることはなかったが、ソーラレイの熱量に盾が耐えられなかったようで、形が少しづつ変形し色も赤みを帯びていく。熱せられた鉄に、ゴブリンソルジャーの手が耐えられなかったのか、ゴブリンソルジャーは盾を手放した。
「ゲギャギャ?」
ゴブリンソルジャーは、盾が熱を持った理由を理解していないようで、しきりに頭をひねっている。そこにミラがゴブリンソルジャーの目をめがけ矢を射掛ける。矢に気づくのが遅れたゴブリンソルジャーは回避することができず右目を矢で射抜くことができた。
「ゲギャアァァァァァ」
「よし、これで多分大丈夫」
ゴブリンソルジャーは、今までにないほどの悲痛の叫び声を上げ、目に刺さった矢を引き抜いた。そんな声に気づいたのか脇道の奥から再び足音が聞こえてきた。
「またゴブリン来たら面倒だからラビィ足止めお願いできる?」
「きゅい。【きゅきゅっ】」
ラビィが頷き、足音が聞こえ始めた脇道につながる穴に、土壁を作り出しゴブリンたちが、こちらに入ってくるのを阻止し始めた。
ゴブリンソルジャー戦次回がラストです。
区切りが中途半端だけど明日投稿だから許して・・・




