商人とはいったい
さて、今日は熊の手を使ってステーキを作ることにした。熊の手を焼く際に、香草をまぶして焼くことで匂いがさらに目立たないようにした。そうして、肉を焼いていると鼻がいいのかレキ君がこちらに近づいてくる。
「くるみお姉さん結構匂いきついけど何焼いてるの?」
「これはね熊の手だよ。少し前に狩ったキラーベアから取得した手何だよ。前に食べたけどおいしかったんだから」
「そうなんだ。でも俺この匂いあんまり得意じゃないな」
「そっか、ならどうする?なんだったら普通の肉焼くけど」
「いや、くるみお姉さんの手間になるでしょ」
「子どもなんだからそういうこと気にしないの」
私がそう言うとレキは少しむっとした顔をした後に「普通のウルフ肉でお願い」と言ってきてくれた。それを見て私は少し対応が間違ったかなと思った。でもカルロスは気づいているのかレキの肩をポンポンとたたいている。
そんな二人を横目に見つつ料理の準備を進めていく。
「しずく、ウルフ肉1つお願い」
「あ~い」
私がしずくにそう伝えるとしずくは私の後ろに現れてから、ウルフ肉を一塊出してくれた。私はその肉をナイフで切り分けてからフライパンをさっと洗った後に焼き始めた。全員分のステーキを焼き終わったところでしずくとミラが戻ってくる。
二人が戻ってきて夕飯が全員に行き渡ったのを合図として夕飯が始まった。
「ねぇ、レキくるみお姉ちゃんの料理上手だからおいしいよ。食べてみてよ」
「いや、くるみお姉さんの料理が上手なのは知っているけどどうも匂いが」
エリスとレキでそう話しているのを微笑みながら確認して、私たちは謎の商人であるエリックさんの話を聞いていく。
「エリックさん、あの馬車に付けられている警報装置は何ですか?」
「あれは魔道具の一種だよ」
「それは嘘。あんな魔道具聞いたことない」
「そりゃ、そうですよ。あれは自作なんだから」
エリックさんがそう言うとミラは警戒を濃くした。そして腰に差した短剣を手をかける。それを確認したエリックさんは笑いながら何事もないかのように話しかけてくる。
「ミラさん、子どもたちの前で血なまぐさいのは避けないかな?」
私としずくは二人のやり取りの意味が分からず見守っていることしかできない。私の様子に気づいたのかエリックさんは説明をしてくれる。
「おやおや、そちらの二人は知らないようだね。魔道具というのは既存のものと新規の二つがあるのが当たり前だ。ですが、新規のものの出どころは二つある。ここまでは良いかな」
「「はい」」
私としずくはエリックさんの説明を素直にうなずく。だけどミラは引き続き警戒を解いていない。それを見たエリックさんは首を振りながら説明の続きをしてくれた。
「ミラさんはまだ警戒を解いてくれないが、まぁ本格的な説明をしていなから仕方ないか。話を戻すが、出どころとしてはダンジョンと新規で自作する二つだ。そしてダンジョンはギルドで報告することで初めて使用権が自分のものとなる。そして、既存の魔道具として登録される。次に自作のほうだが、効力を確かめたうえで、自国に報告をすることで既存のものに登録される。その代わりダンジョンと自作ともに報告を怠ると罰せられる」
「ということは、今はその効力の確認中?」
「いや、それはないはず。実際シャドーウルフが襲撃してきたときにちゃんと鳴ることを確信してた」
「ミラちゃんが警戒しているのは報告を怠っている犯罪者だからってことだね」
私としずくがエリックさんから聞いた情報をミラと認識合わせをしたことによってミラが警戒している原因が判明した。その答えにたどり着いたしずくも積水を取り出して警戒をしだした。
「あらら、説明したことで本格的にあなたたち全員を警戒させてしまったか」
「それで答えを教えてくれる?」
ミラがそう問いかけるとエリックさんは答えてくれた。
「俺は君らの想像通り国への報告を怠っている。理由は言うことができないがあなたたちと敵対するつもりはないと考えてくれ」
「今の状況でそれを信じられるわけない」
エリックさんを警戒していることによって食事が一向に進まなくなってしまった。それが嫌になったのかエリックさんが手をたたく。
「この話は後程にしましょう。せっかくくるみさんが作ってくれた料理が冷めてしまいましたし」
エリックさんがそう言って締めくくり、熊の手の香草焼きを食べ始めた。それを期に私たちも警戒を解かずにすぐに食べ終わる。そのためせっかくの熊の手を味わうことができなかったが、子どもたちが嬉しそうにしていたのでおいしかったのだろう。
「くるみさんおいしかったよ」
「お粗末様です」
エリックさんがおいしいと言ってくれたのでお礼を述べた。そしてエリックさんは居住まいを正して先ほどの話の続きを促す。
「さて、先ほどの話の続きをしよう。先ほども言ったが、私はとある理由で自国への報告は行っていない」
「だから私たちは警戒しているんだけど」
「まぁまぁ、それを除いて何か聞きたいことはありますか?」
「それなら私たちと会わなかったらあの時の襲撃どうしたの?」
「あぁ、それか。俺一人で何とかなったよ」
『えっ?』
私たちは声をそろえて驚きの声を上げる。それを聞いたエリックさんは知っていたかのような反応に「うんうん」とうなずいている。その後、説明を始めてくれた。
「実は、戦闘の心得はあってね。たぶんだけど君たちよりは戦えると思うよ」
「嘘だ!」
エリックさんがそう言うとしずくが声を上げてそういった。私はしずくがいきなり声を上げたのに驚きなんで嘘だと思ったのかと聞くと
「だって強者の風格がない」
と言っている。私には正直強者の風格を正確に知覚することができないけど、少しはこの人強いかどうかの認識はできる。けどエリックさんからは一切強さを認識することができなかった。
「仕方ない。少し本気を見せよう」
そうエリックさんが言うと、一瞬だけ風格が変わった。
その威圧を受けた私たちはぞれぞれ立ち上がってエリックさんから距離をとる。そして続けざまに武器を抜いた。
そうしてエリックさんのことを警戒していると威圧がなくなりエリックさんは立ち上がる。
「さて、これでお解りですかね」
そういってエリックさんは気づけば私たちの前まで来ており私の肩に手を置いた。




