当番 前編
木にもたれかかり私としずくは休憩していた。
「ふぅ、ここまでくれば大丈夫」
ミラも一息ついて地面に座り込んだのを見て私はミラに話しかけた。
「ミラ、ここまだ森の中だからゴブリンとかいるよ」
「くるみも人のこと言えないよ。でも大丈夫近くにいないから」
ミラは完全に脱力状態だ。この休憩中にさっきまで戦った猪について詳しく聞いてみることにした。
「それであの魔物ってなんなの?」
「あぁ、あれはブラッドボアだよ。さっき言ったようにあれが子供でそのあとに来たのが大人のブラッドボアだね」
「あれは勝てるかかなり怪しいね」
ミラは刀についた血を魔力変換で出した水を使って洗い流している。
さっきのが子供のブラッドボアを倒せたのはラビィの土壁で突進を受け止めることができたのが一番大きかった。
あれがなければしずくが足に傷をつけることもできなかっただろう。
「もう少しここら辺でゴブリンを狩っていこう」
ミラの言葉に賛成して私たちは森の中を歩くことにした。その間しずくは刀を使うのを極力控えてシャドウバイトによりゴブリンを倒していく。流石に剣を持ったゴブリンがいる場合は刀による攻撃をしている。
しばらく森の中を歩きながらゴブリンを倒しつつ森を歩いていると中央に湖のある開けた場所にたとりついた。
「うわぁ綺麗な湖だね」
「そうだね、それにそろそろ日が暮れるね」
「ここで野宿するしかないかな」
私たちがなんでこんな話しをしているかというと道に迷った。子供のブラッドボアを倒したあとに、移動した方向がまずかったようで街道から外れすぎてしまいいまの位置がわからなくなってしまっている。
まぁ、それは置いといて夕飯を作ることにしよう。といってもいつもと同じような感じなんだけど今日はうさぎ肉が多いということもありうさぎ鍋にしようと思いしずくにうさぎ肉を出してもらう。
「しずくこの肉って初日に手に入れたやつ?」
「そうだよ。どうかしたの?」
「いや、肉が傷んでなかったからやっぱり時間が止まってるんだなって実感した」
私の言ったとおりで、シャドウガレージの中だと時間が進まないことがわかった。今の状況ではこれは嬉しいことで狩ってきたホーンラビットの肉とかが劣化なしで保管ができる。
その確認ができたこともあり引き続き夕飯を作っていく。その間の索敵は、しずくとミラに任せて料理を進めていた。
匂いに誘われたのかゴブリンが何度かこちらにやってきたがしずくたちの頑張りによりこちらに被害がなく料理が出来上がった。
「よし、味もちょうど良くなったし。このぐらいでいいかな。しずく、ミラちゃんごはんできたよ」
「待ってました」「ありがとう」
しずくがお皿とかを出してそれによそっていく。ラビィの分はそこが浅いお皿についでラビィの前におく。
「きゅ~♪」
ラビィは嬉しそうにうさぎ鍋を食べていく。
私たちは最初によそった分を食べ終わったあとはそれぞれで食べたいだけお皿に入れて食事が進んでいった。
食事中も安全というわけではなく何度かゴブリンがこちらにやってくる。やってきたゴブリンたちはしずくもしくはミラの索敵で気づかれて私かラビィが魔法によって止めをさしていく。
食事が終わるころには2グループ計8体のゴブリンを狩ることになった。
「くるみ。敵の対処してくれてありがとう」
「くーねぇ無理しなくてもぼくがやるのに」
「大丈夫だよ。私やラビィは遠距離が得意だからここからでも大変じゃないし」
そうして今日の夕食は終わった。これからは夜の当番を決めていく。
決め方は簡単それぞれの武器と索敵の仕方で決める。それぞれ2回ずつ担当することで夜の番をすることにした。
その結果最初は私としずく、次にしずくとミラ、朝が私とミラになる。しずくは朝方弱いので夜に頑張ってもらおう。
----------しずく視点-----------
夜の見張りは最初ぼくとくーねぇになった。最近ずっとくーねぇはラビィと一緒だったからあんまり一緒に過ごせてないんだよね。
だから今回は、くーねぇといっぱいイチャつくんだ。敵よ出て来るんじゃないよ。
でもその前に刀を研がないと刃こぼれたままだと問題だからね。
ぼくは自分の影から砥石とかを取り出して刀を研ぎはじめる。その他にも鍔や柄を取り外して内側に染み込んだ血を拭っていく。自分で水を出しながらできるのでそこまで大変じゃない。
「よし、こんなものかな」
ぼくは刀のメンテナンスも完了したので刀を組み立てたあとに鞘に戻して完了となる。やることも終わったのであとはくーねえと楽しく過ごそうかな。
「くーねぇ二人きりになるの久しぶりだね」
「そうだねしずく。最近はラビィがずっと一緒だったからね」
ぼくはくーねぇの肩に頭を預けてくつろいでいる。
「ごめんね、もしかして寂しかったりしたかな?」
くーねぇは少し意地悪なことを聞いてきたのでぼくは素直にこてることにした。
「当たり前だよ。せっかく周りを気にせずにいちゃつける環境になったのに二人きりになれなかったから」
「確かにそうだね。ミラちゃんやラビィが一緒にいるからね」
そう言いながらくーねぇがぼくの頭を撫でてくれる。くーねぇの撫でてくれるのはとても気持ちいいのですぐに顔が緩んじゃうんだよね。このままだと眠くなってくるけど今は見張り中だし集中しなくちゃ。
そうしていると至福の時間なのに敵の気配が近づいてくる。
「あそこになにかいる。せっかくくーねぇとの至福の時間なのに」
ぼくは、敵の気配がしたほう焚き火の奥に向けて睨んでいる。くーねぇがぼくの睨んでいる方に顔を向けた。
「オオオォォォ」
森の奥からうめき声を上げながら小さな子鬼がこちらがこっちにやって来るがどうも様子がおかしい。
「何あれ」
くーねぇが怯えたように声を出してくる。くーねぇの反応ももちろんで敵は明らかに死体でありこちらにゆっくりと近づいてくる。頭とかには蛆虫も付着しているので見ていて気持ちのいいものじゃない。
「早くやっつけちゃおう」
ぼくは死体に向けて駆け出していき手に持った刀に手をかけて距離を詰める。
「ていっ!」
軽い掛け声で動く死体に対し刀を振るう。いつもならこれで終わるはずだった。死体が自分の腕を盾にして事なきを得ている。
「オオオォォォ」
腕を切られてもなんでもないかのようにこちらにむかって腕を振り上げた。
「正直見ていたくないけどこのままだとしずくがあぶない。【ライトバインド】」
くーねぇがライトバインドで作ってくれた隙を逃さないように刀でゾンビの首を落とす。
流石に首が落ちると不死身ではなくなるようで身体の機能が停止した。
「これでひと段落。くーねぇ膝枕して~」
「いいよ、これでひと段落だしね」
ぼくは近くにがいないことを確認すると平常運転に戻した。くーねぇも平常運転に戻ったようで膝枕をしてくれることになった。
ぼくはくーねえの膝に頭を乗せて一息つくことにした。しばらくの間膝枕をしてもらっていたが、このままだと眠ってしまいそうになったので名残惜しいけど膝枕から体を起こすことにした。
膝枕から起き上がってからはこれと言って敵襲もなくぼくとくーねぇの当番は終わった。
終わり際にくーねぇからとあるお願い事を受けたので荷物の中を探してみることにした。




