報酬
「しずく大丈夫かな」
「しずくならくるみと違って大丈夫でしょ。私達二人で戦っても勝てるか怪しいし」
「まぁ、実力だけならね、しずくって相手によって態度変えるから」
そんな話をしつつ南門でしずくを待っていると。しずくとおじさん、アレク君の3人がやってきた。なんでアレク君がいるのかは後で聞くとして問題なく馴染めているようだ。
(くるみに異性として好意を持ってない限りしずくは大丈夫だと思うけどね)
ミラはそう思いはしたが口にしなかった。
「くーねぇ、大丈夫だった」
「うん、こっちは大丈夫だったよ。しずく、そこのおじさんがケインさんでいいのかな?」
「そうだよ。ケインさんこちらがぼくのパーティメンバーのくーねぇとミラ」
「しずくの姉のくるみです」
「ミラです」
「こんなおじさんに丁寧にしなくていいよ。しずくちゃんに紹介されたが俺がアレクの父のケインだ。今回は迷惑をかけたなな」
「いえ、無事で良かったです」
そう話しながら街へ入りギルドへ向かうことにした。ギルドに入ると朝と違って人が少なくほとんどの人が依頼に出かけているようだ。私たちは、空いている受付へ移動するとシイルさんがやってきた。シイルさんは、ケインさんを見ると無事に見つかったことがわかったようでホッとしていた。
「おかえりなさい、良かったケインさんが見つかって。ケインさんも今は子供もいるんですから極力日帰りしてきてくださいね」
「あぁ、今後は気を付けよう」
「それで、報酬の方はどうしましょうか」
「これから教わりに行くので大丈夫です。」
「わかりました、それならギルドカードの更新だけしちゃいますね」
「お願いします」
シイルさんにギルドカードを渡したあと、しずくが買取所の方に移動していく。この間に魔物の解体を終わらせちゃうらと言っていたので少ししずくを待っていることにした。。
「少ししずくを待っていいですか」
「構わないよ。聞いた限りで報酬は現物というわけではなさそうだしな」
「はい、実はケインさんが狩人と聞いて熊肉の調理方法を教えてくれないかと相談したんです」
「そういうことだったのか。大丈夫だあいつの料理はうまいからきっと美味しいのを教えてくれるだろう」
「それなら期待できますね」
「おっと、これはハードル上げすぎたかな」
そう他愛もない話しながらしずくを待っていると、しずくが帰って行きた。そのまましずくと合流した後、ケインさんの案内の元、ケインさんのお宅にお邪魔することになった。
「おじゃまします」
「ケイン、無事でよかった」
「悪い心配かけたな。くるみちゃんに料理を教えてやっててくれ、俺はアレクと話ししてくる」
「わかったわ、しずくさんとミラさんはどうしますか」
「私はくるみと一緒に教わりたい」
「ぼくは精神統一とか色々したいから一部屋と桶貸してもらえれば嬉しいかな
「そう、それなら、台所の隣の部屋を使えばいいわ。桶はこれでいい?」
「ありがとう、それじゃ少し借りますね」
しずくはそう言い残して、部屋の中に入っていった。一方私たちは奥さんのあとについて、台所に入ることになった。
「すみません、なんて呼べばいいですか」
「あぁ、そういえば自己紹介がまだだったわ、私はミルキー。まぁ先生でもなんでも好きに読んでちょうだい。魔物の肉ならある程度調理したことあるから」
「わかりました先生」
「それじゃ、ミルキーさんよろしくお願いします」
私とミラがお互いにミルキーさんに挨拶をした後、熊肉の調理について話が始まった。
「熊肉はハウンドとかの肉に比べて硬いのが一番の特徴ね。そして、キラーベアは肉食だから肉に独特の臭みがあるの。特に今回は用意できていないけど熊の手は臭みへの対策は必須よ」
ミルキーさんが色々と説明してくれている内容をメモに撮りつつ話が進んでいく。大雑把に説明を聞いた後、ミルキーさんがいくつかの方法で調理した熊肉を食べさせてくれた。
一つは普通に焼いた肉、二つ目は香草を入れて焼いた肉、三つ目がはちみつを入れて焼いた肉、四つ目が香草とはちみつを入れて焼いてくれた。
私とミラはそれぞれ食べてみたが、香草を入れることで血生臭い匂いが香草の匂いで気にならなくなっており、はちみつで柔くなっている。それによって普通に焼くより食べやすくなっていた。確かにここまで味の癖が強くて対策が必須となりそうだ。逆に言えば、それだけで香草の匂いを殺さないようにするれば、ある程度の料理には使うことができそうだ。特にカレーとかにも使えそう。
そう料理の思案をしているとミルキーさんが簡単な料理を作ってくれた。作ってくれたのは熊肉を煮込んだスープで、香草としてパセリを利用していた。ほかの具材はよくある野菜がメインだ。
出してくれた熊肉のスープを食べてみたら、熊肉の匂いはスープに入っているパセリによって消えていた。ただ肉が硬いのに使えそうな具材が入っていないので、恐る恐るお肉をたべてみると見事に、肉が柔らかくなっている。私はそのお肉を口に含んでめを見開いた。
「ん~んーんー」
「そんな慌てないでちゃんと飲み込んでから話してもいいんだよ」
「んく。すみません。どうやってお肉を柔らかくしたんですか」
「そんなに難しくないわよ。お肉を柔らかくする方法は結構あるから」
そう言って実際に実演してくれた。やったことはとても簡単で、熊肉を包丁の背でダンダンと叩き繊維を壊したようだ。そのあとに少量のはちみつを塗りこむことでスープの味を大きく崩すことなく肉をやわらくしている。
「ん~、美味しい。ありがとうございます。これでしずくに美味しい料理作ってあげれます」
「それはよかった」
ミルキーさんと話していると、アレク君が台所に入ってきた。入ってきたアレク君をみて見ると落ち込んでいたので、話を聞いてみることにした。なんでも一人で森に入ったことをケインさんに怒られたようだ。それを聞いて仕方ないかなと思いつつ、メブスタへ移動を再開しようとした。その時アレク君が私の服を掴んできたのだった。
「お姉ちゃん達もう行っちゃうの?」
「うん、ほかのお仕事もしている最中だからね。ごめんね」
「今日だけでも泊まっていってよ」
「そう言われてもな」
困っているとミルキーさんがアレクくんを宥めようとしていたがミラが提案してきた。
「くるみ、もう夕方だし一晩お世話になったら?」
「う~ん、そうだね、ミルキーさん一晩お世話になっていいですか?その代わりと言ってはなんですが夕食は私が作るので」
「そういうことならいいけど、アレクのわがまま聞いただけってことはないわよね」
「それは、少なからずありますけど今回の食材が使ったことない食材なので、先生に見てもらいたいなっていうのもありますね」
「そう、そういうことなら一晩ゆっくりしていくといいよ」
「よし、しずく呼んでこようかな」
私は台所を出てしずくが入っていった部屋の扉をノックした。
「しずく、入るよ」
「ん、いいよ」
しずくからの返事を聞いてから部屋に入った。部屋の中央に桶がありその近くに砥石が用意されていた。しずくは刀を研ぎこれから精神統一を始めるところだったようだ。
「しずく、邪魔しちゃってごめんね」
「大丈夫だよ。毎回この時間って決めて精神統一してるわけじゃないし。それでどうかしたの?」
「うん、今日はケインさんのとこで一晩お世話になろうかと思ってね。そのお礼として今日の夕飯は私が作ることにしたの」
「ということは熊肉がご所望かな」
「その通りだよ」
「ふふふ、今日のクエストのおかげで熊肉2頭分あるから好きなだけ使うといいよ」
しずくが自慢げに現在の熊肉の量を教えてくれた。ケインさんの家に来る前に解体所に行ったのは、しずくが今日ケインさんを助けるために倒した魔物だったようだ。しかも昨日と同じくキラーベアだったとは驚きだけど。
しずくと一緒に台所へ戻り必要な素材を出してもらった。その時に熊の手をひとつ出してもらいミルキーさんの指導のもと夕飯を作り始めた。その間、しずくはアレクくんと遊んであげていた。




