帝国の内情
ーーーーーーーーくるみ視点-----------
しずくがカルロスとレキが動けなくなるまでしごいた後、汗を額にうっすらとかきながら戻ってきた。そんなしずくを迎えながら声をかける。
「しずく、お疲れ、汗流してきたらいいよ」
「うん、それじゃちょっと行ってくるね」
そういってしずくは桶を二つ出して一つに水を張りもう一つを手に持って私たちから離れていく。それを確認した私はカルロスとレキに声をかける。
「カルロス君、レキ君。そのままだと風邪ひくから汗流しな」
「うん」
「ありがたいけど動けない」
しずくにこってりと絞られたようで動けないでいる。そんな二人の様子を見ているとしずくがこちらに戻ってくる。そしてそんな二人を見てしずくは二人をつんつんとつつく。
「しずくさん、やめて今動けない」
「いやぁ、二人ともよく動いたね。ぼくもつい力入っちゃった」
しずくがそう言っている通り二人に稽古をつけているときのしずくは途中から常に口元に笑みを浮かべていた。それを見ていた私は楽しそうなしずくを見れてとても満足。
「動けないから私たち誰かに汗拭かれるのと、自分で頑張って拭くのどっちがいい」
「「うぐっ」」
私がそう言うと二人は言葉を詰まらせる。そして私は手をワキワキさせながら近づくと、二人はしごかれた体に鞭を打って桶をもってテントの裏に行ってしまった。そしてしばらくしたら空の桶をもって戻ってきた。そのまま二人はテントの中に入っていった。エリスちゃんは二人の特訓をしている間に眠くなってテントの中に入っている。
「カルロス君とレキ君はあした大変かもね」
「どうだろう、結構体はできてたから大丈夫だと思うけど。まぁ体力は根こそぎ持って行ったけど」
「それで、二人はどんな感じ」
「そうだね、無駄な力が入っていてそれで余計に体力使ってる感じかな。でも獣人だからなのかな。運動神経はかなりいいよ」
「しずくがそう言うということは結構筋は良いのかもね」
しずくはそう言ったのが話の中断となりミラも焚火から離れてテントの横に移動して眠りについた。
「くーねぇ、もしかしたらくーねぇも修行のお願いされるかもね」
「私にってことは魔法の使い方かな」
「そうそう、エリスちゃんが戦いに興味があるかどうかだけどね」
そのまま何事もなく夜は更けていく。
翌朝、みんなが起き始めるころに朝食を作り終えた。今日の朝食はほっとサンド。それをみんなで食べつつ今日の予定をエリックさんに確認した。エリックさんはそんな私たちに昨日と変わらない態度で今日の予定を伝えてくれる。
「君たちと会ったのがちょうどキャンサーとレオの間ぐらいだったから今日の夕方にはレオの関所につくはずだ」
「それじゃ、そこで依頼完了ですかね?」
「えぇ、それで完了で構わないよ。そこから向かう先も違うんだし」
エリックさんはそう言った後、荷台の積んである荷物を整理してから御者台に乗り込んだ。エリックさんが乗り込んだのを合図にカルロスたちも荷台に乗り込んだ。私たちは完全にエリックさんへの警戒は解いてはいないということもあるが、昨晩おとなしくしていたので少しは警戒を解いている。
しずくが御者台に乗り込んだところで馬車が動き始めた。そこでしずくがエリックさんに一つのことを問いかけた。それを聞いたエリックさんの顔が初めて険しくなる。
「エリックさんって魔族なの?」
「!しずくさん、なぜそう思ったんですか?」
「そうだね。昨日エリックさんが本気になった時にパイモンと同じ空気を感じたっていうのが一番かな」
しずくのその言葉を聞いたエリックさんが納得の顔をしていた。そしてエリックさんはしずくの頭に手を持っていく。それを私とミラが警戒しながら見ていると、エリックさんはしずくの頭を撫でてすぐに手を離した。
「【サイレン】」
「エリックさんさっきのは何?」
「大丈夫・荷台に声が聞こえないようにしただけだ」
エリックさんが魔法を使うといきなり口調が変わる。そしてしずくは「そうなんだ」といっただけだった。そして私とミラは警戒の色を濃くすることなった。だがしずくはほぼ警戒を解いている。この違いの原因を完全に理解することができないでいた。
「ミラ、くるみ。警戒を解いてくれないかな。本当に君たちと敵対する気はないんだから」
「それは私たちに何かさせようとしているの?それとも本当に偶然?」
「まぁ正体も隠す必要もななくなったから正直に答えよう。まず君たちと会ったのは本当に偶然だ。実際俺は商人でいろんな国を回っている。だが、見た目はもちろん変えているがな」
「まぁ、そうだよね。それでそれで?」
「なんとも君は警戒心というものは一切ないな」
「もちろんだよ、昨日少しだけ本気を見せてもらったけど、殺気とか一切感じなかったもん」
しずくがそう伝えている。そしてそれが今しずくが警戒をほぼ解いている理由ということを理解できた。そしてエリックさんとしずくの会話に私たちも入る。
「ということは昨日、国への報告ができていないというのは」
「あぁ、くるみの予想通りだよ。うちらのところの女帝さんが今いないから、報告をするにできないってこと。ちなみに報告用の書類はもうまとめ終わっている」
エリックさんはそう言って紙束を取り出しミラに渡した。ミラはそれに目を通してからエリックに返している。そこでミラがエリックに問いかけることになった。
「国に報告するつもりなのはわかったけど、こういう場合って宰相とかが対応するんじゃないの?」
「まぁ、本来そうなんだがな、最近オヒューカスがきな臭いんだ。国として1枚岩じゃないから変に巻き込まれないように距離を置いているってことだ」
「そう、少し聞きたいんだけど、ここら辺で人さらいの情報ってある?」
「人さらいか・・・・」
エリックさんはそう呟きながら考えている。そして思い出せなかったのか申し訳なさそうな顔をして頭を下げてくる。
「すまんな、ここら辺でそういった話は聞かないな。ただ、話を聞く限りでは何かがあるとしたらキャンサーから西に何かがあると思うな」
「まぁやっぱりそうだよね」
ミラがそう言うと、エリックは「もういいか?」と聞いてきたので私たちは了承した。それを合図にエリックさんは発動させたサイレンを解除した。
そのあとは、あたりさわりのない情報を交換したりして移動する。そして夕方何なるころにレオ帝国への関所にたどり着いた。




